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116 王様の茶会

お……遅くなりました

「話も終わったことだし、少しお茶でもしていかないかね」という王様の提案により、場所を王城の中庭――王城の複雑さから言って中庭といえるのかどうかは不明。似たような庭が他にも複数ある――にてお茶をすることになった。参加者は王様と王妃様、そして私たち3人だ。後は給仕役のメイドさん(おばさん)が3名ほど立っているだけである。

先ほど部屋で後ろに立っていた将軍やら魔道士やらはあの後それぞれの職場に戻っていった。


 私たちはメイドさんに王様共々案内されて、庭に備えられていたテーブルに着いた。

 その後少しして、呼ばれてきたと王妃様が中庭にやってきた。


 護衛の兵士とかはいないのだろうか。まあ、王城内だからいなくても大丈夫なのかな。


「ハハハ、こうやって若い者に囲まれていると、ワシまで若返った気分だよ。」

「まあ、あなたったら……私では不満でも?」

「ち、違うのだよ」


 この王様、見た目は30代後半ぐらいだが、「ワシ」とか言っているし、どうも年齢がつかみにくい。結構大きな王子様(パーティーでティーアと踊っていた奴)がいたのでもしかしたら意外と年をとっているのかもしれない。

 王妃様は微笑みながらテーブルの下で王様の太ももをつねっている。

 王妃様も若々しい。王様と同じく年齢不詳だが見た目だけなら余裕でイケる範囲だ。


 そんな夫婦の会話を遮るように控えていたメイドが紅茶をテーブルに並べる。何も言わずに並べ終えたらスッと戻っていったが。


「さてこうして、君たちを呼んだのだから是非君たちの話を聞きたいな。ワシなどはここ最近視察以外で王城から出ていなくてね。元はフーカ公爵領に居たと聞いているが。」

「そうね、私も聞きたいわ。ノワールさん達は冒険者なのでしょう? 冒険者ってどんなことをするのかしら?」


 王様と王妃様に聞かれたのだが……王妃様はあのパーティーで顔見てはいたが、言葉を交わしたことはなかったはずだ。よく私たちの名前とか覚えていると思う。王族や貴族なんかは人脈の広さが武器になったりするんだろう。


 そういえば、王妃様はこの人しか見ていないが、よくある第2妃とか側室とかはいないのだろうか。……まあ、私が気にしても仕方が無いな。


「そうですね。では失礼ながら――」


 そう前置きして、今までの体験などを語ろうとしたのだが、どのあたりから語った物やら。


 ソレイユちゃんとの出会い、ティーアとの出会い、メリノ君との出会いなどを語って行けばいいか。ティーアとの出会いなんかは結構冒険したし。


「ノワール様に出会った後――」


「そうねぇ、ご主人様が初めて来た時は――」


 ソレイユちゃんやティーアが横から邪魔にならないようスムーズに話に入り、それぞれの側から見た話をしてくれる。


 王様の方は調査したとか言っていたし、もしかしたらすべて知っているのかもしれないが、王妃様の方が興味ありそうに相づちを打っている。


 ダンジョンについてはアリシアさんが報告しているので語ってもいいのだろうか……王妃様は知らないだろうからまあいいか。あの時は報告形式だったので、今回は私たちの主観も入れて語っていく。

 アリシアさん達との出会いから始まり、なぜ一緒にダンジョンに行くことになったのか、中でのアリシアさん達の活躍なども適当に織り交ぜながら話を進めていく。


「――そうそう、そこで私、剣と盾を手に入れて……」


 ……ん? そういえば……私が手に入れた剣と盾ってダンジョンの宝だったっけ。アリシアさんの報告時にはさらっと流されたけれど、正式に許可貰ったのはアリシアさんだけで、メリノ君にはちゃんと聞いてなかったような。

 あれ? ちょっと待て……ダンジョンマスターに貰った40個以外の宝――ダンジョン移動中に出た宝箱から出てきた宝ってどうなった?


………………

…………

……


 ヤバッ!! 私達とアリシアさん達の装備品になってたわ。後アイテムボックス内にいくつか……メリノ君に報告してないっ!!


 そのことに今更気づきダラダラと汗が流れてくる。さすがにスポンサー様に報告してないのはヤバいわ。……い、今から報告して許してくれるか!? ぱ、パーティー終わっちゃったぞ。


「どうしたのかしら?」


 王妃様が急にキョドりだした私に声をかけてくれるが、私は今それどころではない。


「い、いえ…………全員集合!」

「は、はい」

「あらぁ」


 そうしてテーブルを失礼して、ちょっと離れたところでスクラムを組む。


「それで、どうしたのかしらぁ?」(コソコソ)

「まずいことに気づいた。私たち30層までは普通に進んだよな」(コソコソ)

「そうねぇ(ですね)」(コソコソ)

「私の剣と盾を含め、そこまでで見つけた宝をメリノ君に報告していないことに気づきました。」(コソコソ)


 理由としてはいろいろあるだろうが、やっぱりあの時――ソレイユちゃんの死亡でパニックになっていた際に頭から飛んだんだろうと思う。


「あら? そういえばそうだったわね」(コソ略

「そういえばいくつか見つけていましたね。」

「ど、どうしたらいいと思う? アリシアさんは一緒に潜っていたから知っているはずだから、メリノ君に伝えればいいと思うんだが……」

「うーん、別に今から伝えてもいいんじゃないかしら? あの子は怒らないと思うわよ?」

「そうですね。正直に言うしかと思います。あ、国王様にも言っといた方がいいじゃないですか?」


 うーん、やっぱりそれしかないか。仕方ないな。


「ノワール殿、どうかしたのか?」


 席に着いたまま、こちらを不思議そうに見ていた王様が声をかけてきた。その声に私たちはスクラムを解除し、席に座り直した。


「失礼しました。報告し忘れていたことがあったのを思い出したので」

「ほう、何かね」

「いえ、ダンジョン産の宝ですが、40個と報告しましたがそれらは深階層の物でして……低階層でもいくつか宝が出ていたことをメリノ――フーカ公爵子息に伝え忘れていまして……」

「ほう、そんな物が」

「あら、今持っているの、少し見せて貰ってもいいかしら?」


 横から、王妃様が会話に入ってくるが、そうだ王妃様を味方につけておけばいいんじゃないだろうか? ほら、権力持ってそうだし。


「分かりました。すべて出すわけにも行きませんし……いくつかを」


 武器類をお茶会で出すわけには行かないし、装飾品とかかな。魔法効果の付与された指輪と腕輪を一つずつテーブルに出す。

 あれ、……うまく出てこないな……このっ、くっ


 なんとか宝をアイテムボックスから引き出す。


 低階層で出るだけあって、ノーネームで見た目はシンプル、効果も1つだけだ。


「触ってもいいかしら?」

「どうぞ」

「へぇ、これが……手にするのは初めてね」


 王妃様が、それを目の前にかざしながらそんなことを言う。

あれ? 王室に献上した分は? アレどうしたの。


「おぬし等から献上された分は宝物庫に大切に仕舞ってあるぞ。」


 献上した宝については王様個人的な所持品となるのではなくて、この国の宝物庫に仕舞ってあるらしい。王様や王妃様といえど正式な理由がなければ簡単に使ったりできないそうだ。

 ふーん、そうなのか。アクセサリー(魔道具の一種だが)類もあったはずだし別に王妃様とかがつけていてもいいと思うんだが。宝物庫でホコリをかぶっている方がもったいないような気もする。


「ねえ、これを頂くことってできないかしら?」

「おまえ、無茶を言うんじゃない」

「……私たちとしてはフーカ公爵子息のメリノ様に連絡を入れて許可をもらえれば別にかまいませんが……あ、なら他のも見せましょうか? 武器類はここに出すのはアレですが、アクセサリー類なら」


 そう言ってアクセサリーとして使えそうな宝を出す。といってもそれほど数はないが。


「分かりました。……それにしても悩むわね」


 王妃様がそう言うと同時にパチンと指を鳴らした。そうすると近くに控えていたメイドの一人が去って行った。

主人公がアイテムボックスを使いにくそうにしているのは王城に警備用の魔法を妨害する魔法がかかっているためで、それを力業で突破しているからです。なお警備体制につては王様達自身も部下にほぼ任せっきりのためアイテムボックスを使ったことについて疑問に思っていません。

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