閑話 勇者ヤマモト 6
登場人物を忘れてしまった方は「閑話 勇者ヤマモト 5」の最初の方を読んでもらえれば全員の簡単な紹介があります。
それからも順調に魔王軍とやらを下していく勇者一行。
すでに16将軍と呼ばれた高位魔族をも倒している。
だから油断していたのかもしれない。
「きゃぁ!」
リタが魔族に吹き飛ばされる。
「くぅ!」
魔族がリタに追撃をかけたが、すんでのところでガウリールが攻撃を盾で受け止める。
「くそっ、こいつら!」
ゲイルは小型の魔物にまとわりつかれて身動きが取れない。
「はぁ、はぁ、」
ヒャロンもすでに何度も支援魔法と回復魔法を使っており魔力が枯渇寸前だ。
「ぐぎぎぎ、」
オルフはぎっくり腰で立つことすらままならない。
「ふははは、勇者といってもこの程度か。失望したぞ!」
「くそぉ、でござる!」
今我々は魔王軍16将軍の一人と対峙していた。だが、今までとは違い罠にはめられた結果、吾輩以外の面々の身動きが取れなくなってしまう。
しかし諦めるわけにはいかない。吾輩は勇者なのだから。
皆が笑顔で暮らせるように。
皆が魔族におびえることの無いように。
皆が悲しみに暮れることの無いように。
全力を尽くさねばならない。
「行くでござる!!」
吾輩は魔剣を握りしめ魔族に斬りかかった。
◇◇◇
結果としては勝った。
重傷の者はいなかったため、オルフ以外の面々はすでにヒャロンにより回復済みだ。
だが考えさせられる一件だった。
それから数日後の夜営中
「うぅむ、やはりここはさらに(女性の)仲間を入れた方がいいんじゃないでござろうか」
そう言ってみるがどうも仲間たちはちゃんと聞いている様子が無い。
どうしたんでござろうか。ここは頷くところでござろう。そうして(女性の)仲間を追加で入れるべきところでござろう。
そうして仲間たちを伺っていると、ヒャロンとリタが頷きあい吾輩のそばに来た。
「どうしたんでござるか?」
本当にどうしたんでござろうか。と思っていると何やら二人でアイコンタクトを取り合いヒャロンが口を開いた。
「ヤマモト様。勇者の仲間としての旅は非常に重要な使命です」
そんなことは分かっているでござる。何が言いたいんでござるか?
「……しかし、私はそれよりも大切なものを見つけました。……私、ヒャロンはリタと結婚したく思います」
…………な、何――――!! でござる。
「え!? マジでござるか」
「はい、本気です。リタはヤマモト様が購入した奴隷だということはゆめゆめ承知です。しかし自分の気持ちに嘘はつけません。もしヤマモト様のお許しが頂けるなら、リタを奴隷から解放してやってほしいのです。」
「勇者様。自分勝手なことではございますが、私の方からもお願いいたします!」
な、なんとこの2人、デキていたのでござるか。今までそんな雰囲気など一切なかったように思うでござるが……
「わ、吾輩は別にかまわないでござる。」
え? でもゴリラでござるよ。確かにリタは気遣いもできるし、性格も問題ないでござるが……ゴリラでござるよ?
「あ、ありがとうございます。」
「勇者様、ありがとうございます。」
ま、まあ本人たちが納得しているのならいいでござる。吾輩はそんなに狭量ではござらんからな。
ヒャロン殿はケモナーでござったか。
そう思っていると、ガウリールとゲイルが同じく吾輩のそばに寄ってくる。なぜか2人は手をつなぎアイコンタクトをしあっているでござる。
「ヤマモトさん少し話が、」
き、聞きたくないでござる。……そ、そんなことないでござるよね。
「な、何でござるか」
ガウリールとゲイルは決心したような顔をし、口を開いた。
「ヤマモト、お前と一緒に旅をするのは楽しかった、だが俺は旅の中で大切なものを見つけちまったんだ」
「……そ、それは何でござるか」
「お、俺たち付き合っているんだ。」
「そうなんだ、だから申し訳ないが旅を抜けさせてほしい」
……り、理解できないでござる。男同士でござろう。男の娘ではないでござるよ。2人ともガチムチのおっさんでござるよ。ウホッ! でござるか。
「わ、分かったでござる。」
そう言うしかないでござろう。他に言う事があれば聞かせてほしいでござる。