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110 お宅訪問

 不動産屋のオジサンに案内され私たちは貴族街の端にあるという、私たちがもらった邸宅の前に来ていた。


 フッ、私もこの歳でマイホーム持ちか。


 家の大きさは3人(+1匹)で住むには十分すぎるほどに大きい。まあ、メリノ君のお屋敷なんかを見慣れている私にしてみれば今更大きさにビックリはしないが、自分の(正確には3人の)家だと思うと感慨深いものがある。

 庭もそれなりの広さでフェンリルがいても問題ないだろう。走り回ったりできるほどの大きさは無いが『家』として見るなら窮屈と言うことは無い。

 ちなみにこの世界は中古物件が当たり前で、新築するのは前の家がよほど傷んだり破損した時ぐらいだ。


 そうして外側から見ているうちに、オジサンが懐から鍵を出し、邸宅の門を開けた。そこから中に入って行き、また別の鍵で邸宅の玄関を開ける。


「邸宅の鍵と門の鍵は別となっております。その他この屋敷の中には鍵のかかる部屋などもございますので鍵は複数ございます。今回の案内が終了しましたらノワール様達に譲渡いたしますので管理をお願いします。合鍵が必要になる場合はお申し出ください。」


 そう言って鍵の束をジャラッと見せるオジサン。結構多いな。

 そうして鍵について説明してもらう。玄関の鍵は一回り大きいので分かり易い。各部屋の鍵については持ち手の部分に番号がふってあるのでそれで判断するらしいが、いちいち鍵をかける必要もないだろうと思う。見られたらマズイものがあるわけでもないし。


 そうして家の中を見て回ったわけだが、特に何かがあったわけでもない。外から見た通り十分広いし、部屋の広さや数も3人で済むには十分すぎるほどにある。

 今は人が住んでいない上に家具などもないため少し殺風景に感じるが、内装はしっかりしており特に痛んでいる部分などもなかった。

 風呂がちゃんとあったのも良かった。シャワーだけとかではなく日本のように湯船につかれるタイプのものだ。

 風呂とトイレ、キッチン等の排水は下水に流せるようだ。この都市には古いものではあるが下水道があるらしい。現代人から見ればお粗末なものかもしれないが、それでもちゃんとそう言った設備があるのはうれしい。ただ上水道は、各家庭に繋がっているというわけではなく、裏に井戸があった。あと貴族たちは水魔法の使い手を使用人としていたりもするらしい。


 庭の方は特に何もなかった。広さは十分。雑草などは定期的に管理されているのでそこまで伸びてはいなかった。庭の隅っこに前の持ち主が造った花壇の跡があったぐらいか。

 裏庭には井戸があった。私やティーアが水魔法を使用できるしフェンリルは表の庭に住まわせる予定なのでこちらは特に使用することは無いだろう。

 また裏庭から裏通りへと抜けるための扉もあったが、大きさとしては裏口と言うことでそこまで大きくもなく普段は閉めたままでいいだろう。


 そうして一通り説明してもらった後に不動産屋のオジサンから鍵を受け取った。


「ではこちらの鍵を。本日よりこの屋敷はノワール様達の物となりますので管理の方をよろしくお願いたします。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「いえいえ、また不明な点等ありましたらお気軽にお尋ねください。」


 そう言ってオジサンは帰って行った。丁寧な人だったな。

 まあ王様からの紹介だし、ちゃんとした人なんだろう。


 気軽に訪ねてくださいと言っていたが、不動産屋さんの場所知らない。


◇◇◇


「――と言うわけで家具をそろえるのと掃除で3日ほどでしょうか」


 メリノ君の家での夕食の席で、フラン夫人に本日の事と今後の事を説明する。

 一応管理会社? が定期的な掃除をしていたみたいだが、丁寧に掃除をするとなると1日ぐらいは潰れるだろう。それから家具類や日用品等を運び込んでとなると3日ぐらいかかるとの予想だ。

 なお家具類はすべて既製品でいいだろう。貴族の中には家に合わせてオーダーメイドにする者も少なくないそうだが、別にそんなところで贅沢をしなくてもと思う。高級品なら既製品でも十分な品質なのだから。


「そう、なら家の贔屓にしている店を紹介するわ。値段も品質もある程度取り揃えているわよ」

「お言葉に甘えて」


 フーカ家のお抱え商人でも紹介してくれるのだろうか。まあこういうときは貴族の人脈と言うのは有難い。今までは宿か他人の家にいたので家具なんて買ったことが無いからね。


「ねぇ、ご主人様ぁ。寝室は一番広い部屋に大きなベッドおいてみんなで寝ましょうよぉ」

「いいですね!」


 あれだけ部屋があるのになぜか全員同じ部屋で寝ることを提案してくるティーア。そしてコクコクと首を振り同意しているソレイユちゃん。


「え? あれだけ部屋があるんだから一人一部屋でいいんじゃないの?」

「あら、ご主人様は分かっていないわねぇ。好きな人とはいつも一緒に居たいのよ」

「そ、そうです!」


 一緒に居たいのはいいけど、一緒に寝るのはどうなんだ?

 あとソレイユちゃんがさっきからずっとコクコクと首を縦に振っている。


「まあ、その辺は家具を買いに行ったときに決めよう。」


 そう言って食事を再開し、


「ところで話は変わりますが、ノワール。あなたはこれからも様々な活躍をしていくだろうと私は思っています。」


 そう言って食事を再開しようとした私にフラン夫人が話しかけてきた。


「あ、はい、ありがとうございます?」

「ですので……そうですね、地位をせめて子爵まで上げなさい。そうすれば良い縁談を私から紹介してあげましょう。」


 そう言ってチラッとメリノ君を見るフラン夫人。なにかあるのだろうか?


「ごっ、ゴホッ! お母様!」


 視線を送られたメリノ君がビクッ! となって姿勢を正しながらフラン夫人を見た。


 と言うか縁談て、フラン夫人が私の結婚相手を見繕うということだろうか? これはあれか、お見合いが大好きなオバチャン的気遣いなのだろうか。私は今のところ結婚は考えていない……と言うか気にして無かったと言う方が正解か。

 いきなり誰か知らない男の人を連れてこられて「あなたの結婚相手ですよ」とか言われても困るんですが。

 まあオバチャン的なモノだったら何を言っても無駄なんだろうが。


「はあ……しかしさすがにそこまでしていただくのは」

「無理強いはしません。しかしあなたに期待している者がいるということは忘れないでくださいね」


 「――ね」の部分でまたメリノ君を見るフラン夫人。


 ??


 ちなみに後で詳しく聞くと、この世界では親が決めた許嫁など普通にいるし、貴族間では仲のいい貴族や派閥の代表貴族に婚約相手を紹介してもらうなどと言うことは普通に行われている。政略結婚上等、恋愛感情より家の利益だ! の世界だからな。

 騎士爵など仕えている貴族によって結婚相手を紹介してもらうなんて当たり前だそうだ。

ついに主人公さんがマイホーム持ちに

3人と1匹のマイホームって字面だけ見ると……

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