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98 王様

 王城内に案内された私たちは一番偉そうな騎士様の先導の元、アリシアさんを先頭に応接室の一つに案内された。

 騎士の人がコンコンとノックした後


「アリシア・ショコラ・メープルローズ様他『高潔な乙女達(ノーブルメイデン)』の方々をお連れしました。」

「入りなさい」


 部屋の中から返事が返ってきた後、騎士の人が扉を開き中に入るように促す。

 作法とかは知らないがアリシアさんが先頭だし大体任せとけばいいだろうと思い、順に入っていく。ちなみに「不敬罪じゃ、死刑!」とか言われたらダッシュで窓から逃げる予定だ。


 それなりに大きな応接室の中にいたのは知らない紳士とご婦人が数人……後メリノ君もいる。いる場所やら着ている物の質とかからかなり上の人なんだろう。貴族でも上位の人とか王族とかだろうか。


「父上っ! 母上っ!」

「おお、アリシア!」


 一番端っこにいる男女とアリシアさんが驚きの表情で見つめあっているが、偉そうな人の隣にいる老人が咳払いすると、皆真顔に戻った。


「失礼いたしました……国王陛下、お久しぶりでございます。」


 一番偉そうだと思われる男性を見てアリシアさんが、ドレスのスカートを掴んでお辞儀をする。確かカーテシー……だったっけ?

 その後ろに控えていたカーマインさんも同じようにしている。


 て言うか王様だったよ。どうすんの? こんな場合のマナーとか知らないよ。一応、アリシアさんをまねて……私、スカートじゃないだが……

 片膝をついてお辞儀をしておこうと漫画でしか見たことの無い作法を行う。


「そこまでする必要はないです(ボソッ)」


 カーマインさんからダメ出しが来た。

ので、あわてて立ち上がって礼だけする。見るとソレイユちゃんやティーアも礼をしていた。

 なんだよ、私だけ恥ずかしいじゃないか。


「よいよい、この場には我々しかいない。それに非公式な場だ。楽にしてもらって構わん。」

「ありがとうございます。」


 対応はアリシアさんに丸投げしておこう。


「それで陛下、突然のお呼び出しの理由ですが……」

「ふむ、その前に自己紹介をしておこうじゃないか。後ろのお嬢さん方は我々とは初対面だろう」

「ご配慮有難うございます。」

「うむ、では私から――


 やはり一番偉そうなオーラを放っている人は王様だった。30歳代ぐらいだろうか、若々しい。

 その隣にいる老人が宰相の人。ひょろりとしていて典型的な文系人間という感じだ。

 反対の隣にメリノ君と一緒にいる女性がメリノ君の母親だった。(パトロンは彼女名義であるが会うのは初めてだ)

 さらにその隣にいるのがアリシアさんの両親だそうだ。

 そして、私たちの側にいる騎士は近衛騎士の騎士団長。


 そうして、今度はこちらの番なのだが、私たちは黙ったままでいいらしい。騎士団長さんが順に私たちを紹介していってくれた。


「女性のみのパーティーと聞いていたが、更に美人ぞろいとはな。ははは、私も後20歳若ければな」

「お戯れを」


 もう全部アリシアさんに話すのは任せて、私たちは後ろで黙っていることにした。

 やがて席を勧められ、全員が席に着く。


「それで、早速ダンジョンの話をと行きたいのだが、その前に一つ謝らなければならない。アリシア嬢、我が愚息が失礼をした。」


 そう言って、頭を下げる王様。

 その行動に周りはぎょっとしている。非公式の場であれ王様が頭を下げるなんてめったに無いんだろう。


「もちろん謝って済む問題ではないことは分かっている。第二王子(あれ)には相応の罰を下した。アリシア嬢にも代わりと言っては失礼だが良い縁談相手を私自ら探そうと思う。」


 聞くところによると、第二王子は王位継承権をはく奪の上僻地へ飛ばされる予定らしい。

 あと、第二王子を寝取ったエリナ男爵令嬢もアリシアさん暗殺の罪で死罪が確定しているそうだ。そう言えばいたなそんな奴。ウィルズだったか。剣がすごく上手く、ダンジョンでカーマインさんを殺そうとした奴だ。


「陛下、頭をお上げください。あの件については私はもう気にはしておりません。」

「そうか、そう言ってくれると助かる。」


 そうして、二言三言話した後に、話はダンジョンの事へと、


「して、ダンジョンを踏破したということだがその話を詳しく聞かせてほしい。」

「承知いたしました。――


 そうして語られるのは、内容的には私がギルドマスターにした話をより詳しくし、さらに報告というより冒険譚を話している感じだ。それをアリシアさんが貴族流の言葉遣いや身振り手振りなども交え説明していく。

 少し問題があるとすれば、最初から私がレベル200以上だった件と、回復魔法どころか蘇生魔法まで使用した件を話してしまったところである。

 さすがにそこをごまかして話すのは無理があったので仕方ないし、そもそもアリシアさんはあまり気にせず話していたのだが、そのシーンを話す際には全員の視線がこちらを向いた。めっちゃ見られているわー。


「――そうして(わたくし)たちは迷宮を制覇いたしました。」


 その後、アリシアさんの最終的なレベルやギルドでブラックカードをもらったことを話して話を締めくくった。


「ふむ、なかなかに面白い話であった。強敵を排し、レベルを上げ、宝も手に入れる。なるほど死の危険さえなければ夢のような話だな。しかし――」


 そうして王様は意味ありげな視線で私を見る。


「――ノワールといったな。現在、蘇生魔法が使える物はいないと聞いていたのだが?」

「彼女は冒険者であり教会などには所属していないと聞いております。そのせいでお耳に入らなかったのではないでしょうか。」

「ふむ、そうか。まあそれについては後で個別に話を聞かせてもらうとして――」


 何言ってんの!? 嫌だよ個別に話とか。


「――アリシア殿、件のギルドカードを見せてもらえるかな」

「ええ、こちらです。」


 そう言って対面に座る王様にスッとギルドでもらったばかりのブラックカードを差し出す。国王の前なのであからさまに表情を崩したりはしないが、動作の端々にドヤ感が溢れている。

 そうして出されたカードを対面に座る皆が覗き込む。


「ほう、これが。確かにギルドの刻印が入っているな。それにレベル355か。さすがは迷宮踏破者……いや、さすがはアリシア嬢といったところか」

「このカードは確か王立研究所で保管されていたものですね。最近になってギルドから注文があり在庫がはけたと聞いておりましたが、まさか彼女たちが使用者だとは……」

「いえいえ、レベルが高いといっても、(わたくし)などまだまだ未熟者でございます。」


 すげぇ、あのアリシアさんがへりくだってるよ。さすが王様。

 ブラックカードについては宰相さんが知っていたらしく補足説明を入れてくれている。


「なるほど、よい経験であった。それで、話は変わるが、宝は出たのであろう? 譲る気はないか。無論タダとは言わんよ。」

「……陛下、誠に申し訳ありません。それについてですが、支援してくださったフーカ公爵家のメリノ様との話し合いもありますので、そのままお譲りするというわけには……」

「そうか、ならばここで話し合っていけばいい。何、別に無理矢理奪おうというわけではない。どういう話になろうとそなたらに不利益になるようなことは無いと誓おう。」

「……えっと」


 いくら王様の申し出とはいえ、目の前で宝の配分の話をするのはさすがにまずいと思ったのかアリシアさんが言葉を詰まらせる。とはいえ一部の宝に関しては王族への献上も考えていたのでこの場で渡しても問題は無いのかもしれない。

 応接室と言いながらも大人数が入れるこの部屋はテーブルもそれなりに大きいので宝の40個ぐらいは問題ないし。


「私は構わないと思いますわよ? メリノはどう?」

「あ、はい、僕もそれでいいです。」


 メリノ君一家もここで配分の話し合いをすることについては問題ないようだ。

 メリノ君の家は公爵――貴族の中では一番高い位なので彼らが賛成してくれたのならいいだろう。


「分かりました。それではノワール、まずは私たちで先に決めたように出してもらえるかしら」

「分かった。」


 そうしてアイテムボックスからテーブルの上に順に並べていく。

 10個、10個、20個とまとめて置く。ダンジョン内で話し合ったようにアリシアさんの取り分、メリノ君へ渡す分、そうして、アリシアさんが王族への献上としたいと言っていた分だ。(話し合いによってはメリノ君に譲ることになる)


「産出した宝は事前に確認してあります。こちらの物が(わたくし)が頂きたいもの、その隣の纏まりがメリノ様にどうかとノワールたちと選んだものとなります。その横にある20個に関してはメリノ様や(わたくし)はこの国の貴族ですし地位を固めるためにも王族の方々に献上品としてはどうかと思っていた品です。あくまで(わたくし)たちで勝手に分けていますので、この後メリノ様も交え意見を交換できればと思っていたのですが」

「ほう、これがですか……」


 周囲の人たちもテーブルの上に並べられた宝を覗き込むように見つめてくる。


「あの、お母様、その……」

「メリノ。支援したのはあなたです。あなたの好きなようになさい。母は口出しいたしませんから。」

「はい」


 そう言われてメリノ君が一歩前に出てきた。そうして自分の取り分とされている宝の前に行き、


「アリシア様、こちらが僕のためにと選んでくれたということですが、」

「ええ、そうですわ。ねぇ?」


 そう言って私の方に振ってくる。一応メリノ君の奴を選んだのはアリシアさんじゃなくて私だしな。


「ああ、メリノ君は男の子だし、アクセサリー類よりも武器などを中心に選んだつもりだ。……です。嫌なら言ってく……ださい。」


 一応王様の前だし、メリノ君は公爵家の子息なのであわてて敬語にするが、周囲はそれほど気にはしなかったようで、視線を宝に固定したままだ。

 母親の方は会うのが初めてなので、いきなり息子とタメ口で会話しているとか悪印象かと一瞬思って様子を伺ったが気にしてない様子。よかった。


「あの……いつも通りの話し方でいいですよ。それで、こっちの剣などは……」

「それは聖剣だ……です。武器クラスAと非常にいいものだと思ったので入れています。今は大きいかもしれませんが、メリノ様ももう少し成長すれば扱えるようになるのではないでしょうか?」


 いくら本人からいつも通りの話し方でいいと言われても、こんな場でフランクに話すとかちょっと間違えれば不敬罪じゃないのか。せめて王様がいる前では敬語を使っていよう。


「……つまりこれを扱えるような男になれと(ブツブツ)」


 メリノ君が剣を見つめながら何かつぶやいている。


「分かりました。必ずこの剣を使いこなせるようになりノワールさんに並べるようになってみます!」

「お、おう」

「それでこちらは――」


 そうしてメリノ君や王様たちのために、目の前にある宝の解説を順々に行っていった。

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