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97 ブラックなカード

 私たちはギルドを後にしようとしたのだが、


「ちょっと待った! 帰る前にこっちを先にしておいてくれないか。おいあれを!」


 ギルドマスターが職員に『あれ』なんて言う指示を飛ばした。『あれ』ってなんだ?

 そう思ったらギルド職員のオバサンが小走りで奥から慌てて出てきた。手にはトレイを抱えている。そこに乗っているのは――


「いやー、お嬢ちゃんのレベルが測れなかっただろう? だから王立研究所に頼んでもっと高性能な奴を用意してもらったんだよ」


 出てきたのはトレイに乗せられた黒いカードだった。


「これは何とレベル500まで測れるという特別製の奴さ! 高い買い物だったがお嬢ちゃんのために用意したんだ」


 oh、ブラックカードだ。ほんとに出てきたよ。

 このブラックカードは王立の研究機関に頼んで特別に買い取ったらしい。といってもモノ自体は以前からあったものの、それほどの高レベル者が出るとは思っていなかったためお蔵入りになっていた物みたいだ。

 研究開発費を回収するためものすごく高価な上にカード5枚以上+レベルを測る板の魔道具のセット販売しか受け付けていないという。あわよくば在庫をこの1回で処理しようという魂胆が見える物だった。


「ほう、5枚あるのか! ばっちりだな」

「何がばっちりなんだい?」

「今回の迷宮攻略によって、私以外のパーティーメンバーもレベル200を超えている。全員分と考えればピッタリじゃないのか」

「何だって!? ……そりゃまた……いや、迷宮を攻略したんだ。それぐらいのレベルにはなっているんだろうね」


 そうして私たち皆にブラックカードが配られることになった。ちなみに、お代はサービスらしい。そもそも、こういう事態を想定していなかったため有料にしていなかったようだ。



〈以下ギルドカードの記載〉


名前:ノワール

レベル:500+

ランク:D

実績:M0100


名前:ソレイユ

レベル:220

ランク:D

実績:M0100


名前:ティーア

レベル:305

ランク:D

実績:M0100


名前:アリシア・ショコラ・メープルローズ

レベル:355

ランク:F

実績:M0100


名前:カーマイン

レベル:290

ランク:F

実績:M0100



「ブッポォォッッ!! 何だい、アンタたち魔王討伐でもやるのかい!? 大体何だい! お嬢ちゃんは、500以上って!?」


 ギルドマスターが顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。おいおい、そんな大声で言うなよ。周りに聞こえちゃうだろ(ニヤニヤ

 ブラックカードもゴールドカードと同じく計測範囲以上の場合はレベルの後ろに+がつくようだ。


「おい、今500以上って聞こえなかったか?」

「500以上……何が500以上なんだ?」

「乳のデカさか」

「ザワ……ザワ……」


 様子のおかしいギルドマスターに気付いたようで、周りも少しざわめき始めた。

 て言うか誰だよ乳のデカさ500以上とか言った奴、どういう単位系だよ。


「ギルドマスター落ち着いて、以前も言ったがあまり言いふらさないでほしい」

「はっ! ……悪かったね、ちょっと取り乱しちまったよ。でも何だい500以上って、見たことないよ!」

「今までいなかったのか?」

「いるわけないだろ!? ……ゴホン! ……ところでお嬢ちゃん。あんた鑑定スキル持ちの〈鑑定〉を受ける気はあるかい? 今ならギルドに居るから正確なレベルが測れるよ。」

「……いや、止めておこう。そもそも私も鑑定スキルは持っているから自分のレベルは知っているんだ。」

「…………お嬢ちゃん、なんでも持ってるね。まあ、そうかい。」


「フフフ、これが、これが(わたくし)のカード……特別なカード」

「色が違うだけですが、特別感がありますね。お嬢様。」

「それにしてもよくこんなレベルまで測れる魔道具があるわねぇ」


「ところでこの『実績:M0100』というのはなんだ?」

「ああ、それかい。それはランクとは関係が無いけれどギルドへの貢献が認められた場合に記載されるんだよ。いちいち全文を書いていたら面倒だから番号で管理している。お嬢ちゃん達のカードに記載してある『M0100』は迷宮を踏破したっていう意味さ。」

「そうなのか。」


 ギルド職員の人は分かっても、普通の人はこれを見てもわからないんじゃないか? それだと酒場とかで「私、迷宮踏破したんだぜ」と自慢話ができないんじゃ……



 さてこれから、メリノ君の家に行って宝物の確認をしないとな。一応、半分を王族への献上品としたいというアリシアさんの意向もあるし、そこらへんも話し合わないといけない……と思ったのだが、それよりも前にアリシアさんが両親に無事と戦果を報告したいらしく、先にアリシアさん――メープルローズ伯爵邸へと向かうことになった。

 確か成果を出してこい、と家を追い出されたんだったよな。このまま家に乗り込んで父親の前でブラックカードを見せびらかしつつ高笑いするアリシアさんの光景が目に浮かぶぜ。


◇◇◇


 そうして迷宮都市ギルドから王都の貴族街に向かっている途中に、前から馬に乗った騎士の一団と馬車がやって来た。誰かお偉いさんが移動中なのだろう思いススッと道の端によると、それらの集団は私たちの目の前で止まった。

 騎士たちがフェンリルを見て一瞬驚いた顔をしたがすぐに真顔に戻り、馬上から一人が声をかけてきた。


「アリシア・ショコラ・メープルローズ様でいらっしゃられるか?」

「ええ、そうですけれど、あなた方は?」

「失礼、私は王宮近衛兵の――」


 どうやら話を聞くに、アリシアさんに王宮へ来てほしいとのことだ。王命であれば仕方がないが、できれば自身の両親やパトロンであるフーカ公爵に挨拶に行きたいと言ったのだが、皆王宮に集まっているらしい。

 何かパーティーでもあったのだろうか?


「他の皆さまは『高潔な乙女達(ノーブルメイデン)』の方々でしょうか。……では御一緒ください。」


 私達の方も声をかけられた。

 どうやら私たちもお呼ばれしているらしい。みんなして、馬車に乗る。フェンリルは徒歩移動だが。

 乗り込んだ馬車はいかにも貴族の使いそうな屋根つきの豪華な馬車である、外装も内装も豪華である。そして下品にならない程度にオシャレでもある。まあ、アリシアさんは貴族――伯爵令嬢だからこの待遇は当然と言えば当然だろうが。


 メリノ君も別の人たちが呼びに行っているらしい。メリノ君や私達まで呼ばれたということはダンジョンの事だと予想がつく。踏破したことが知られているのだろう。耳が早いことだな。やはり王侯貴族ともなると専用の諜報員とかがいるのだろう。


 進みはゆっくりだが、それでも周囲の景色がだんだんと移り変わってゆく。冒険者や一般市民が住む地区を抜け貴族たちの高級住宅街へ、そして、窓からもよく見える大きな城がだんだんと近づいてくる。

 そうして城内まで入って行った。


 ……そう言えばそのままついてきたけれど、私やソレイユちゃん、ティーアって貴族じゃないのに王城内にいていいのだろうか。作法とかも知らないのだけれど。フェンリルも後ろに付いて王城内に入っちゃってるんだけれど。


「思ったよりも早くお声がかかりましたわね」

「ええ、せめて化粧直しをする時間がもらえればよかったのですが」


 子フェンリルはアリシアさんの膝の上で大人しく撫でられていた。


 その後、目的地に到着して馬車を降りた私たちは、


「そちらの従魔殿は王城内へはさすがに入れませんので、こちらで見張りを付けておきます。では、皆さまはこちらへ」

「この子もダメですの?」

「申し訳ありません、ペットを連れ込む場合は事前の申請が必要でして……」


 さすがにフェンリル親子は王城内へと入れないので馬などのいる厩舎の方で見ていてくれるらしい。フェンリルは人間の言葉がわかるので普通に話しかければいいと騎士の人に言っておいた。

 そうして私達5人だけで王城内へと入っていく。

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