10 初めてのクエスト 2
気づいたらブクマ80になってました。ありがとうございます。
「おい、大丈夫か少年」
よく見ると膝を擦りむいているな。……そういえば〈回復魔法〉とかいうスキル持っていたじゃないか。……ついでに自分にもかけておくか。さっき殴ったとき手が痛かったがまだ痛みが引いていないし。あと頬も傷ついていたな。マントのフード部分も破けちゃったけどこれはどうしようもないな。まあ、綺麗にフード部分だけ破れたので、マントとしてはまだ使えるか。
「ヒール」
呪文を唱えると目の前の子供と自分がぽわゎんと光りだした。すぐ収まったが、傷はなくなったみたいだな。頬の傷は確認できないが。
「う、あ、ひっぅく……」
うあ、泣き出してしまった。どうしよう。子供のあやし方なんて知らないぞ。日本にいたころは独身だったし、親戚が集まるときとかでも、ちゃんとその子の親御さんがいたから、子供の泣き止まし方なんて知らない。
「お、おい、泣くな……」
「ひっく、うぁぁぁぁぁ――」
本格的に泣いてしまった。どうする? どうしよう。えーと、確か親戚の人がやっていたことをまねて……そこまで覚えてないが、
「大丈夫、大丈夫だ。」
とりあえず、抱きしめて頭をゆっくりとなでる。こんな方法で泣き止むのか微妙なところだが、他に知らないしな。……子供の顔がおっぱいに顔が埋まっているぜ。ぜひそこを代ってほしい。……自分の胸なのが悔やまれる。
「大丈夫、怖い奴らはもういないから……」
「っく、ひっく、ぁぁぁっく……」
そうやって10分ぐらい経った頃だろうか。ようやく子供のほうが泣き止んで落ち着いてきたようだ。体を離して尋ねてみる。あ、鼻水が服に……(;ω;)ショボーン
「大丈夫か?」
「っく、うん。」
「そうか、強い子だ。……ここへ何をしに来たんだ?」
「あ、あの、薬草を取りに……」
そういって近くに落としていた籠を取って中身を見せてくる。……私が採っていた薬草と同じものだ。
「そうか。依頼された分は取り終わったのか?」
「……まだ、見つからなかったから少し森の奥に来てみたの。」
そうか、それであの場面に出くわしたと。……見つからなかったのは多分私が浅い個所で余計にとってしまったからだろう。……ごめんなさい。
「よし、おに……お姉さんも一緒に探してやるから少し待っていろ。」
そういって、とりあえず子供をその場において、さっき投げたショートソード拾いに行こうと思ったんだが、なぜか、マントの裾をつかんだまま一緒についてくる。……まあいいか、この辺にはもう何もいないし。
それからショートソードを拾って、あとオーガの死体はアイテムボックスに放り込んでおく。確か魔物なら魔石がとれるとテリアさんが言っていたが、私は魔物の魔石がどこにあるかなんて知らない。とりあえず、ギルドに持っていけば解体とかしてくれるんじゃないだろうか? 手数料とかとられそうだが。まあいい。
その後、子供……
「少年、名前は何というんだ。」
「え、あ、タミ……です。」
「そうか、私はノワールという。よろしく。」
「あ、はぃ……」
ん、ちょっと顔が赤いな。さっき大声で泣いたのが恥ずかしかったのだろうか。
あと、マントの裾を引っ張られると歩きにくかったので、手をつないでやった。
この開けた場所には結構いろんな草が生えている。ここに目的のものがあるといいんだが。……あ、ふつうに生えているな。
「おい、あれじゃないのか?」
「ああ、そうです。」
そう言うと、薬草のあるところに駆け寄って行こうとするが、手を放すとなぜかすごく悲しそうな顔をされた。
「あの、」
「ん? なんだ?」
「ど、どこにも行きませんよね」
そういいながら、脚は薬草のほうに向かっているのに、ちらちらとこちらを見てくる。まあ、あんなことがあった後だ、1人になるのは怖いんだろう。
「ああ、別にどこにもいかんよ。それよりも早く依頼を終わらせて帰ろう。」
そう言ってやると、なにか、あわてて薬草を摘んだ後、すぐこっちに戻ってきて手をつないできた。そんなに急がなくてもどこにもいかないのに。
「終わったのか?」
「うん」
「そうか。じゃあ帰るか。」
そのあとは特に何もなく街へ戻って行った。……あ、試料採集依頼のキノコ採ってないや。まあいいか、期限とか無いし。
冒険者ギルドへやってきたんだが……タミ君が手を離そうとしない。
「タミ君、依頼の報告へ行かなくていいのか?」
「え、あ、すみません、……ありがとうございました。」
顔を赤くしながら小さな声でそう言うと、ようやく手を離してカウンターのほうへ並びに行く。手を離す瞬間なぜかすごく名残惜しそうな顔をされたが……なつかれたのか? お礼もちゃんと言ったしいい子だな。
「まあいいや、私も報告にいこう。」
そう言って、いつも通り金髪巨乳のおねーさんの列に並んだ。いつも通りだが、やはり混んでいた。
ちょっと時間がかかったが自分の番が回ってきたので、
「依頼完了の報告をしたいのだが」
「あ、はい、では依頼表と依頼の品をお願いします。」
「ああ」
そう言って、2枚の依頼表と依頼の薬草をマントの懐のポケットから取り出す。
「はい、確認しました。……あの、ノワールさん。受けた依頼は3つでしたよね。」
おお、金髪巨乳おねーさんに名前を覚えてもらっていたぜ。イヤッフー
「ああ、もう1つのほうは見つからなくてな。まあ、明日にでももう一度探してみるよ。」
「そうですか、では2つ依頼完了しましたのでこちらが報酬となります。」
そう言って大銅貨を8枚渡してきた。依頼1つあたり40フラムだ。1日依頼をこなしてこれか。本当にしょぼい依頼だな。こりゃ早くEランクにならないとお金がなくなってしまう。
「ああ、そういえば、依頼ではないのだが、途中で魔物を狩ったのだが、買い取ってはもらえないだろうか?」
「魔物の買い取りですか、ゴブリンなどの討伐依頼証明部位でしたらこちらで処理できますが?」
「いや、魔物2体分だ。討伐証明部位というのがわからなかったし、もしかしたら、他に何か使える部位もあるかもしれなかったのでな。」
「それでしたら1番端に大きめのカウンターがありますよね。そちらに持って行ってください。……? でもノワールさん今持ってないですよね? どこかに置いてあるんですか?」
「いや、アイテムボックスにしまっているのだが。」
ザワッ!
いきなり周りが少しざわついた。なぜだろう?
「ノワールさん、アイテムボックス持ちだったんですか?」
「ああ」
「あーと、それはあまり言いふらさない方がいいですね。」
「なぜだ?」
「アイテムボックス持ちは結構数が少ないですから。」
「そうか、忠告ありがとう。」
そう言いながら、1番端の買い取りカウンターに向かう。さっきざわついたのもアイテムボックス持ちだと分かったからかな。便利だもんなアイテムボックス。
1番端のカウンターには禿げのおっちゃんがいた。ムキムキで40代ぐらいだろうか。いかにも元冒険者って感じだ。
「ここで魔物の買い取りをやっていると聞いたのだが?」
「おう、ここは魔物なんかの買い取りカウンターだ。お嬢ちゃんが魔物を狩ってきたのか?」
「ああ、これなんだが」
そう言って、カウンターの上にオーガの死体を取り出す。
「なっ、こいつはまたスゲェな。しかもアイテムボックス持ちかよ」
「もう1体あるんだが、出してもいいか?」
「あ、ああ、いいぜ」
よいと言われたので、2体分のオーガをカウンターの上に出す。
「こいつは、オーガか……」
「ああ、それと魔石の位置などがわからなかったので解体などはしていない。……いくらぐらいになるんだ?」
「あ、ああ、ちょっと待ってくれ」
そう言うと、おっちゃんはオーガの死体を確認していく。
「そうだな、1本腕取れてるとはいえ結構完全な状態の死体だから、……2体分で40000フラムといったところか」
なに? めっちゃ高くない? 1体20万円ぐらいだぞ。いいのそんな値段つけちゃって?
「ああ、もちろん解体の手数料を差っ引いた金額でだぞ。」
「そうなのか、まあそれで構わない。」
やべーちょっと浮かれている。顔に出さないようにしないと。ん? なんか周りから見られているな。
「それにしても、すごいなお嬢ちゃん初顔だが、Cランク冒険者といったところか?」
「いやFランクだが、」
「は? いやいや、……まさか勝手に北の森に行ったのか?」
「いや、東の森にしか言っていないが?」
「ちょっと待て、てぇことはこのオーガは東の森にいたのか?」
「ああ、東の森の少し奥に行ったところだな。」
「なっ、ちょっと待ってろ。」
そう言うとおっちゃんはどこかへ行ってしまった。え? どこ行くの?
少し待っていると、おっちゃんが戻ってきた。あ、金髪巨乳のおねーさんも一緒だ。
「おう、お嬢ちゃん。ギルドマスターがお呼びだ。ちょっと来てくれ」
「は?」
ようやく10話までできました。