表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/43

小話① 「猫の集会 秘密の作戦会議」

活動報告に書いたSSの再録です

 おぼろ月夜の十三夜。

 猫たちは霧の立ちこめる、とある空き地に集まっていた。


 議長のカラバが真ん中に立った。


『さて皆さん、お久しぶりです。議長のカラバです。無事戴冠式は終わりましてこうして戻ってこられました』


「「「にゃー」」」


『式の土産はないのかって? はい、紅白饅頭とタイの骨でよろしければ』


「「「にゃー!」」」


『そこで「お帰りカラバ!」ですか。まあいいんですけどね。ところで皆さん、今日の議題です。って、聞いていませんね』


「みゃ」


『ミミィさん。「あいつらは気にしなくていいから、早く言ってよ」ですか、分かりました。議題は【王がメガネ令嬢を女として見れるようにするには】です』


「「「?」」」

「にゃあ?」


『リンクスさん。「それは君のおうちの問題だよね。そんなのボクらに関係なくない?」ですか。それが大アリなんです。はい、ドラさん説明してください』


「うな……」


『疲れていますね、珍しい。「強敵だ。王の三次元の女に対する壁が高すぎて、メガネ令嬢を全く女として意識できない」ですか』


「にゃあ?」


『リンクスさん。「ますますボクらに関係なくない?」ってそれはそうなんですけど』


「みゃあ!」


『そう、そうなんですよミミィさん。

「チサが病気療養中の先王に召集されて、城詰めで王の女嫌いを治す手伝いをさせられているんだ! その間僕はおやつなしだよ! ついでにみんなもおやつなしだよ!!」

ということで、今後猫の集会では、チサ姫のおやつが食べられない可能性があるのです』


「「「に、にゃー!!!!!!!!」」」


『チサ姫は、グルメな猫から悪食の猫まで、幅広い猫がおいしく食べられる料理とおやつを作る達人です。たまにミミィから差し入れされる逸品を楽しみにしている猫は多いでしょう。だからこそ、この問題は皆で猫知恵を出し合って解決せねばなりません!』


「にゃあ」


『リンクスさん……。「猫の知恵ってとても浅いよね」ってそれはそうなんですがね。その分は数と量で補いましょう。皆さん、積極的な発言をお願いいたします!』


「にゃ!」

「うな……」


『はい、三丁目のブチさん。「メガネを裸にして寝室に放り込め」ですね。でもドラさんはもう失敗したそうです』


「がう!」

「うな……」


『はい、山猫動物園から脱走してきたライオンのレオさん。「殴り倒して上に乗っかれ」ですね。ドラさんはそれも失敗したそうです。危機察知能力だけは高いとか』


「なー」


『はい、河原の猫番長さん。「秘境で発見された幻のエロ本を片手に愛を告白し、これが欲しくば言うことを聞けと脅す」ですね。ドラさんどうでした?』


「うなあ……」


『それはまた……。「土下座して両手を差し出し、王座をくれてやるからエロ本をくれと言った」と……手強いですねえ』


「みー……」


『ミミィさん。「もう三日もチサのごはんを食べていないんだ。毎日カリカリなんだ。もう限界なんだ」ですか。ああ、倒れないでください。困りましたねえ』


『おい、お前等。そもそも他猫が男女のあれこれに手を出すなんて無粋だ。やめておけ』


「にゃ」


『はあ? リンクス、お前「ラブリー、夫婦円満を寝室でも見守る猫が何かを考えてよ」って。阿呆、そこまでせんわ。それにさっきから不可能といっているだろうが』


「うな」


『ドラさん? 「それだ。ラブリーの手法と猫の数と量で勝負だ」ってなんですか?』


「み?」






 次の集会は霧の夜。

 参加した猫はみんな毛皮がしょぼついていた。

 そしてなんだか、全員の雰囲気もしょぼついていた。


 議長のカラバとドラだけが、濡れ猫ながらも元気に会議を始める。


『皆さんご協力をありがとうございました。全猫を使い、当人たちを裸に剥いてベッドに放り込み、全猫によって逃げられないように部屋を埋め尽くして一晩暮す方法は、まあまあうまくいきました。

 チサ姫がドア越しに指を銜えて見ていたのが印象的でしたが、今後も強制的に裸の付き合いをさせましょう』


「「「に……」」」


『「空気が生ぬるくて居心地が悪い」と? 何をおっしゃいます。ちゃんと給料に煮干しを払ったではありませんか。私の主人が』


「にゃ!」


『はい、リンクスさん。「どうせ国の税金で買ってくれるなら山猫バーガーにしてよ!」ですか。いやあ今、国民の目が厳しいから余計な出費はできないんですよ』


「み」


『はい、ミミィさん。「チサが帰ってきてくれて嬉しいけどさ。王は確実に猫嫌いになったよね」ですか。

 いえいえ。女よりも強烈に嫌いなものが出来れば、逆に活用ができますよ。ねえ、ドラさん』


「うなー」


『「お前もよく分かっているじゃないか」ってドラに褒められてどうするんだ。カラバ、お前って昔から言うことは立派だがやることは謀略家だよな』


『ふふふ。【長靴を履いた猫】の通称は伊達ではありませんよ。あの調子で二人の仲を進めてしまいましょう』


「みぃ……」


『ミミィよ。「チサがこいつに狙われなくて良かった」って。本当だな。せいぜい敵にならないようにしとこうな』


「みぃ……」


 どうせ月も出ていない。

 全しょぼつき猫は散る。


 もうエロ本に埋もれるのは御免だと口々に鳴きながら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ