秀頼の眼 1
「こ、今回の件は其方に原因があるのですぞ!『秀頼様に前線に出て頂く。』などと申すから!!」
額に汗をかき口からツバを飛ばしながらせかせかと喚き廊下を歩く大男にそう言われ
「あ〜、某は何もいきなり総大将を前線にお連れしようとはつゆほどにも思ってござらん。
『そういう事もあり得るかもしれませんぞ。』と申しただけにござる。」
と大男の少し前を涼し気な顔で歩く赤備えの鎧武者が答えた。その後すぐに「『いきなり』は、な。」と言ってニンマリと笑った。
その笑みに少し青ざめた後
「い、今は徳川と豊臣の大戦。豊臣家を、そして秀頼様の御身をお守りするための戦にござる。目上の者達の軍議を遮って発言した上に秀頼様の御身をお大事に思う淀殿の心中を全く顧みぬ発言なんたること!戦は意表を突けば良いという物ではございますまい!まずは淀殿に『秀頼様には大野治長殿の申す通り天守にて我らの指揮をお願いいたしまする。』とハッキリとお伝えして安心させて頂きたい!わかったでござるか?!!」
今度は顔を赤くしてツバを飛ばしながらそう言う大男を赤備えの鎧武者横目でチラリと見る。
口元は微笑を浮かべているがその目はまるで獲物を見る猛禽類の様に鋭かった。
「・・・と、大野治長殿が申しておりましたぞ。
お、大野殿はかなりお怒りの様子。まぁ淀殿と並び秀頼様を大切に思っているお方ですからな・・・。いや、本当、大野殿はお怒りじゃたわ。ハハ。」と赤備えの鎧武者と目が合わない様うつむき加減で言った。その額には冷や汗が浮かんでいる。
それを見た赤備えの鎧武者は『ニパッ』と口を開き
「あ〜、わかったわかった。後で大野殿にも謝っておく故安心なされよ。」と今度は目も笑わせてそう言った。
「し、しかし何故に城内にて槍を持ち込む?!まさかそのまま淀殿や秀頼様にお会いするつもりではあるまいな?!」
額の汗を拭いながら大男は赤備えの鎧武者が手に携えた十文字槍を指差して喚いた。
「う〜、其処もとも腰に刀を履いておるではないか?槍はワシにとって刀も同然、いや腕そのものじゃ。まして今は合戦中、この件が終わったらワシはすぐに前線に戻らねばならぬ故淀殿も秀頼様もわかって下さるだろう。失礼ついでに淀殿との話が長くなるならばその場にてメシも厠も済ませてしまいたいくらいじゃ。」
赤備えの鎧武者はそう言ってカラカラと笑った。
「な、なんという粗野なお方じゃ。先の合戦にての大活躍、父昌幸殿の武勇伝、さぞ立派な武者かと思っておったのに・・・、やはり山奥での蟄居生活が長かったのかのぅ。」
ため息と共に肩を落とす大男に「さ、着きましたぞ。」と赤備えの鎧武者が言った。
二人が途中まで上がった狭い階段の先は分厚い木戸が上階への蓋をしていた。
まるで天井の様に行く手を遮る木戸を前に
「軍議の後『誰も上がって来てはならぬ』と食事を持った侍女だけを入らせていたのだが中に入った侍女は一人も帰って来ず何の音沙汰もなし・・・。淀殿の命とあらばこちらからは入る事は勿論開ける事も出来ぬ。さぁ!さっき申した通り、いや!それ以上に平身低頭でお願い致しまするぞ!まずはお静かに木戸を叩き中の侍女を呼び出しこの木戸を開けさせませい。槍は拙者がお預かりいたす。」
と額の汗と口の回りのツバを懐紙で拭いながら大男がそう言うやいなや赤備えの鎧武者はどうやったのかこの狭い場所で素早く槍をクルリと反転させ無造作に階段先に蓋をする木戸へ『グッ』と突き上げた。
「さ、真田どのぉ!」
大男が槍を止めさせようとするが時すでに遅し、槍の背は木戸に吸い込まれる様に当たったのだがその音はまるで小鳥の囀りの様に軽やかで心地の良いものだった。
『トントン』
静かではあるがこの階のみならず城全体に染み渡る様な音であった。
(こ、これが真田殿の槍・・・。)
大男はその大きな口を開けたまましばし呆然とした。
「あ〜、真田信繁にござる。淀殿に一言いいたい事がぁ」と言ったところで大男が「ゴホン!!」と咳き込んだ。
「あ〜、『一言お謝りしたい事がござる。』」
赤備えの鎧武者が頬を掻きながら丁寧に言い直すも階上から返事はない。
「あぁ、怒り心頭なのでござろう。其方は淀殿がどれだけ豊臣のお家を、秀頼様を愛されているかわかっておらぬのだ。そもそも総大将が兵を回って鼓舞するなぞいつの時代の戦なのじゃ!今の戦というものはなぁ!!」
大男はそこまで言うと赤備えの鎧武者が先程発した鋭い眼光を思い出し「・・・と大野殿が言っておったような気がするというかしないというか・・・。」とうつむいてモゴモゴ言っていると赤備えの鎧武者が「今の豊臣の兵は寄せ集めにござる。守る土地も財も無い者達ばかり、故に形勢が悪くなれば兵達がすぐに逃げ出す古き戦と同じじゃ。総大将の鼓舞は恩賞の担保も同然、絶大な威力を上げるじゃろう。数で劣っておるのじゃ、まずは士気で上まわらねばどうにもならん。あとは、ほれ『ココ』と『ココ』じゃ。」と言った。
大男が顔を上げると目の前には右手で『左手』を叩き左手の槍で『頭』を叩く六文銭の兜をつけたギラギラとした男の顔があった。
その目はまるで少年のようで大男は何故か微笑んでしまった。
「さて、困りましたのう。」
少年の目を持つ男がそう言うと
「今まではすぐに木戸が開いたというのに・・・。ま、まさか!何かあったのでは?!」と大男が喚いた。
「ん〜、そういう事でしたら、御免!」
赤備えの鎧武者は手に持つ槍を逆さに構え木戸に添えて力を入れた。
『ミシミシミシ!!』
先程の繊細な槍とは同じものと思えない力強さを見せ木戸を下から開けられぬようにしている閂ごと持ち上げようとしている。
「さ、真田殿!それは流石にマズイかと!!」
大男の声と同時に木戸が少し持ち上がった。
その瞬間二人の顔が一瞬にて戦場の顔になる。
「仙石殿!!」
赤備えの鎧武者が大男を振り向き今まで聞いた事が無い真剣な声を出すと
「真田殿!!」と大男が大きくうなずいた。
そう、二人は階上から不吉な匂いを感じたのだ。
大量の血の匂いとおぞましい程の腐臭を。
「木戸の側にいる者がおるなら離れよ!!」
そう言うや否や今度は片手で軽く槍を小突き上げたかの様に見えたのだが槍が木戸に当たった瞬間赤備えの鎧武者の全身が一回り引き締まったかの様に見え
『ドゴォォン!!』
という爆音を立てて木戸が吹き飛んだ。
「行くぞ、仙石殿。」赤備えの鎧武者と大男が階段を上がろうとすると階段の下から数名の若侍と侍女が現れ「お待ち下さい!『決して誰も上へ上げるな』と秀頼様と淀殿の命にて申しつかっております。何卒おやめください!」
城主の命令を守れなければ死罪は当然、必至の懇願に対し大男は
「だまらっしゃい!!この異常な空気がわからんのか!!」と叱責した。それに対し赤備えの鎧武者は
「まぁまぁ、これは『ワシら』の独断による事。何かあれば『ワシら』が責任をとりまする故安心なされよ。なぁ仙石殿。」と静かに優しく言った。
「・・・『ワシ』がとめたのに木戸を破壊したは真田殿にごさるぞ。『ワシ』はあくまで異常を察し『もしもの事があっては』と忠誠心を持って『たまたま』真田殿と行動を共にしただけじゃ。」大男は階段の下にいる者達に聞こえるようにワザとハッキリそう言った。
「やれやれ。」と言った後に大きな声で「責任を取らされたくない者はここから離れよ!『ワシら』は誰にも見られずに勝手に上がって行ったのだ!」そこまで言った後に『コホン』と一つ咳払いをしてなら
「なぁ仙石殿。」
と赤備えの鎧武者はニンマリそう言った。
そして階上を見上げた瞬間二人は真剣な眼差しに戻った。
赤備えの鎧武者と大男が階上に上がるとそこは真っ暗な闇。
もう朝だというのに窓という窓には木窓が嵌め込まれ戸という戸には木戸が嵌め込まれていて朝日が差し込んで明るかった階下とは違い夜の如く真っ暗だった。
目が効かぬ故に他の感覚が研ぎ澄まされると唇になにかヌラヌラと脂こい空気の感触と鼻には戦場でも嗅いだ事のない異臭がした。
「誰ぞ、灯りを持て!ええい!誰もおらぬのか?!灯りじゃぁ!!」
大男が大口を開け大声でそう言うのと同時に赤備えの鎧武者が落ち着いた小さな声で「おや、これはこれは淀殿。」と言った。
大男は大声を出したまま大きく開けられた口をそのままにクルリと身を回し赤備えの鎧武者の槍の矛先を見た。
「さぁなぁだぁぁ・・・、妾に、槍を向けるのかえ?」
暗闇から聞こえた聞き覚えのある声に驚いて大きく開けられた口のまま息を吸い込んでしまいあまりの血の匂いと腐臭に大男は噎せ返った。
「あ〜、これは失礼。え〜と、槍は某にとっては腕の様なものでして、いやしかし貴婦人に腕を向けるのも失礼な話ですな。失礼失礼。」
闇からの声の主に真田と呼ばれた男は飄々(ひょうひょう)とした喋り口でゆっくりと矛先を下へおろした。
「灯りにございます!!」
階下から大男の怒鳴り声を聞いて蝋燭を持って若侍が駆け付けるが城主の命を遵守しようとしているのか階段を上がっては来ない。
「何をしとるか!早く渡せぃ!」
大男は体に見合わぬ素早い動きで階段を降りるとオロオロとする若者から蝋燭を奪い取りすぐに階上へと引き戻り閉ざされた闇を照らした。が、その途端
「ヒィィ!!」
と大男の口から情けない声が漏れた。
階段を上がったすぐその場所には綺麗な着物を着た侍女が数人倒れている。
そのくらいの事で情けない声を出すような大男ではなかったがあの情けない声の原因は侍女達の誰もが目を見開き口を大きく開けたまま戦場でも見た事の無いような苦悶の表情をして息絶えていたからだ。
そしてよく耳をすますと侍女の死体から
《パキパキ》
という小さい音が聞こえる。
大男が近くの死体に明かりを当ててよく見るとその鼻や口の中で何かが蠢いている。
大男は最初蛆虫かと思ったが本能的にそれはもっと醜悪なナニかであると感じた。
「昨日今日でこの腐臭、何やら見た事もない虫まで湧くとは是やいったい?」
赤備えの鎧武者は槍の矛先を再度上げそう言った。
「・・・真田ぁ、わらわに槍を向けるのかえ?」
「いやいやこれは槍に非ず、我が腕にござる。」
このやり取りを先程聞いた事があるような気がしたが大男はすでに頭が回らなくなっていた。
「そ、その声は淀殿ですか?私です。仙石秀範でございます。こ、これは一体?」
その大きな体を小さくして怖々(こわごわ)と大男は言った。
「・・・、見てわからないのかえ?仙石秀範殿。」
妖しい色気を放つ声に自分の名を呼ばれ『ビクッ』と驚いた大男は先程廊下をせかせか歩いていた時よりも大量の汗を流しながら
「わ、私めには、か、皆目検当つきかねまする。こ、これは一体?」
と言うのと同時に「秀頼様はどちらに?」と赤備えの鎧武者が言った。
「・・・。」闇は沈黙した。
赤備えの鎧武者は蝋燭の明かりを槍の矛先に当てて声の主の方を照らす。
「よ、淀殿・・・?」大男が声を漏らした。
薄暗い明かりに照らし出されたのは艶やかな着物を着て胸元や太ももをはだけさせている美しい女性だった。時折片方の頬を膨らませている。何かを口内にて舐めているようだ。しばしの沈黙の後『ゴクリ』と口の中にあるものを飲み込み
「・・・呪いじゃ。」
美しい女性は自分に当てられる槍の矛先の光を鬱陶しそうにして吐き捨てるようにそう言った。
「・・・家康を呪い殺すのじゃ。この戦、勝つためにはそれしかない。」
忌々(いまいま)しそうにそう言う美しい女性に大男は
「な!成る程。確かにこの兵力差、まともにやっても勝ち目はござらん。外で我らが戦い、内にて淀殿が祈祷すれば家康恐るべからず!これにてこの戦は必勝にござる!!」と嬉しそうに語った。
「・・・呪殺にはそれ相応の生贄、呪い殺す相手の名前とその体の一部が必要と聞き申した。」
赤備えの鎧武者はそう言いながら執拗に美しい女性の顔に明かりを当て続けている。
『グボッ』という生々しい音と共に喉を膨らませると美しい女性はまた口の中で何かを舐めているように頬を動かした。
「こ、この侍女達も豊臣のための犠牲とならばと喜んでいるでしょう!この者達で足らぬのならばこの我が命をお使い下され!!」
大男は自分の自慢の分厚い胸当てを叩いてそう言うが足が震えていた。それを見て苦笑を隠しながら
「今正に豊臣から天下を奪おうとする家康殿の御命、そんじょそこらの者では生贄として足りぬでしょうなぁ。一体誰ならその生贄に相応しいものか・・・?」と赤備えの鎧武者が言う。
美しい女性が何も答える前に間髪入れずに
「で、秀頼様は?」
と赤備えの鎧武者が苦笑した顔を一瞬にして消し冷淡にそう言うとそのただならぬ言葉の冷気に侍女達の死体の回りにいた虫達が一斉に口や鼻の穴の中へ逃げ込んで行った。
「・・・。」
美しい女性は何も答えずに口の中で舐めていたものを再度『ゴクリ』と飲み込んだ。
蛇の様に喉が上から下に波打つ。
「ま、まさか、秀頼様を・・・?」
大男がそう言うか否かの瞬間に美しい女性があり得ない速さで階段近くの二人に襲いかかった。
「ヒ、ヒヤァァ!」
悲鳴を上げるのが精一杯の大男を槍の背で階下に突き落とすとその反動を使って襲いかかってきた女性へ槍先を突き立てた。
が、美しい女性はやはりあり得ない速さで槍先をすり抜ける様に躱し後ろを取ろうとしたので赤備えの鎧武者は素早く槍を引き戻そうとしたが槍が動かない。
「?!」
槍を見ると巨大な虫の脚のようなものが数本がかりで十文字の槍先を捕らえている。その脚は美しい女性の背中の辺りから生えている様だ。
「何ともはや。」
槍を動かす事が出来ない赤備えの鎧武者の背後から美しい女性が襲いかかる。
その手には長い爪が。その口には鋭い牙があった。
物凄い破壊音と共に階段が崩れ落ちる。
背後から襲いかかられたその瞬間赤備えの鎧武者はあっさりと槍から手を離し美しい女性の着物を掴み背負い投げのように階段最上段に叩きつけたのだ。
「グガァァ!!」女性とは、いや、人間とは思えない声を発してから素早く身を翻し再び闇へと消える美しい女性。
落下する階段の破片や十文字槍と一緒に赤備えの鎧武者が日の光の差す階下へと降り立った。
「取り外し可能な便利な腕にござるよ。」
槍を拾い握り直しながら赤備えの鎧武者はそう言った。
「いたたたた・・・。」そう言う先に階下へ叩き落とされていた大男の胸元に何か丸いものがポトリと落ちてきた。
「??」
大男が落ちてきた球体を手に取ると階段が落ちポッカリと空いた天井の暗い穴から大男に向けて目を見開き牙を剥いた美しい女性が飛び降りて来た。
「ヒ、ヒィヤァァァ!!!」
大男の叫び声を掻き消すように
『シュボッ!!』
という空気を切る音が鳴り響き甲高い女性の悲鳴が城を揺らさんばかりにこだました。
「ギィヤァァァァァァ!!!」
背中から生える虫の脚で天井に引っ付いた美しい女性の顔に斜めに走る大きな傷がついている。
この階に差し込んでいる日の光のせいか背中から生えている巨大な虫の脚からは白い煙が『シュウシュウ』と音を立てて上がっている。
その女性を見上げる腰を抜かした大男と槍を握った赤備えの鎧武者。
「真田ぁ!真田ぁぁ!!貴様ぁ!」
両手で顔を覆い耳が痛くなる程の歯軋りをしながら女性がそう言うと
「はてさて!腹が減り申した!一時休戦にござる!!」
真田と呼ばれた男は腰を抜かした大男を庇うように近づいていきなりそう言った。
「は?腹が減った?な、何を言っておられる真田殿?そんな事を言って聞く相手ではなかろう?見ろ!あの姿を!淀殿は鬼になってしまわれたのだ!早くその槍で退治して差し上げろ!!」
さっきまでおべんちゃらを使っていたというのに何という変わり身の速さか。
一層歯軋りを増し背中から白い煙を吐き出しながらゆっくりと天井を伝って男達に近づいてくる美しい女性に対し赤備えの鎧武者は
「潰すぞ。」
とさっきにも増して冷たく言い放った。
その槍の背の先には大男の手にある球体があった。
天井に張り付いている美しい女性はゆっくりと天井に開いた穴へと後退して行った。
「そうそう、それで良い。握り飯三つと漬け物三切れを食ったら天守へ向かう。もちろん『コレ』を持ってな。」
そう言って槍の背で大男の手にある球体を『チョン』と突いた。
その瞬間美しい女性の両目が血走り髪は膨れ上がり両手の爪と口の牙を『ガチガチ』と鳴らして怒りを露わにした。
その姿を見て大男はもう目から細い涙と口から細い空気を漏らす事しか出来なかった。
「安心して下されぃ。腹が満たされれば丁重に扱い申す。」
赤備えの鎧武者はそう言ってカラカラ笑った。
天井に張り付いている美しい女性は腹立たしそうな顔をして視線を赤備えの鎧武者から離さずに階上へと引き下がって行った。
「さ、真田殿ぉ、コレはいったい?」
大男が自分の手にある球体を差し出すと同時に先程赤備えの鎧武者が跳ね上げた木戸が『バタン!!』という音と共に閉められた。
木戸が閉まる音には驚いたものの鬼と化した淀殿とこの階を結ぶ蓋が閉まり一先ず安心出来ると悟った大男が手にある球体を覗き見る。
「真っ白で、あまり固くはないが弾力はあるな。はてさてこれは?」大男が球体を弄り回してるのを尻目に
「あ〜、ついでに味噌汁も一杯いただいて構わんですかね?」
と赤備えの鎧武者が天井に向かって言うと閉まった木戸が
『ドガン!!』
と鳴った。
その音を聞いた大男が『ビクン!』と硬直し手から跳ね上がった球体を赤備えの鎧武者が宙で手に取り槍を脇に構え「何を口の中で弄んでいるかと思えば・・・。」そう言って球体を持っていない方の手で拝む形を作ると
「コレは秀頼様の眼にござる。」と言って自分の手にある秀頼の眼に頭を下げた。