4話 道中会話とレンタル品とあざらし乙女
道中会話が長くなりましたが、やっと乙女登場。
自分とカルにテルサの巡礼3人組は、教館では人目を気にして、ざっくばらんに話せなかった。
「2人は教館長に、自分の事を報告するようにと言われいるの」
「解りますか」カルが答える。
「あの人は、解りやすいから」
「解りやすいですね」
テルサも同意する。
「シン殿、日本と言われる、地からいらっしゃいましたが、どのようなお国何です」
カルが尋ねてきた。
「悪いね、文化レベルについては、口止めされているから、神様に」
「左様ですか」
カルは、神様が出てきたせいなのか、引きつった笑顔で答える。
「なら、武術については、口止めされていますか」
テルサが割って入る。
「武芸については何も、大丈夫だよ」
「なら、教えて下さい。腰に差している2本の棒は剣ですか」
「刀だね」
「かたな」
自分は、洋服に近い見習い僧侶の服装の為。教館長に頼み、侶服と同じ赤い色のサラシぐらいの長さの布を用意してもらい、その布を腰に巻き、そこに2振りの刀を差している。会津の白虎隊をが見本。
差し形は、閂差しで、刀が水平になるように差している。好戦的な差し方。
だって、日本だと捕まるから、外で刀差して散歩したかった。憧れの閂差し。
「切るに特化した剣、包丁を長くして、頑丈にしたと考えればいいかな」
「日本の武術を教え下さい」
「日本のは、多分こちらでも、異質だと思う」
「異質」
「流儀によってかなり変わるし、細分化している」
「細分化」
「自分が学んだ3流は特に」
「3流も」
「後継者がいなくて、絶えた流儀も多く、自分が学んだ流儀も師匠が亡くなって、自分独りだけ。自分が死んだら終わり」
「終わり!」
「まあ、剣は無理だけど、無手の合気柔術は、カルと一緒にどう」
「じゅ・・ お願いします」
「私ですか」
カルが慌てて入ってくる。
「多分、合気はこちらに無いと思うから、何事も経験」
「はぁ」
「3人で頑張ろう」
「後で考えます」
カル素っ気ない返事。
「そ」
「話が変わりますが、神様の硬貨は初めて見ました」
「私も」
テルサが同意。
「神様の硬貨はこれで、世界に3枚となりました。公共の所なら、入れますし。世界中の人に命令出来ます。例え国王様であってもです」
「そこまで、凄いんだ」
「はい。世界神様がくださる物ですから」
「命令に従うかどうかは、本人次第ですが」
テルサが答える。
「教館では、お金が使える所が、無かったから、使える硬貨は今日初めて見た」
「そうですね。山の中ですから、店が無いですもん」
カルが笑いながら答える。
「1マル硬貨から始まり5・50・100・500・1000・5000・10000・50000・100000マル硬貨となり。これ以上は、大商人や国家間でやり取りされる、大硬貨となります。ここらへんになると見た事も無いですが」
「良いところの、お嬢様が見た事無い。国家用だからか」
「そうですね。普通の店なら、10000マル硬貨以上だと、お釣りも無いと思います」
「へー、物価が安いのかな」
「さー、比較が解らないので。あ、海が見えてきました。」
「もう少しで、街道にでます」
テルサが笑顔で話す。
「街道に入る前に妖精の泉で、水分補給しましょう。まだ、水筒が無いですから」
カルが提案する。
「水筒や火打ち石は、港町タフーで受け取るんだよね」
「道具屋で、引き換え券と交換します」
カルが説明してくれる。
妖精の泉に付くと、少し驚く。石で作られたベンチや机が有り、公園に近い印象を感じた。
備え付けの水杓で水を飲み、ベンチに腰掛ける。
「あらためて、宜しくお願いします。」
自分が頭を下げると、2人は、慌てて返事を返した。
「こ、こちらこそ宜しくお願いします。世界神様からの御指名は、光栄です」
カルが慌てて返答する。
「私も光栄です。半妖精族の為に、共に頑張りましょう」
テルサが、熱意がこもった返答する。
「テルサは、ただ戦いだけでしょう」
「はい。そうです」
テルサが答えた。
「自分もだよ」
自分が話す。
「え」
「色々な差別や問題に、脅威があるのに、無いものとして、天下太平を謳歌している国。連中の愚かさにうんざりしていた。半妖精族なんて、説明してもらったが、解らないし、普通は、関係ない異世界の為に命掛けないし」
「そうですね。半妖精族は私も見た事が無いです。始めに会う、ウェブ族はあざらし乙女とも呼ばれる。伝説の一族ですから」
カルが答える。
「カルは風魔法と神命魔法が使えたよね、風魔法で結界をはって」
「はい。風よ、我らを全ての外から、護りたまえ。風結界」
結界を張り終わるのを確認してから。
「2人には、渡す物がある」
不思議な巾着袋から、腕時計をだす。
「神様には、許可を貰っている。日本の時を知る道具で、腕時計を2人に貸す」
巾着袋から、赤と白の腕時計を出す。
「何です。これ」
「時間を知る道具。使い方は、夜説明するから、好きな色を選んで、とにかくしまって」
「はい」
2人は、とりあえず巾着袋に入れる。
「赤はカルに、青はテルサに」
ブレスレットを置く。
「神様からのレンタル品」
「神様!」
2人は固まる。
「10個の魔石1つづに血を付けてから、左手首にはめて」
ナイフで傷をつけ、血を付けてから、左手首にはめる。
「何ですか。説明が頭中響く!」
カルが叫ぶ。
「響いてる。これ凄い武器と防具じゃないですか。神器クラス・・」
テルサがうっとりした表情を浮かべる。自分と同類だ。
「力に溺れるな。貸し出しだから、終わったら腕時計と共に返却。」
「え~」
テルサは心底欲しいらしい。
「試したいです」
テルサ必死。
「私も試したいです」
カルも小声で、懇願。
「30分だけ。時計で計るから声かける。派手にしない」
2人は森に駆けていった。
自分は砂浜の方に歩き、岩影の所に座り、海を眺めていると、波の中から、大型のあざらしが1頭現れる。続くように計8頭のあざらしが砂浜に上陸すると、周囲を警戒する仕草をする。
背中を見せた1頭のあざらしの背中の皮が2つに割れ、中から後ろ姿でも、若いとわかる、全裸の女が出てきた。
あれがあざらし乙女!
モデルは妖精のローンとセルキーです。