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制服連合の初会合の明くる日、やはり制服で学校に来ている生徒はほとんどいない。ポケットのガラケーがブルっと震え、メールの着信を知らせた。
メールをする相手なんてろくにいない。誰からかはすぐにわかった。
「今日の昼休み、弁当を持って食堂に集合のこと。山岸咲輝」
2秒足らずで全文を読み、ケータイを閉じる。空を見上げると、雨は降っていないが、厚い雲がかかっていて、いつ雨が振りだしてもおかしくない。憂鬱な日だ。
教室に入ると、数人がすでに自習を始めおり、自分が受験生であることをまた意識させた。あぁ、やっぱり憂鬱な日だ。
ため息を吐きながら肩にかかるカバンを下ろした。
4限目が終わり、昼休みが始まる。クラスの大半は弁当を取り出して談笑し、数人は黙々と参考書に目を通している。
誰かに気に留められることもなく、教室を後にした。
食堂まで少しゆっくりと歩いていると、「こんにちは。」と声をかけられた。
振り返ると、カッターシャツを着た女の子が歩いていた。
「あぁ、えっと、相川さん、こんにちは。」
昨日山岸さんに絡まれていたあの子だ。下の名前は覚えていないが、名字だけでも思い出せたのは、なんとなく印象に残っていたのだろう。上から見下ろすと、昨日よりももっと小柄に見える。肩くらいまである髪は、ボブというやつだろう。女の子らしい彼女に似合っていた。
「今日は何を話すんでしょうか。」やわらかい声はぼくの耳に聞こえる必要最低限の音量だった。
「知らないけれど、行ったらわかるよ。」と言うと、そうですね、とだけ小さく返事をした。
食堂には、いつも通りたくさんの人がいた。食べ物がごちゃごちゃ混じった匂い、特にカレーがお腹を空かせる香りを放っていた。
「相川さん!こっちこっち!」そう言って手を振るのは山岸さんだ。彼女の声はよく通る。人ごみをかき分けて、食堂の隅へ向かう。テーブルの間隔を広くしてもらえないだろうか、とは入学当初から思っている。
相川さんは山岸さんの横に座り、ぼくはその隣に座った。向かいには3人の男子が既に弁当を食べ終えている。
「よし、じゃあ始めようか」よく見ると、そう言う山岸さんの弁当も空だった。
「わかっていると思うけど、私たちの目標はできるだけ多くの生徒に制服を着てもらうこと。まずそのために、私たちの意見を統一しよう。みんな、なんで制服があるほうがいいと思う?」山岸さんはそう言ってぼくたちを見回した。
「ちなみに私は、私服を着ることでいじめが起きて欲しくないから。っていうのは紙に書いたよね。じゃあ、宮村くん、君から。」彼女は左手にいる男子を指差した。いきなり1年生の相川さんにするのは避けようという配慮だろう。
宮村、と呼ばれた男子は、いかにも真面目そうな、制服が似合う男だ。ただ、短いとは言えない髪が、少し乱れている。
「ぼくは、あまり理由はありません。ただ、国という権力に屈したくないだけです。強いて言うなら、制服がある方が治安の維持が容易である、ということでしょうか。」
言い終えるや否や、彼はとなりの男子に目配せをした。それを見て丸刈りの男子が話し始める。
「オレはですね、山岸先輩と一緒の意見です。やっぱり、あんまり服とか買えない人もいるじゃないですか、そういう人たちの為にも、やっぱり制服は必要だと思うんですね。あ、オレもその一人なんですけど。」そう言って笑う彼は…誰だったっけ。忘れてしまった。ただ、誰にも優しそうな、見ていてこっちも幸せにしそうな笑顔だ。
「オレは、正直あんまり考えてなかったんですけど、やっぱり制服をずっと着てきたし、馴染んでるから、無くすのはもったいない気がして、それだけです。」
ショートヘアーの、大きな目を持つ男子は、喋っている間、ずっとソワソワしていた。周りの騒音が大きいのもあるが、少し聞きづらい。とりあえず人見知りなのはわかった。
というか彼らは、部活に行かなくていいのだろうか、なんて心配をしていると、みんなの目がぼくに向いていた。
そういえば、理由って何だろう。山岸さんに言われて入ったけれど、そこまで制服に思い入れがあるわけじゃない。
「頼りにしてる」山岸さんの言葉が今更重たいものだとわかる。3年生として、キチンとした理由を述べるべきなのだろう。
とりあえず、深く深呼吸をした。




