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制服連合  作者: ぺーた
2/14

なぜ、こんな場所にいるのだろう、塾に行くはずだったのに。みんな、今頃勉強していると思うと、焦りが募る。

 そこは、全国チェーンのファミレスだった。こんな場所に来たのは何年ぶりだったろうか。中はクーラーが効いていて、少し肌寒かった。

 テーブルには6人、女の子が2人、ぼくも含めて男子が4人座っている。

 モチロン全員制服。見たところ、3年はぼくとさっきの彼女だけのようだ。


「こんばんは、私は3年2組の山岸咲輝です。今日は集まってくれてありがとう。とりあえず、みんな自己紹介しようか。」

 ハキハキと喋るけれど、さっきとは少し印象が違う。もっと威圧感のある感じだったような気がするが。

 肩を叩かれてハッとする。3年は2人、次はぼくの番だ。

 机を見回すと、あまりいい雰囲気ではなかった。笑っているのは彼女だけ、あとは緊張しているのがわかる。

「初めまして、上村です。3年6組です。」

 遠慮気味に拍手が起こる。これくらいなら無い方がいい。

 それから2年、1年が続いた。2年が3人、1年は1人だけだ。女の子が1人。気が小さそうな、守りたくなるような娘だ。

 一通り終わると、また山岸さんが話し始めた。

「今日は、特に話し合うことはありません。交流会ってことで。あ、何か頼みたい人は頼んでもいいよ。自分で払ってね。」

 これと言って食べたいものもなかったので、ぼくはずっと水を飲んでいた。10分も経たない内に、2年の男子たちは打ち解けたようだった。山岸さんは1年の女の子に話しかけているが、彼女はまだ先輩と話すことに緊張しているようだ。

 結局ぼくは誰とも話さないまま、解散となった。


「怜治くん」

 さっさと帰ろうとすると、下の名で呼び止められた。振り返ると、山岸さんがむくれたような顔で立っていた。

「な、なに?」反射的に聞く。

「今日、何にも話してなかったじゃない。あれじゃあ皆緊張しちゃうよ。」

 もっとな意見ではあるが、緊張していたのはあの1年生だけだった、そしてその原因は山岸さん本人にあったと思う。

 が、そんなことは口には出さず、これから気をつけるとだけ言って、その場を離れようとした。

「あ、怜治くん、帰り歩きだっけ。途中まで一緒に行こう。」

 断る理由はなかったけれど、権限もなさそうだった。


 「あっついねー」

 手で顔を扇ぎながら言う。その行動に意味はあるのだろうか。真似をしてみても、ちっとも涼しくない。

 もう、1学期も半分以上過ぎた。高校3年の夏、考えれば考えるほど億劫だった。

 日はまだ高く、ぼくの着ているカッターシャツにも汗が滲んだ。

「でも、怜治くんが入ってくれて本当によかった。3年生1人だけだったら、すごいプレッシャーだったし。」

 何に対する「でも」か気になるが、こういうことは聞かないほうがいい。

「そんなに変わらないよ。」とだけ呟いた。

「ううん、そんなことない。頼りにしてる。」

 そう言って微笑む彼女は、可愛く見えた。

 女の子に期待されるのは、あまり悪い気持ちがしないものだ。そんなぼくに心の中で苦笑した。

 そういえば、もともと彼女はキレイだ。背中の真ん中ほどまである長い髪はサラサラしていて、触り心地が良さそうだし、大きな二重のまぶたの目が特徴的な顔は、まだ人間らしい少女が描かれている少女漫画に出てきそうだ。

 しかし、彼女が付き合っているという話は聞かない。どういうことだろう。

 彼女はさっきから通り過ぎる車のほうを見ている。

 その気持ちはどこにあるのだろう、ぼくには知る由もなかった。


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