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昔々ある所にウサギの夫婦が住んでおりました。
二匹はごく普通に出会ってごく普通に恋をしてごく普通に結婚しました。ただ普通と少し違っていたのは、ウサギの旦那さんは本当はオオカミで、ウサギの奥さんは本当は魔女だったのです。
ある日の事でした。
ウサギの旦那さんはウサギの奥さんが言いました。
『今夜は外に食事にでも行こうか』
ウサギの奥さんはとても喜びました。
『じゃ着替えてくるから待っていてね』
と、部屋にこもったきり出てきません。
あんまり待たされるのでウサギの旦那さんはそ~っとウサギの奥さんの部屋を覗いてしまいました。
するとちょうどウサギの奥さんが洋服のいっぱい詰ったクロゼットを前にして、自分自身に魔法をかけていました。
『大変だわ。困ったわ。着ていく服がないわ』
――そのクロゼットに詰った服は本当に見えてないのか?
と、いう心の声をしまったウサギの旦那さんはそ~っと部屋の扉を閉めるのでしたとさ。
めでたしめでたし。