茜色の誕生日
はい。
この話は画像をみたら書きたいなぁなんて思った突発的な話です。
ぐだぐだとしたのろけのような、こんな恋をしたいなぁなんて思ったんで書きました。
即興なんで面白くないかもしれません。
ですが、読んでいただけるとありがたいでふ!
もうこんな時間か。
どうやら僕は机に突っ伏して寝ていたらしい。少し頭がボーッとする。低血圧かな。
ふわとあくびが漏れた。
茜色の日差しが5時前の教室に差し込んでいる。
閑散とした教室には今、僕しかいなかった。
もちろんそれは部活なり、帰宅なりでみんないなくなったからだろう。といってもまだ荷物が置かれた机が、廊下側の列の前から三番目に置かれていた。
「ん………、んぅ?まだいたのか…そりゃそうか…。」
置かれた荷物の主はすぐに見当がついた。まぁ、同じクラスなのだから当たり前なんだろうけど。
それでも僕にとってはなかなかどうして難しいものだ。
僕は生まれつき、人の顔と名前をペアで覚えることが困難だったから。
それでも覚えているのは、その荷物の持ち主が、僕にとって一番大事な人だからに他ならない。
僕は眠気の払えない頭を抑えて、陰る天井を仰いだ。もちろんなにもないのだけれど。
そんな僕を嘲笑うかのように日差しが教室を射る。
まるで黄昏るように明かりのついていない電灯を見上げていると、
ガラガラガラ。
とスライド式の扉が開かれた。まぁ、荷物と、僕がここにいることによって誰が来たのかは予想がつく。
案の定。新嶋史奈その人だった。
「あ、ユースケ。起きたんだ、おはよ。」
淡々とした言葉が切るように告げられた。
「おはよ。どこいってたの?」
詮索するつもりはないけど、なんとも丁度いいタイミングで入ってきた。いや、戻ってきた。
「ん、職員室で先生の手伝いしてただけだよ。」
相変わらず淡白な答えが帰ってくる。
僕は苦笑を漏らしながら、そうか、と言葉を返した。
「もう帰る?僕はどっちでもいいけど。」
なるたけにこやかに僕は彼女に問いかけた。
まぁ、僕はいつだってにこやかだけど。……ごめん。嘘だ。
「んー、私もどっちでも………でも、教室にいてもすることないし、帰ろ?」
嬉しい申し出だ。といっても、僕たちは毎日下校は共にしてる。何処かの小説みたいな向かいの家に住む幼馴染みと言うわけでもないし、ましてや登下校をいつも共にできるほど僕らは近距離にすんではいない。残念だけど。
閑話休題。
史奈はさっそくといっても元々まとめられていた荷物を持つだけだが、準備を終え、僕の様子をうかがっている。
これは待たせるわけにはいかない。
まぁ、僕も特に準備するものはないのだけれど。
僕たちは特に持つものもなく、薄暗くなりかけた教室を後にした。
寒い季節だから、首に巻いたマフラーは結構ありがたいもんで、これだけで寒さをしのげるもんだ。なんて、僕は思っていた。
ちなみに、僕のこのマフラーは史奈が去年のクリスマスにプレゼントしてくれたもので、僕の宝物のひとつ。
そして彼女がつけてるマフラーも同じ日に僕がプレゼントしたものだ。
あの日はそれですごく驚いた。
二人揃って同じジャンルのものをプレゼントしたんだから、なんだか心が通じあってる見たいで嬉しくて恥ずかしかった。
僕たちが階段に差し掛かったとき、後ろから声がかけられた。もちろん史奈の声だ。
「ねぇ、ユースケ。」
史奈が短く僕をよんだ。
「ん?」
僕の返事も必然的に短くなる。
そして僕は階段を少し降りていたから、彼女を見上げる形だ。
史奈は階段の一番上にいて、僕を見下ろしていた。
余談だけど、この角度からだと彼女のスカートの中身が見えそうで怖い…。
「今日なんの日?」
それを聞いて、僕は思い当たる節がなくてちょっと、いや、とても戸惑っていた。
史奈の誕生日はまだ当分先だし、他の人の誕生日でもなかったはずだ。
もちろん記念日は再来週に控えてるだけで、彼女も忘れてるはずがない。
やっぱり分からない。
「今日って…なんかあったっけ…。」
僕は恐る恐る問いかけた。
なにか大切な日だったら史奈を怒らせかねない。史奈は怒るとメチャクチャ怖いから、僕は今相当苦笑ぎみで、顔がひきつっているだろう。
「はぁ…。」
史奈は怒ると言うより呆れた様子でため息を溢した。
こっちの方が怖いもんだと染々思った。
「ばか。」
小さく僕を罵倒した史奈は淡々と軽やかに階段を降りてきた。
呆れておいてかれるのかなんて僕はヒヤヒヤしてしまう。
「ユースケは自分の誕生日も覚えてないの?」
だけど、僕の予想は外れていた。
というか、そうか、そうだった。
今日は僕の誕生日だった。自分の誕生日を忘れるなんてとんだ間抜けだ。なんて心のなかで自嘲しておく。
「……あー、そういえば…」
「全く。はい誕生日プレゼント。あといつもありがと。」
可愛く怒る史奈が、後ろに隠していた手を前に突きだした。
というか隠していたのか。気付かなかった。
「ありがとう…僕の方こそ、いつもありがとう。」
淡いピンク色の可愛らしい小包を渡されて、僕は嬉しくて笑いが止まらない。
本当に嬉しい。
けど、それより嬉しいことがすぐに起こった。
史奈が、僕を抱き締めてくれた。
驚いた。だって、史奈がこんなことしてくれるのは本当に稀だし、若干怖いって思ってしまった僕を許してほしい。
けど、やっぱり嬉しい。
僕は小包を持ったまま、史奈の背中に腕を回した。
彼女の体温が、鼓動が逐一伝わってくる。
「ふみ、ありがと。」
「うん。」
史奈はこれ以上ないかってほど、優しい声で答えてくれた。
まぁ、そんなことしてられるのも長くはないわけで、名残惜しくも史奈は離れてしまった。
まぁ、学校の中で抱き合ってたらみんなどう反応すればいいか分からないだろうし、僕がその立場でもとても戸惑う。
「これ、帰ってから開けるね?」
僕はその小包を大事に抱えて史奈に言った。
「うん。じゃあ、帰ろ?」
いつもあんまり表情を変えない彼女が僕に笑みを向けてくれる。
僕にたいしてはよく微笑んでくれるけど、いつみても嬉しいものだ。
今度は、僕の方から史奈の手をとって歩き出した。
史奈の頬が紅潮してる。僕もだろうけど。
「うん、帰ろう。」
一時でも史奈と離れるのは辛いけど、しょうがない。
誰だか忘れたけど、
恋愛とは辛いものだ。辛くない恋愛は恋じゃない。
なんて言ってたのを思い出す。
まぁ、完璧に覚えている訳じゃないからどこか間違ってるだろうけど。
まぁ、それはどこか遠くに置いておこう。
僕たちは、傍目からみれば仲睦まじそうに、実際その通りだけど、帰宅の道を歩き出した。
寒い1月の物語。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
他にも作品がありますが、
僕の作品を選んでいただけたことに本当に感謝します!!