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魔王様の婚約者! 2  作者: イナミ
番外編
3/8

コッチが却下ぁぁ!!

貴族とか公爵とか、よく分からないのに書いちゃったという、この無謀さ。



間違えてたらゴメンナサイm(_ _)m

「ほんっっっ・・・・・・・・・・っっとに、やるんですかっ!!?」


…ためたなぁ〜。


隣で少し涙目になっているこの男。

魔王である俺の宰相だ。

淡い水色の髪に、白に近い青の瞳という、なんとも全体的に薄い印象を与えるこの男の名前はデルガード。


完全に名前顔負けだろ。



だが、甘くみちゃだめだ。

前魔王(親父)に直談判に行ったのは、何を隠そうこの男なのだ。


え?じゃんけんで負けたとかじゃないかって?

いや、じゃんけんじゃない。

あみだくじらし…ゴフンエフン。


とにかく、見かけによらずコイツは根性がある。


そんな男が何故涙目かって?

…いや、こいつは常に涙目だけど……。


なんたって『泣き落としのデルガード』というあだ名がつくくらいだからね。


そのあだ名だけで、俺なら泣けるよ。

いや、マジで。



まぁ、それは置いといて…コイツが涙目なのには理由がある。


無駄に泣いてるわけじゃない。



それには、まず現状を理解してもらわなければならない。





今我々は、ある屋敷の前・・・から少し離れた場所にいた。

シンプルではあるが、威圧感が半端ないのは、ココに住む人物たちのせいだと思う。

てか、間違いない。


何、あの禍禍しい門。

何、あの結界。

魔王に仕えるやつが、魔王除けの結界なんてしちゃだめだろ。


まぁ、効かないけど。


つか、あの禍禍しさはそれのせいじゃないしね。

ただの鉄の門に、あこまで黒いオーラを纏わせるなんて、ただ者じゃねぇ。



まぁ、実際ただ者じゃないんだけど。



この屋敷の所有者の名は、ファーダラ・ファン・ハウデン公爵。

『魔王の影』と呼ばれるハウデン家の家長だ。


え?

『魔王の影』なのに、何が怖いのかって?



知らないって、幸せだなぁ…


では、説明しよう。

…え?いらない?

いやいや、聞いとけって。



ハウデン家。

魔王に次ぐ権力を持つ一族。

ハウデン家の者は、常に魔王の傍らにいる。

家長は必ず魔王と側近となる。

側近とは名ばかりで、魔王の近衛騎士として守り、業務の代行をしたりと多岐にわたる。

実質宰相などより立場は遥かに上だ。


しかも、次期魔王がいなかったりすると、ハウデン家が中継ぎをする。

現魔王が魔王に相応しくない奴だと、糾弾し王座を引きずり落とす権限を持つ。

魔王は血筋ゆえ、ハウデンの者が魔王になることは無いが、それでもかなり特殊な地位にあることは分かっただろうか?


つまり、ハウデン家は魔王支配下にない。

良く言えば管轄外。

悪く言えば無法地帯。



…うん、無法地帯の方がシックリくるな。



もはや、第二の魔王だよ。



そして、現ハウデン公爵なのが、ファーダラ・ファン・ハウデン。前魔王の側近をしていたこの男、俺とシオンの師匠である。



主である前魔王が引退した今も、軍を率いる総帥の立場にあったりする。

やかましい貴族共のトップに立ち、ガッチリ抑え込んでいた男。


そう、過去形。

なぜなら現在、職権濫用の上に職務放棄してプチひきこもり中。



そんな男に嫁ぐ妻もまたおぞま・・・すごい。


妻、マードレ・ファン・ハウデン。


そんな男に嫁ぐのだから、どこの貴族だと思うが、実はこの人全然身分は高くない。

寧ろ、貴族と呼べるかも怪しいぐらいの没落貴族の令嬢。

そんな貴族社会にて底辺にいた女性だったが、這い上がってきた。



そう、本当に這い上がってきたのだ。現在の夫に見染められたなどという、シンデレラストーリーではない。

馬鹿にされつづけていた彼女は、父親を叱咤し、自ら奔走して、家を建て直した。


この時のわずか百五十歳(中身、十五歳)。


そんな令嬢にあるまじき行動力の持ち主である彼女は、社交界にて地位の低さゆえに、非常に馬鹿にされていたらしいが、何か言うやつは即効黙らせた。

そして、見た目は銀色の髪に、藍色の瞳をした儚げな美少女な彼女は、数多の男に狙われていた。


身分の低い美少女は、馬鹿な貴族どもにとっては御馳走だ。

身分を笠に着て近寄る男共を、彼女は文字通り一蹴。

きっと彼女は、比喩という言葉を知らない。


そんな彼女に、ハウデン公爵は惚れた。


俺なら、全力で男の急所を蹴る女なんてゴメンだが…


他の男と同様、冷たくあしらっていた彼女だが、ハウデン公爵の猛アタックに根負け。


見事に珍じゅ……獲物を仕留めたハウデン公爵。



周囲には猛反対されたらしいが、


え?身分?

何それ、おいしいの?


と、サラっとながした上に、いつのまにやら全員が笑顔で祝福してくれたという…

その笑顔が引き攣っていたのは、言うまでもない。



そうして産まれた最強夫婦。



そんな二人の血を色濃く継いだ息子。


それが、シオン・ファン・ハウデン。


幼なじみで親友で側近なこの男。


母親からは、美貌と狂暴さ。

父親からは、強さと狂暴さを受け継いだシオン。


……。


狂暴ばっかりじゃねぇかぁぁっ!!


見た目だけは優男なのに!

二人を足しただけなら良かったんだが、掛けちゃってるよ!


狂暴+狂暴=狂暴


それだけでもたまったもんじゃないのに、


狂暴×狂暴=化け物


だよ!


じゃなきゃ、魔王の俺と互角に闘えるとかありえないから。



そんな化け物一家の巣窟に、喧嘩を売りに行くんだ。


そりゃ、泣けてくるわな。

だが、諦める訳にはいかない!

なぜなら、俺の伴侶がいるからっ!!



まるでチワワのように奮える部下に、断固とした言葉を告げる。


「やる!捕われの姫を助けに行くんだ!」


「貴方が捕らえる側じゃないですか〜!やめときましょ〜よ〜!」


えぇいっ!袖を掴むな!

男が泣いても可愛くねぇんだよっ!


「捕らえる側じゃねぇし!取り返す側だし!」


「取り返すも何も、手に入れてすらいないじゃないですか〜!」


ぐっ!

こ、コイツ…痛い所をっ



「やかましいっ!つか、アッチが隠すから悪いんだろうがっ!」


「姫は金髪だったじゃないですか〜!黒髪黒目って言ってるの、貴方だけですよっ!?」


「〜〜っ!」


そうなのだ。

彼女が俺の伴侶であることを知ってるのは俺だけ…


奴らが、金髪に染めた彼女を見せたから、皆それを信じている。

ちなみに、黒髪に染める事は絶対に無理なので、偽物を連れてくることは不可能である。


なんて都合のいい…もとい便利な世界なんだ。


どうせなら、黒髪を染める事もできなければ善かったのに!

なぁ神様!?



「…っ!お、お前は魔王(オレ)と奴ら、どっちを信じるんだ!?」


「ハウデン公爵に決まってるでしょうが!!!」



!!

い、言い切りやがった!


確かに、一時期荒れた俺の変わりに政務をこなしたのはハウデン公爵だ。

信頼度は完敗している。


「や、やかましい!!行くったら行くぞ!!」


「もぉ〜!!」



文句たらたら涙たらたら。でも、ちゃんとついて来てくれている。



…少しは信頼を回復出来てるんだろうか…



その時、屋敷の向こうにある森付近から吹いた風が、優しい気配を届けた。



――彼女だ。




「待て!」


慌てて、渋々歩を進めるダンガードの衿を掴んだ。


「ぐぇっ…な、何をするんですかっ!」


むせながら、涙目で睨んでくるダンガード。

だから、可愛くないからヤメロ。


あぁ、でも城の侍女達には喜ばれるかもな。


影が薄い割には人気あるんだよ、コイツ。


ダンガードの抗議を無視して、ニッコリと極上の笑顔を向ける。


ダンガードの顔が強張った。


「ちょっと耳貸せ。作戦変更だ」



「…作戦なんてありましたか?」


「行って、(一応)話して、奪う」


それだけ分かっていれば、十分だろ。とばかりに言った途端にダンガードは青ざめた。


「一応って言いました!?ちっちゃい声で一応って言いましたよね!?話すを省いたらただの誘拐犯じゃないですか!!」


「うるせぇなぁ」


耳元で叫ぶなよ〜。

顔をしかめて耳を塞いだ俺に、なおも言いつづける。


「うるさくもなりますよ!!ならない奴はいねぇですよ!?帰っていいですか!?ねぇ、帰っていいですか!?つか、すぐさま帰りたい!!アイム、ホーム!!オウチカエル!!」


言葉おかしいぞ。

なんでカタコトだ。


「却下。てか、もういいか?耳貸せ」


まだ何かいいたげな涙目のダンガードを無視して、耳に口を寄せた。


「………………」


ぐずぐず鼻をすすっていダンガードの青ざめた顔が、完全に血の気を失い、真っ白になった。


「…い、いやだっ!ムリですっ!!」


「却下」


「コッチが却下ぁぁぁ!!」


「うるせぇなぁ」


往生際の悪い奴だな。どうせ行くんだから、さっさと行けばういのに。

必死で抵抗しているダンガードの背中を押してやる。


「ほら、行け」


「っいやだっ!!殺される!シオン様に殺されるぅぅ!!」


「骨は拾ってやるから、安心しろ」


「安心って意味知ってますか!?心が安らぐって書いて安心ですよ!?安らがねぇ!全然安らがないですっ!」


「違うね。安い心臓って書いて安心だ」


「安い心臓ってなんだぁぁっ!!?心臓に安いもクソもないですがっ!?」


あー本当に五月蝿い。

可哀相だが、仕方ない。

奥の手を使うか……


「…お前、可愛い妹いたよなぁ?」


「!?」


ダンガードの抵抗がピタリと止まる。

わかりやすい奴だよ。


あとは言わなくてもいいだろ。

にこりと笑って、最終通告。


「行、け」


ダンガードの目から涙がポロリと一粒落ちた。


残念!

魔王様、アンジェに会えず!(笑)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

冒頭より少し前。


「ダンガード、行くぞ!」


「…どこにですか?」


「ハウデン公爵の別邸!」


「……何でですか?」


「俺の伴侶を迎えに!もう我慢の限界だ!!」


「……まだ言ってたんですか…それ」


「なんだ!その呆れた目は!」


「ハウデン公爵の姫君は、金髪ですよ。」


「だ〜か〜ら!染めてるんだってば!!」


「そんな馬鹿な〜」


「娘出来たとたんに、俺から隠すように引きこもったのが、何よりの証拠だろ!」


「え〜…気にしすぎですよ〜」


「いやいや!マジだから!シオンも、産まれる前はあんなに妹、妹行ってたのに、今じゃだんまりじゃん!」


「……」


「行くぞ!」


「……じゃあ、この部屋の三分の二を占める書類を、今日中に片付けて下さい」


「今日中!?」


「ムリならダメです」


「〜〜っ!やる!愛しい伴侶のためだ!」


「頑張って下さ〜い」(多分ムリでしょ)



ダンガードの予想に反して、頑張った魔王様。

そうしてハウデン公爵別邸へ……



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ダンガードは、普段は超優秀です。

ただ、テンパると涙目に……


ちなみに、コイツもシスコン。

シオンほどではないけどね…


可愛い妹チャンは登場予定はいまんところ無し。



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