マタニティもマリッジもブルーしてねぇから!!
うぅっ!
お気にいり登録、ありがとうございますっ!!!
嬉しすぎて、連載中のものより優先させてこっち書いちゃいました(待て)
さて、今回は魔王様視点。
お楽しみください!
産まれた時からずっと、何かが欠けてるような気がしていた。
父曰く
「それは生涯付き纏う」
そうだ。
歴代の魔王がそうだったように。
…父がそうだったように。
だが、俺には妙な確信があった。
俺はいつか、この空虚な思いから解放される。
俺は欠片に、必ず出会える。
そう思いながら生きて、はや二百年。
そろそろ限界ですが?
え、何、いつまで放置プレイ続けるつもり?
天界に殴り込みに行っていいですか?
運命の神様、ボコボコにしていいかなぁぁ!?
二百年目にして、キレました。
既に魔王を継いでた俺は、荒れに荒れた。
そんな俺を「どうにかしてくれ!」と、配下達が縋り付いたのは、前魔王こと俺の父。
すっかり引退して、南の島でバカンスを楽しんでいた親父はこう言ったそうだ。
「遅めの反抗期じゃね?」
反抗期とは、精神発達の過程で、周囲に反抗的な態度をとる時期の事である。
…誰が、精神発達過程だぁぁぁっ!!?
部下もしっかり反論してくれたらしい。
「前王様っ!陛下は、立派な大人ですっ!!」
そんな必死な部下に対して、あのバカは…
「えー、知らねぇよー。じゃあ、女の生理的なもんじゃね?ほら、よくあんじゃん。マリッジブルーだとか、マタニティブルーとかー。とにかく、その内落ち着くって(笑)」
(笑)じゃねぇよ!
アンタ、息子を何だと思ってんだっ!?
マリッジもマタニティもブルーしてねぇからっ!!
「まぁ、アイツが民にまで手出したら助けに行くわー。それまでは頑張りたまへよ。あ、俺これからサーフィンだから。じゃな〜」
責任感があるんだかないんだか……いや、ないのか。
部下が泣いて帰ってきたのは言うまでもない。
てか、アイツがあんなんだから、俺が早めに後継いだんだよ。
そんな状況でも、国が瓦解しなかったのは、優秀な配下達のおかげだと断言できる。
寧ろ、俺いらなくね?
魔王いなくても、余裕でやってけんじゃん。
えー、何それ傷つくわー。
そう思って、今度は一人で凹んでいたら、軍を率いて行ってた遠征から帰ってきた親友兼側近のシオンが
「怒ったり凹んだり…マタニティブルー?」
お前もかっ!?
そんなウダウダした日々を過ごしていたある日。
―――ドクン。
と、小さな小さな鼓動が聴こえた。
それは、日に日に、確実に、大きくなっていった。
彼女だ。
―…あぁ、やっと逢える。
魔王なのに、毎日毎日天使にお願いしていた甲斐があった……
なんで神じゃなくて、天使か、だと?
神は中々姿を現しやがらねぇんだよっ
だから、代わりに神の使いの天使を捕まえて、伝言を頼んでいたんだ。
さっさと、彼女を転生させないと、天界に乗り込んで、羽毟るぞっ!?
ってな。
代わりに毟っていた天使の羽は、今度返してやろう。
そして俺は、再び真面目に仕事を始めた。
部下にはちゃんと謝った。
一応シオンにも礼を言ったら
「お、安定期?元気な子を産みなよ〜」
だから、誰がマタニティブルーだっ!!
…たくっ…こいつ、最近やたらとソレ系に絡ましてからかって来るなぁ。
しかも、なんかご機嫌だし。
そんな訝しげな俺の視線に気づいたのか、ニッとどこか照れたように笑った。
周辺にいた女共が、悲鳴をあげて倒れる。
…そりゃ、まぁ男の俺から見ても男前だしなぁコイツ。
銀色の髪は少しだけ伸ばして、うなじ辺りで結わえてある。男にしてはパッチリした瞳は爽やかな海の色。
優しげな面立ちと柔和な物腰に対し、強さは魔王である俺と張り合える程(まぁ、俺の方が強いけど)。
いわゆる"ギャップ萌え"ってやつだ。
顔よし、腕っ節よし、地位よし。
そんな優良物件、そこらの女がほっておくわけがない。
というわけで、シオンはモテる。
モテにモテまくってるから、選び放題・よりどりみどりだ。
……そう。
後ろの柱の影でコッチをガン見してるアイツ(・・・)さえいなければ。
「……むやみやたらに微笑むなよ…見ろ、ヤツが興奮してるぞ」
うわー。
目血走ってるし。
ハァハァ言ってるし。
我が妹ながら、見た目は極上の美女なのに……残念過ぎる。
「見たくない。そう言うなら、アレどうにかしてよ」
「ハハハ、ムリムリムリムリ。」
「……ま、(どうでも)いいや。それより、僕の事見てたよね?見惚れた?」
「そんな趣味はない。………なんか最近機嫌よさそうだな?」
「あ、気づいちゃった?」
わざとらしい…
「実はさぁ〜僕に妹が出来るみたいで〜。あ、弟かもしれないんだけど、僕的には妹がいいな♪みたいな?つか、妹な気がするんだよね〜?いや〜この歳にして妹とか、まいっちゃうよな〜もう、絶対可愛いよ!」
……魔族は、人間のように子供はポコポコ産まれない。
だから、子供ができるのはヒジョーにめでたい事で、誰かに子供ができれば、身分関係なく皆が祝福する。
だから、彼女がどこに産まれるか分からない!…なーんて事は、まず無い。
そして、どの家に産まれようが、すぐに俺の傍に連れてくるつもりだった(・・・)。
そう。
だった(・・・)。
………過去形になっちまったじゃねぇかぁぁぁ!
可愛いに決まってんだろっ!?
オレの伴侶だぞっ!?
照れてんじゃねぇよ、馬鹿野郎!
全っ然可愛くないからね!?
なんで!
よりによって!
どうして!
魔王に次いで地位のあるお前の家にっ!?
下手に手を出せないじゃないかっ!?
やっぱ羽は返さん!
布団に詰めて、羽毛布団として売ってやるよっ!
さぞかし高く売れるだろうよっ!!
つか、え?
シオン、俺の義兄?
……お義兄様って呼んだ方がいいか?…って違うっ!
あぁ〜くそぅ。
面倒だが、キチンと手順をふむしかないか……。
そんな俺の考えなど知らずに、シオンは顔をデレデレさせて、未だ産まれてない妹への思いをツラツラ述べている。
……めっちゃ腹立つよ、お義兄様。
いやいや、とりあえず出会える事を喜ぼう。
出会えなかった、哀れな歴代魔王を思え!
出会えるだけで、万々歳だよ。
結ばれるのは決まってますからね!
ちょ〜っと、歳が離れたけれど、問題無い!
なぜなら、魔族は長寿命!
平均千歳だし、見た目はちょうど良い二十歳前後から、ほぼ変わらない。
八百歳くらいから、少しずつ歳をとりはじめる。
二百歳の歳の差なんて、可愛いもんだよ。
さぁ、俺の愛しい伴侶。
一つだけ面倒臭い障害が出来たけど、大丈夫。
すぐさま君を手に入れるよ。
だから、早く無事に産まれてきておくれ。
一ヶ月
五ヶ月
十ヶ月
一年
五年
って、ぅおいっ!!
飛びすぎじゃろがいっ!
もう産まれてるはずだよね!?
五年も腹の中にいたら、腹破れるっつの!!
もう五年待ってますが!?
いや、正しくは一回会った。
赤ん坊の頃に。
超可愛いかった。
クリクリした真っ黒い瞳が俺を映して、花が咲いたように満面の笑みを浮かべたんだ。
あんな美少女、ん?美幼女か?美赤子か?まぁ、どっちでもいい。
とにかく、すんげぇ可愛いかった!
でも、髪染められて金髪になってたんですが?
え?何?
俺の伴侶なのに、隠そうとするわけ?
黒髪黒目は魔王の伴侶って、知ってるよねぇっ?
産まれたら、即魔王に報告って知ってるよねぇっ!?
え、俺魔王ですよねっ!?
え、これって反逆罪じゃないですかぁっ!?
……いやいや。
冷静になれ。
そりゃ、可愛い娘を、そう簡単に手放せないよな、うん。
髪を染めるというのはいただけないが、周囲の目を気にせず可愛がりたいのだろう。
なんせ、未来の王妃だ。
知れれば周りがやかましいだろうしな。
そう。
いずれ俺の嫁になるんだ。
しばらくは、家族と暮らさせてやろうじゃないか。
ここは大人の余裕ならぬ、魔王の余裕だ。
彼女の家族って事はだな。
いずれは俺の義父、義母、義兄だ。
今、感情のままに暴走して余計な恨みを買うより、恩を売っとこう。
………って思ってたんだけどさぁ
さすがに、二十年はないと思うんだけど?
しかも、黒髪黒目って報告も無し。
しかも、家族揃って田舎に新たな屋敷を建てて引っ越しやがった。
しかも、シオンが側近やめて家族の所に行きたいとかほざいてる。
ふざけんなっ!
お前に辞められたら、色々困るんだよっ!!
ただでさえ、重鎮だったお前の親父さんが田舎に引っ込んだおかげで、貴族共が次のトップは誰だ!?みたいな事になってんのにっ!
せめて、引退してない事だけでも公言してくれないかなぁ!?
いくら偉い地位にいるからって、職権濫用もいいとこだよ!
週一くらいに職場にきて、後は全部家で仕事とか!?
仕事だけやりゃいいと思ってんのっ!?
ちゃんと現場に出ろっ!現場に!
事件は現場で起きてるって、誰かも叫んでたろ!?
しかも、シオンの野郎…産まれる前はあんなに
「妹可愛い!」
って騒いでたシオンだが、産まれた途端にピタリと口を閉ざしやがった。
わっかりやすいな、おい!
だから、俺の方から聞いてみたら…
「あぁ、元気に産まれたよ〜。ハハハ〜」
と、いかにも何か隠してますって感じだった。
ダメだ。
コイツら、可愛い娘を俺に渡したくないがために、嘘を突き通す気だ。
そして、コイツらなら嘘を突き通す。
ずっと会わせない気だ。
え、運命の相手いるのに、結ばれないとか!?
そんなパターンあったんですか!?
歴代魔王様方!
こういう時どうしたらいいんですかーっ!!かー!かー!かー…(エコー)
……ハァ。
馬鹿な事言ってないで、マジでどうにかしないとな。
だいたい、ほとんど伴侶に出逢えなかった寂しい歴代魔王達に助けを求めても無意味だ。
さて。
向こうがその気なら、コッチだって考えがある。
二百年以上の片思い舐めんなよ?
一方その頃のアンジェ↓
「おにーさま」
「ん?」
「だれかくるきがするぅ」
「あぁ、アンジェは気にしなくていいよ」ニコリ
(アイツだな・・・父上に相談しなきゃいけないな)
・・・魔王様対策に、シオン達が動き出していた。
ま、まさかの続きものだと!?
作者もビックリだよ!魔王様!
次回、魔王様は無事アンジェに会えるのかっ!!?