第9話 「中里」
「エルピダ」では「中里」の治療が行われていた。
しかし、誰も見た事のない事象の為医師達の万策は尽きていた。
人間の状態残っている部分から点滴を受け、必要な栄養分を摂取している状態が1週間ほど続いた。
「中里」は絶対に回復しない身体に対して絶望している。ただ何もできず日々が過ぎ去っている状況にも耐えられなくなっていた。
そんな中、夢を見た。
自分の身体が元に戻り、他の移住者と幸せな毎日を送っている夢を。
一緒の移住船に乗っていた移住者と少しだけ話はしたが、特段に仲が良くなった訳でもないのに幸せな夢を見た。
「はっ」っとして起きて涙を流した。
そして強く願った。
身体が元に戻るように強く願った。
するとスライム状だった部分が、元の「中里」に戻っていく。自分で見えない部分を確認する為に鏡の前に立つと、移住船に乗る前の自分がそこにいた。
「夢でも見ているのか?」と独り言を呟き、病室から出てみると医師が驚いた顔をして「中里」を見つめた。
そして医師が「中里」に対して「どうやって治ったのですか?」と極当たり前の質問をしてきた。
「中里」自身も半身がスライムになった原因、治った原因がわからなかったので返答に困っていると医師が「すみません。つい驚いてしまって。」と言ってきた。
「中里」も「申し訳ない。自分でも良くわかなくて困惑してます。」と答えお互いに少し笑ってしまった。
「中里」は検査を受ける事となり、色々調べられたが原因は何もわからず、ただ健康ということだけがわかった。
移住担当者達は「中里」回復の連絡を受け、急いで世界機構へ連絡を入れた。




