ギルドに来いと誘われたようです。
コツコツコツコツ…。
足音が以上に響く下水道はとても不気味だった。
誰も居なさそう。そう感じるとともに、視線も感じる。
タッタッタッタ…。
後ろから誰かが走ってくる音がした。
音がした、と言っても微細な音。
毎日死と隣り合わせの生活をしていたターリャだから気づいた音だ。常人なら聞こえない。
すぐにターリャは後ろを振り返ったが誰も居ない。
そのことを確認してからターリャは五歩前にに進んだ。
ドン!という音とともにすすが舞う。さっきターリャがいた場所だ。
「なんでわかったんだよ。」
不機嫌そうな男の声が煤から聞こえた。
「足音が聞こえて後ろを見たときに誰も居ないときは上、左右、後ろのどこかに敵がいるはず。敵をまだ目視できていない場合は、取りあえず安全が確認されてる方向に逃げるのが適策。夜道を歩く時の鉄則!」
ターリャは丁寧に答えた。こうすることで相手に『こっちは格上ですよ~』という思考を植え付けることができるわけだ。と言っても上から降ってくるとは思わなかったけど…。
そんなことを考えている内に男の周りにあった煤はきれいさっぱりなくなっていて、姿が確認できた。
男は、黒い服で全身を覆っていた。冒険者ではないのは明らかだ。
「くっそ!ならばこの下水道ごと破壊してやる!」
男は特大ビームをためている!!
「ちょっと待ちましょうよ!話し合えば分かりますって!!!」
よけられない。あれ撃たれたら死ぬ!生き残っても下水道破壊犯にされる!!
終わりを確信したとき、ビームを撃とうとしている男の後ろに人影が見えた。男を挟んでも見えるのだ。相当体格が良い。
「おらあ!!」
後ろの人影が前に出した拳は男の背中にクリーンヒット!!背中をメキメキ鳴らして拳がめり込んだ。
痛そうだな…。あ、まってこれ私に被弾するのでは???
ヒョっと横に避けた瞬間、男が10m先まで吹っ飛んでいった。
「ひ、ひええ…。」
足がすくむ。ドサッと座り込んでしまった。その時、ビーム男を吹っ飛ばした人影と目が合う。とても怖そうな男だった。
「ご、ごめんなさい!!」
何に謝っているのか自分でもわからないがこの際どうでもいい。マジ怖い。
するとその人はニコッと怖い笑顔を浮かべた。
「大丈夫か?謝る必要はないぞ。俺はトゥールだ。よろしく。」
そう言い、手のひらを出してきた。その手を借りてターリャは立ち上がった。
突っ込んでいいのかわからない。笑顔のはずなのに凄い怖い。戸惑いながらも話を続けた。
「先ほどはありがとうございました。」
改めてお辞儀をし、自己紹介をする。
「私はターリャって言います。ビーム撃ったりする能力とか防御系の能力が多分無くて…。」
普通に名乗ったけどいいのかな。さっき追われる身と再確認したのに。
「多分ってどういう意味だ?」
「能力を見るときに急いでてあんまり見れなかったんですよね…。」
こればっかりは不審に思われてもしょうがない。いざとなったら逃げればいい。確信はできないが、この人は多分物理攻撃、それも近距離攻撃しかできない。もしも遠距離攻撃ができたなら、わざわざ目標に近づいて攻撃する必要がない。
身構えていると、トゥールは言った。
「お前、こんな下水道に来て、身寄りはあるのか?」
想定外のことを聞かれて少々戸惑い、そっぽを向いた。
「なるほどな。じゃあ俺たちのギルドに来い。」
ギルドという言葉を聞いて少しぎょっとしたが、この時ターリャには逃げるという選択肢はなかった。




