追われる身ということを自覚したようです。
看板に書かれた文字が読めるようになってきたころ。
レインとターリャは色々と話しながら村の中央の噴水まで来た。
水は透き通っていて、見ているだけでもすうっと気持ちが楽になるのを感じた。
「どこに行きたいとかあるか?」
「うーん、もう一回ギルドに行ってスキルを確認したいかも…。」
話している間にだいぶ打ち解けてきた。ここで第三の人生を謳歌したいな。心からそう思った。
だが、歩いてる途中で見てしまった。
『路地裏連続殺人犯、逃走中。
異世界に渡る能力を持っているため、注意が必要である。
見習い天使様が誤って能力を授けた可能性があり…』
こう書かれている新聞を見た。見てしまった。
しょうがない。前々世にスパイとして世界に恐怖を与えていたのだから。
言い訳に聞こえてしまうかもしれないが、それは世界平和のためにいていたことだ。そのためには手段を選ばなかったし、選べなかった。
「や、やっぱりいいや。」
「どうしたんだ?」
「外は危ないみたいなことをおじさんたちが話し合ってるし、今日はいろいろあって疲れたから帰りたいな。そうだ。村の地図を渡して欲しいな。明日一人で探索してみたい。」
「ふうん。じゃあ帰ろう。俺の家に泊まってけ。」
レインの家に上がり、お風呂に入り、ご飯を食べ…。
色々やってもらって申し訳ないな。明日の早朝にこの家を出ないと、殺人犯(私)を保護したとしてレインが捕まったってなると心が痛む。いい人だから余計に。
今日は早く寝よう。布団に入り、目を閉じた。
朝、小鳥がぴよぴよ鳴いていて、空気が気持ちがよい。
「おはよう。ありがとね。」
ターリャは自分がいた痕跡を一つも残さずに静かに家を出た。
村の道には誰も居なかった。
当然だ。元の世界の時間で表すと朝の五時ぐらいだろう。
「出てきちゃったけど行く当てがないな。」
ぶらぶらとあるいていると、ターリャのことが書かれた新聞が目に入った。
「どんな事が書かれてるか見てみようかな。」
ターリャは新聞を手に取り、読み始めるとどんどんと目が丸くなっていく。
「路地裏連続殺人犯は見慣れたから良いんだけどさ。」
要約すると、こうだ。
『路地裏連続殺人犯逃走中。ギルドを破壊した疑いがあり、潜伏中。事を大きく受け取った各ギルドマスターは捜索を開始。懸賞金をかける検討も。』
はあ。私こんな悪くないよ。盛りすぎだって。
ターリャは逃亡生活を決心した。
「ここでいいだろ!」
ふんす、と仁王立ちするターリャ。
なんと下水道を見つけたのだ。
そんだけ?と思ったそこの君!考えてみたまえ。こんな天国みたいな場所に下水道の入口だぞ!
興奮しながらターリャは下水道へとつながる梯子を下りる。
前前世はこういうところを使って敵の後ろに回り込んでたからなあ。
懐かしい過去に浸りながら通路をどんどん歩く。
臭いのと暗いのは慣れてるけど長居するもんじゃない。水が汚染されている。それも泥水のように。上の噴水はきれいだったのに…。直接きれいな水を出しているか浄化魔法をかけているとしか考えづらいな。
隅々通路を見回しながら考えた。
コツコツと歩く音が通路いっぱいに響く。まるで自分しかいないのかというほどの静けさに違和感を感じながら歩き進めていった。




