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異世界全力逃走記  作者: 枝井
第一章
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勇者に助けられたようです。

「僕たちは勇者だからね。」

誰でも安心するその背中は、ターリャにとっては脅威でしかなかった。

バレてないだろうか…もしかして安心した時に後ろから刺してくるとか…?

そんな妄想をしながらモンスターの群れが倒されていくのを見ていた。

やはり勇者となれば戦闘の腕前は一級品。

さっきの冒険者とは比べ物にならないほどだ。

勇者パーティは4人で、勇者(剣士)、魔術師2人、重剣士だ。

重剣士の背中は大きく逞しい。誰もが安心できるだろう。

魔術師2人の撃つ魔術はとても神秘的で、宇宙のような無限を感じさせるようなエネルギーを秘めていた。

勇者の剣筋は滑らかでありながらメリハリがある、素人が見ても美しい。

見取り稽古として分析しようとしたが、動きが速く、とても分析できない。

気づけば相手のモンスターは一匹残らず消滅していた。

流石に可哀想...。

「大丈夫だった?」

勇者はそう話しかけてきた。

「大丈夫です。ありがとうございました。それでは失礼します。」

「ま、まって!」

すぐに立ち去ろうとした瞬間、やはり引き止められてしまった。

「君、どこかで会ったことある気がするんだよね。運命ってやつかな?このままお茶会なんてどう?」

違います。この世界の異常なほどの情報伝達の速さのおかげです。さっき森で指名手配されてるのを見ました。

しかし、ここは相手が言ったことを肯定することにした。

「あ、そうなのかもしれませんね!私、今とても急いでるんでまた今度!三回あったら運命ってことで!本日はどうもありがとうございました!」

お辞儀をするため、下を向いたときにとても大きなため息が聞こえてきた。

「はあ、やっぱりのってくれないか。仕方ない。拘束しよう。」

「えっ。」

勇者の後ろにいた重剣士が縄をもってこちらのほうへ歩いてきた。

絶体絶命だ。

前は勇者と重剣士、左右には魔術師。逃げ場はない。

「お嬢さん、こっちに来な。何もしないから。」

いや縄をぶんぶん振り回してる人が言っても説得力ないですって。

ターリャは後ずさりすると後ろには地面がないことに気付く。

そうでした。ここ渓谷でしたね。

見せ物になって死ぬか落下死か…。落下死のほうが楽そうだな。

そう思い、ターリャはくるりと後ろに振り返り、飛び降りた。


渓谷は意外と深く、ふわりという浮遊感をしっかりと感じた。

異世界に来てから死ぬの早すぎだろ。神様もあきれるだろうな。

そう考えながらターリャは目を閉じたのだった。

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