勇者に助けられたようです。
「僕たちは勇者だからね。」
誰でも安心するその背中は、ターリャにとっては脅威でしかなかった。
バレてないだろうか…もしかして安心した時に後ろから刺してくるとか…?
そんな妄想をしながらモンスターの群れが倒されていくのを見ていた。
やはり勇者となれば戦闘の腕前は一級品。
さっきの冒険者とは比べ物にならないほどだ。
勇者パーティは4人で、勇者(剣士)、魔術師2人、重剣士だ。
重剣士の背中は大きく逞しい。誰もが安心できるだろう。
魔術師2人の撃つ魔術はとても神秘的で、宇宙のような無限を感じさせるようなエネルギーを秘めていた。
勇者の剣筋は滑らかでありながらメリハリがある、素人が見ても美しい。
見取り稽古として分析しようとしたが、動きが速く、とても分析できない。
気づけば相手のモンスターは一匹残らず消滅していた。
流石に可哀想...。
「大丈夫だった?」
勇者はそう話しかけてきた。
「大丈夫です。ありがとうございました。それでは失礼します。」
「ま、まって!」
すぐに立ち去ろうとした瞬間、やはり引き止められてしまった。
「君、どこかで会ったことある気がするんだよね。運命ってやつかな?このままお茶会なんてどう?」
違います。この世界の異常なほどの情報伝達の速さのおかげです。さっき森で指名手配されてるのを見ました。
しかし、ここは相手が言ったことを肯定することにした。
「あ、そうなのかもしれませんね!私、今とても急いでるんでまた今度!三回あったら運命ってことで!本日はどうもありがとうございました!」
お辞儀をするため、下を向いたときにとても大きなため息が聞こえてきた。
「はあ、やっぱりのってくれないか。仕方ない。拘束しよう。」
「えっ。」
勇者の後ろにいた重剣士が縄をもってこちらのほうへ歩いてきた。
絶体絶命だ。
前は勇者と重剣士、左右には魔術師。逃げ場はない。
「お嬢さん、こっちに来な。何もしないから。」
いや縄をぶんぶん振り回してる人が言っても説得力ないですって。
ターリャは後ずさりすると後ろには地面がないことに気付く。
そうでした。ここ渓谷でしたね。
見せ物になって死ぬか落下死か…。落下死のほうが楽そうだな。
そう思い、ターリャはくるりと後ろに振り返り、飛び降りた。
渓谷は意外と深く、ふわりという浮遊感をしっかりと感じた。
異世界に来てから死ぬの早すぎだろ。神様もあきれるだろうな。
そう考えながらターリャは目を閉じたのだった。




