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異世界全力逃走記  作者: 枝井
第一章
16/16

少し怖い住宅街を駆け回るようです。

 少し廃れた商店街を抜け、陽で照らさたわけでもなく赤く染まった住宅街らしい場所に出た。

 空は赤いが太陽はない、でも決して寒くも暗くもないという異様な場所に困惑しつつもターリャとアロマは横に並んで無言で歩いていく。

 いつまでこの道が続くかわからないなら今からでも鳥居っていう場所に戻った方がいいのでは?なんてことを考えているアロマをよそに、ターリャはある事に違和感を感じていた。足音が三つあるのだ。ターリャとアロマ、合わせて二人のため、三つあるのはおかしい。住宅街だからと言っても静かすぎる。明らかに誰かが静かにつけてきている。

「てか、お前凄いよな。順応力というか精神力というか。」

「アロマが褒めた?!?!この世界は槍が降るかも。気をつけて歩かなきゃ!!!」

「うるっせぇ!」

 この様子じゃ気づいていないな。精神力とかの話をするってことは確実にこいつビビッてんな。

 フッと鼻で笑った後、前を向いたまま休まずに動かし続けた足を止めた。

「どうしたんだ?」

 ターリャが足を止めたことに気づいて足を止め、くるりと後ろを向くアロマの目に映ったのはターリャとその後ろの電柱に隠れているナニカ。

「お、おい。」

 誰が見ても動揺している事がわかるアロマの様子に自分の読みが外れていないことに安堵しながら口を開ける。

「ごめん、ちょっと疲れた!」

 声色だけ明るくし、顔をニヤッと笑うことで自分は気づいていたということを示す高等テクニック!!!

 アロマはそれを察してくれたようで「そうか。」と言って前を向く。

 いつ反撃するか、なんて考えてしまう私は異常なのだろうか。タイミングは高火力の攻撃ができて相手の背丈がわかるアロマに任せるとして、どうサポートをしよう。そんなことを考えていると、アロマが口を開いた。

「おい、ちょっと走るぞ。できるだけ速く。」

「はあ?」

 なんで、と思ったが聞く余裕はない。ここは異世界だし、何が起きるかもわからない。人じゃないナニカがついてきている可能性だってある。最悪の事態を考えながらターリャは止まっていた足を地面から離して走り出す。

 ダッダッダッダと言う足音で相手の足音が聞こえなかったが、走るのをやめて振り返ったら呪われそうで振り返るのをやめた。アロマは見ちゃったけどまあいいか。

「あれは人外だ。対人用の読みはしなくていいと思うぞ。」

「人外ねぇ。実感湧かないな。」

 人外にあったのは魔獣にあった時とレイの時以来だし、敵対しているのはこれが二度目なので対処法がわからない。とりあえずアロマに任せよう。

「二手に分かれようぜ。ここの住宅地をぐるっと回ってさっきの鳥居のところで合流すっぞ。」

「え、ちょっと待って???」

「じゃあな、健闘を祈る!!」

 アロマはターリャの話を聞かず爆速で砂ぼこりを上げながら突き当りを右に曲がった。

「はあああああ、死んだら恨むから!!!」

 そう言いながらターリャは突き当りを左に曲がった。


 荒い息遣いと二つの足音が静かな暗い住宅地に響く。

「なんっっっでこっちに来るんだよ?!?!?」

 そう、つけてきていたナニカはターリャの方に来たのであった。全力疾走しながら人の言葉がわからないであろう奴に文句を叫ぶ。

「お前なんて銃で撃っちゃえば一撃だからね!!!」

 そんなことを言いながら涙目になって走る姿。傍から見るとさぞ滑稽だろうが、彼女は本気である。

 テンパると思考ができなくなるのはターリャの悪い癖だ。さっき分析していた人とは思えないほどギャーギャーわめいて銃をバンバン撃っている。普通の世界でやったら完全にやばい奴(犯罪者)だが、ここは異世界。故によほどのことをしなければ大丈夫と言う認識をターリャは持っている。そんなターリャにとっていくらでも銃を乱射できるここは有利なのだ。

「なんで当たんないんだよ!!」

 だが、相手が悪かった。銃弾が一向に当たらない。

 そんな時、苦戦しているターリャの目に一つの黒い影が飛び込んできた。

 一目でわかった。あれは敵だと。

「挟むのは違うじゃん、正々堂々戦おう?最初に言っておこうよ、二人以上いますよって!」

 そう言ったターリャは銃口をサッと目の前の敵だとおもわれる影に向ける。

 だが瞬きをした瞬間、黒い影がすぐそばにあった。

 考える隙も無く、黒い影から手が伸びてきてターリャはバシッと地面にハエたたきされた。

 あたり判定あるんですね?!?!と言おうとしたが床に打ち付けられているため動けない。

 ガガガと言う音とともに固い地面にめり込む音が響く。後ろについてきていた影の足音がすぐそばで聞こえた。アロマ、恨むぞ!と叫ぶとターリャは意識を失った。


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