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異世界全力逃走記  作者: 枝井
第一章
14/16

能力確認のために手合わせをするようです。

下水道から出ると、朝日がいつもよりもまぶしく感じられた。

外は下水道の独特な匂いはなく、田舎のような新鮮な空気が外に出ようと誘ってきているような気がした。

生えている雑草は光に照らされ、きれいな緑色を輝かせてなびいていた。

「昨日ぶりなのに凄く久しぶりな気がする…。」

ターリャがボソッと呟いた。

「たとえ一日でも地下にいると体内時計が狂うからな。俺たちも薄暗い地下じゃなくて本当は日の光に当たって生きていきたいんだけどな。」

副マスに聞こえていたようだ。サダメさんと副マスは目がしぱしぱしているようで瞬きを繰り返していた。

「出発の前にお互いの能力、フォーメンション確認のために手合わせしてみたらどうだ。早朝だから近くに人はいないと思うぞ。」

副マスがそういうと、アロマとターリャは目を合わせた。バチバチと目から電気が走っているかのようだ。

しばらく睨みあっていると、アロマが先に口を開いた。

「ルールを決めよう。殺すな、荒らすな、五分間。勝敗は副マスが決める。簡潔で良いだろ。」

殺すなってそんな物騒な…とターリャは思った。そこでサダメさんがバッと手を挙げた。

「ちょっと待て、ターリャちゃんて戦闘経験あるのか?」

今はコンたちが取りつかれていないのかーなんて事を考えている場合ではない。そう言えばスパイ時代のことを伝えてなかった。ターリャは急いでみんなに伝える。

「一対一のバトルはあんまりしたことないですけど、戦闘経験はあるので大丈夫です!」

詳しく話そうとしたが、ここは出発が遅れると迷惑になると思い、説明を省いた。

「じゃあ問題ねぇな。始めるぞ。」


二人は十メートルほど離れ、五分を開始した。

どうやらアロマは短剣を使って戦うようだな。木に隠れて銃に装弾しながら相手をゆっくり観察する。相手の手札がわからないまま突っ込むと馬鹿だと思われるから、ターリャはそうした。

いつもは裏から敵を倒すアサシン的な立ち回りだったから、タイマンはきついか。いやでもアロマだったら勝てるか?そんなことを考えていると、何か焦げ臭い匂いがした。何かと振り返ると、遮蔽物として背中を預けていた木の草が燃えていることに気づいた。

魔法使えるのはずるいな。とりあえず近づいて様子を見てみるか。

ちらりと木の間から覗くとアロマが赤い魔方陣を展開しているのが見えた。それに、何かサダメさんに言っている。

私をこんがり燃やす気か?!?!そ、それはまずいだろ!

焦って副マスの方を見ると、サダメさんにバリアを張ってもらいながらニコニコこちらを眺めていた。サダメさんは呆れたような表情で応援している。

いや助けろよ!というツッコミをいったん飲み込んで頭をフル稼働した。

副マスたちの反応を見るに、殺傷能力はそんなにないのか?周辺被害が出そうなら止めそうだが、そうではないということか。アロマが持っている短剣は何だ?もし仮に大魔法を使えるなら魔法の杖などを持った方が燃費が良くなるので魔法の杖の方が能力的にはあっていると思える。

もう少しで魔法陣が完成しそうだったので、とりあえずアロマに弾を撃ってみる。

バンバンと銃声が響くが、もう遅い。朝日にあてられてきらりと光る銃弾は何者かによって消された。

「な、なに?!」

よくよく目を凝らすと、半透明の物…そう、コンタマレイがアロマを守っていた。

「サダメさん、取りつかれないように注意してくださいよ!」

アロマはそういいながら三匹を連れて突っ込んできた。

「位置バレはもうしてる。とにかく移動しないと、」

足を動かそうとすると、何かの記憶が頭を遮る。

『置いていくの?』

ターリャの脳内で再生されたまだ幼い声は、錆びることのない記憶だ。

『相手の隙を突くって言う名目で逃げてばっかり、何が楽しいの?』

その声はターリャの心を正確にえぐってきた。あながち間違っていないのだ。そんな自分が嫌で強くなろうと頑張って、でも昔からの癖は簡単に消えなくて…。

『自分からこの過酷なところに飛び込んできたのに、逃げるんだ。』

頭が真っ白になった。ごくまれに聞こえてくるこの声はいつもターリャの邪魔をした。どこか大人びた口調と幼い声は不気味で、だけど聞きやすくて。まるで呪いのようだった。

何もできずに立ち止まっていると、足音が聞こえてきた。警戒しながら殺意を向けてくる足音。戦場で何回も聞いたことがある。もうすっかり聞きなれてしまった、普通の人なら聞くことのない『死』の迫る音。アロマがもうすぐそばにいる、移動しないと負ける。

思いっきり足を前に出して必要ないことは考えない。全力で走りながらジャンプ、障害物を使って何とか距離を保ちながら銃で相手を狙撃する。ターリャの得意な距離を保つ戦闘スタイルだ。ターリャの方が有利だと思われたが、アロマに全然弾が当たらない。

くっそ、霊を貫通するくらい高威力で弾が爆発したらいいのに。そんな物騒な想像をしながら一度弾を撃つとボン、という鈍い音を立てて弾が発射された。壊れたか?!と思っているとアロマの方でなぜか爆発しているのが視界に入った。

「へ?!」

驚いて足を止めると、アロマの不機嫌そうな顔が煤だらけになっているのが確認できた。ブッと思わず吹きそうになったのも束の間、アロマの持っていた短剣が勢い良くターリャの居る五メートルほど先まで伸びた。間一髪で避け、走る速度を速める。伸び始めた頃は腕長いなあ、なんて思ったがそんなもんじゃない。腕が五メートル伸びるなんてことはそうそうないだろう。剣の方が伸びているのだ。

あいつ、出来ること多すぎだろ。でも炎の攻撃と霊の攻撃、剣の伸縮攻撃は同時に来ない。なぜなら来たことがないからだ!!!そうとわかれば怖くない!!

脳筋じみた思考を基に、ターリャは体の向きを180度変えて猛スピードでアロマに突っ込んでいった。

途中で炎や霊が来ても問題ない。同時に来るものではないため、その分だけ遠回りをしてじりじり距離を詰めていけばいずれ近づける。

バン、と銃を撃つと、着弾地点でまた爆発した。なんなんだよこれ、と思っているといつの間にか持っていた笛で副マスがぴゅーっと試合終了の合図をした。


「「どっちが勝ちですか?!?!」」

必死に質問する二人をよそに、副マスはのんきに「どっちもどっちじゃないか?」なんて答えた。

「ご、ごめんアロマ。そいつら消してくれないか?」

バリアをずっと張っているサダメさんに言われ、アロマはスッと霊三匹を消した。

「そうだ、お互いの使った能力を教えあったらどうだ。」

副マスに指摘されて本当の目的を思い出し、ターリャ達は話し始めた。

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