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異世界全力逃走記  作者: 枝井
第一章
10/16

いろんな部屋に案内されたようです。

「ここが風呂で、ここがトイレ。」

 ターリャは説明してくれているアロマの背中をじっと見つめた。

「な、なんだよ。」

「いや、何歳なんだろうと思ったんです。子供のうちからこんなに危ないギルドに居て良いんですか?」

 親に許可取ってんの?そう言いそうになったがやめた。この仕事をやってるくらいだったら親がいない可能性だってある。

「べ、別に深い意味とかはないんですけど…。」

「…19だ。もう子供じゃねえよ。それ言うんだったらお前だって子供じゃん。」

「はい残念でしたー!私20ー!!お前より上!!」

 明らかに空気が悪くなった場を笑って誤魔化した。

「はあ?!歳がわかった途端に敬語外すな!俺の方が先輩だわ!」

「でも私の方が上〜!」

「だがしかし身長は俺の方が高いー!」

 それを聞いてターリャはフッと鼻で笑った。

「ところがどっこい!私猫背で普段はお前より小さく見えてるだけで背筋伸ばしたら私の方が背が高いでぇーす!」

 そう言ってニョキっと背筋を伸ばす。

 くだらない競い合いなんて前は絶対にしなかったのに、今は心に余裕があるのか、この会話を楽しく思えた。

「くっそ、勝てねえ…。」

「ふふふ。相手が悪かったね!」

「何を!次は勝つ!」


 ギャーギャー騒いでいたらいつのまにかサダメさんが後ろに立っていた。普段は後ろに人なんか絶対立たせないのに。やっぱり怖いこの人。

「こら!そんな大声出して、もし上の人にバレたらどうするんだ。」

「ごめんなさい…。」

 アロマがすぐシュンとなるくらいだ。多分だけど怒らせちゃダメっぽいな。

「部屋の準備できたから、荷物とか置いてからから食堂来てね。」

 まじでこの人わからない。姉貴肌なんだろうけど、お母さん感、いや近所の人感がある。口調、と言うか人格に近いものがコロコロ変わっている気がするな。二重人格っぽくはないけど…。

「はい、すぐ行きます!」

 すぐにターリャは自室に向かった。


 ここが自室か。

 そこは結構質素な部屋だった。だがスパイ時代よりはありがたい。なにせ机があるのだから。スパイ時代での寮じゃ机や椅子などなく、狭い部屋に二段ベットが数個あるだけだった。だが孤児が拾われてスパイになるケースが多かったので、幸い退職者は少なかった。

 そんな思い出に浸りながら部屋を見回す。

 1人用ベッドや机、タンス、時計。1人用ベッドにちょっと感動、小さく素朴な机を撫でてみたりタンスを開け閉めしてみたり、年季の入った時計をぼんやり眺めたり。荷物もなかったのでターリャはそのまま食堂へ向かうことにした。


 食堂をちらっと覗くと、みんな集まっていた。ただ1人、副マスを除いて。

「ごめんターリャちゃん!副マスターはいつもこうでさ。多分五分ぐらいしたら来ると思うぞ。」


 本当に五分で来た。

「遅くなってすまない。迷ってしまってな!」

 ここ自分たちの家でしょ!そうツッコミたくなったがやめた。副マスならやりかねない。

「質素なものしかないけど、ここではみんなでご飯を食べるのが決まりなんだ。」

 説明されているうちにアロマや副マスがせっせと夕飯を運んでいた。

「準備できましたか?」

 サダメさんが振り返ると2人で同時にグッジョブしてきた。仲良いな、あいつら。そう確信した。

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