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第六十八章 聖王都奪還戦① 入口

 俺達は相変わらずの激戦区に居た。

 かつて俺達が追われた聖王都。そこの奪還だ。今はどうやら魔物領域の足場固めの様だな。この前落した魔王城跡は放置。交易路街からみて北西。東にあった魔王城跡とはほぼ反対側だな。

 ここはその前哨戦。要塞化された聖王都の入り口だ。以前ここは平原だったと記憶していたがそこが軒並み戦闘用の街並みに変えられている。壁はあるが、寧ろ呼び込んで殲滅するという趣なのだろう。今は亡き列車の森の街とよく似ている。そう、魔素人形を含めた魔素兵器を効率的に使うための街だ。だがあそこのように魔素流体はなさそうだな。

 既に俺達は内部に入り込んでいる。壁の上には加護ビームが居たが、シノを含めた髑髏部隊に潰されている。今回の聖王都戦は圧殺ではなく占拠だ。前回は初手に魔法合戦があったが聖剣のない聖王都は潰す必要がないのだろう。

 それよりも厄介なのが魔剣機体だな。オーガと同サイズで魔素吸収の魔剣を装備しているが、本当の問題は「施された武器を装備していない」という点にある。

 魔剣と施された武器のどちらが強いかと言われれば圧倒的に施された武器だ。だがそれは人間に限った話だ。この魔剣機体、正確には大型魔素人形では別だ。魔素人形は施された武器を装備していると機体制御に魔素が使えない。使えても潤滑油程度の効果しかもたらせない。しかし魔素の依存度を上げると施された武器が拒絶反応を起こし、リンクが切れ、抵抗が始まり、最後には持つことすら出来なくなる。

 その対抗策が魔剣だ。これは魔素人形の魔素依存度をいくら高めても使えなくなることはない。機体の魔素依存度を高め、機体の強化がいくらでも可能なのだ。つまり施された武器という強力な攻撃力を捨て、機体の動きを優先した機体だ。それは本末転倒に見えるがタンク役となれば別だ。

 俺は魔剣機体と切り結んでいるが、パワーと動きが段違いだ。加護で動かす操り人形から、魔素体という筋肉で動かしている機体だ。比べるのもおこがましい程に差がある。何よりも硬い。魔素の依存度を高めても加護の鎧は武器と違って拒絶反応はまず起きない。軽く強靭で魔法への抵抗力は勿論、物理の衝撃すら軽減するという厄介極まりない代物になっている。

 しぶといな。

 加護の鎧がここまで厄介だとは思わなかった。どうやらこの鎧自体が加護で回復している。加護をゼロにしないと消滅しない。そしてそれは困難だ。弱点はそのフレームだろうな。装甲は回復するがその下の魔素人形は回復などは行えず、単純に壊れたら修理するしかないだろう。加護で修理は流石にできないだろうしな。相手もそれがわかっていて加護の鎧で受け、加護の活性化のように使う事で機体へのダメージを軽減している。

 機体だけじゃなく中身の人間も相当強いぞコレは。

 当然のように関節を狙うが魔素人形特有の装甲同士を嚙合せる特殊な挙動で狙えない。この動きは魔素人形訓練場の人型を使っていた連中か。魔素人形の人型など最底辺の初心者入門用スターター機体だったがこの魔剣機体が来て一気に需要が高まったのだろうな。

 やはり対面していては埒が明かないな。

 俺は相対している魔剣機体の裏に回る。これ自体は読まれているだろう。裏から間接を狙うなどという行動は間違いなく読まれている。ならばどうするか。俺は相対した魔剣機体を盾にして俺にヘイトを向けてない魔剣機体を探る。近くに一体同族オーガと戦っているやつがいるな。俺は相対した魔剣機体に一撃入れて防御態勢を取らせると、ケツを向けている魔剣機体に肉薄する。同族オーガと目が合う。ケツを向けた魔剣機体が攻撃に出た瞬間、俺が魔素を燃やした全力の一撃で右膝を叩き切る。

 さてもう一撃、と振りかぶった所で相対していた魔剣機体が近づいてくる。多少は食らっても仕方ないかと思ったが武器を持っていない。俺はそいつの悪質タックルをまとも食らってバランスを崩した。

 馬鹿な!

 そのまま俺にのしかかりホールドを仕掛けてくる。これは予想外だ。攻撃ではなく拘束だ。人間との神の加護を使った戦闘ばかりしていたせいで失念していた。近接に対してホールドは有効だ。それもタンク機体なら尚更だ。

 俺は相棒を手放すと体中の魔素を燃やして魔剣機体を持ち上げる。腰を掴んだ状態から下半身を持ち上げてそのままバックドロップを食らわせる。流石の魔剣機体もこれにはフレームが耐えられないだろう。

 擱座したと思われる魔剣機体を捨てて、さっきの膝を切り裂いた魔剣機体を見るとこちらも武器を捨てて同族オーガに掴みかかっている。これは地味に厄介だな。しかも切られた足も加護操作で台座のように使っている。完全に撃破を捨てて俺達を止めにきているな。これこそがタンク機体と言える立ち回りだ。

 俺は拾い上げた相棒で魔剣機体の両腕も切り飛ばす。本来ならコクピットだがそれを狙うのはまず無理だな。硬すぎる。無力化しただけで十分だろう。

 ・・・だろう。

 それは擱座した魔剣機体から生えてきたグレートソードで打ち砕かれた。そう、この機体の中にはこれを操っていた間違いなく強い人間が内蔵されている。それが出てくるのは自明の理だ。何故なら彼らは魔剣機体などなくても魔物と戦えるのだからな。


 俺達がグレートソードと戦っていると魔剣機体からもう一人出てくる。こいつは出立から見て魔法使いか。それがどこからか現れた魔素人形に攫われる。これがまた厄介の種だ。加護の森にいたレーザー魔素人形のレーザー抜きだ。人型で走るだけだが人間を輸送している。さっきの擱座した機体からの救出は勿論、ヒーラーを抱えて走り回るのもそうだ。文字通りの腕に抱えるのではなく背中のキャノン部分がそのまま人員輸送用の籠になっている。

 今回の戦いではゴブリン種も参戦している。加護を抜ける魔物武器と、施された武器とも打ち合える魔剣。これらで後衛の攻撃もできる、筈だった。それがゴブリンが取り付く前に後衛が魔素人形に連れ去られる。

 DPSは弓兵だ。加護消費の強力な一撃をあちこちから放っている。これも動き回る上に魔素人形との連携で射撃位置が予想できない。矢もあちこちに隠してあるのだろうな。この街がエルフの森の様だ。縦横無尽に動き回りほぼ無限に矢を撃ってくる。

 今回はその戦闘の特性上ゴブリンサン達も活躍が出来てない。魔物でない彼らは人間と同じように体力の限界がある。今回のような走り回る戦闘には不向きだろう。それにしてもゴブリン種が戦闘に参戦したこともあって呼び名はわかりやすくした方がいいな。


 魔物ゴブリンは魔物の小鬼。

 亜人ゴブリンはリンキンとリンセスの子供たちであるゴブリンサン。

 見た目は似ているが別物だ。


 魔物ゴブリンはその名の通り小鬼。小型の鬼だ。魔物ゆえに体力という概念がなく魔素さえ残っていれば活動に支障がない。支配は生命の支配。意識のない生命を支配下におけるが、ここでは使い道がないだろうな。


 亜人ゴブリンは見た目こそ小鬼だが中身はほぼ人間だ。その代わり魔物ゴブリンの生命の支配と、母であるリンセスからコアの力、無から物体を生み出す生成魔法が使える。亜人ゆえに魔物に特攻の奇跡などは効かない。実質加護持ちを相手にかなり有利を取れる兵科だが、今回は流石に相手が悪いな。


 まともに戦えているのはシノだけだな。魔素人形に攻撃を当てられているのはシノだけだ。他の髑髏も範囲魔法などで攻撃はしているのだが一緒に乗っているヒーラーがいるだけでそれを軽減してしまう。人間側もそれをわかっているらしくシノが前に出られないように弓兵が抑えに出ている。アリエスが一緒に居る以上危険はないだろうが火力が出しにくい状態を強いられているのは間違いないな。


 俺の方も人間を見習って移動を重視している。タンクである魔剣機体は味方のオーガに任せて遊撃だ。魔素人形と弓兵を始末しながらヘイトの外れた魔剣機体を背後から強襲。ガッツリとヘイトが上がってきたがそれを使ってシノの方へ向かう。そういう立ち回りだな。

 地味にタウラスの能力の物理無効が役に立っている。弓兵のエンチャント矢は刺さると厄介だがその能力で刺さらない。ダメージは通っているが刺さらないだけでもだいぶ楽だな。あの矢は加護がエンチャントされて抜けない上に刺さっているだけでダメージが蓄積していく。

 俺にヘイトが向いてようやくシノが前進できているな。俺が盾まで使って無様な戦闘をしているんだ。その対価は払ってもらわないとな。

 シノの魔法で、魔素人形の動きを捉えた短槍と、魔剣機体の頭上から大型の短槍が空間から発生、魔素兵器を蹂躙していく。攻撃力自体はそこまでではないが動きが止まるという最高の副次効果付きだ。

 相変わらずわかっている魔法の使い方で頼もしいな。ここで一帯を吹き飛ばす魔法が飛んできたら魔物側も大惨事だ。

 ようやく終わりが見えてきたな。



Tips

魔素人形。

人型で魔素を流すだけで魔法を放てるレーザー兵器を主に使う。今回はそれらの装備を外して人員輸送。魔法使いが搭乗する。

加護ビーム。

非人型の魔素人形。魔素の依存度が低く動きが鈍い。加護ビームは攻撃力はあるが射程はそれなり。加護の消費が大きく継戦能力が低い。ヒーラーが搭乗する。

魔剣機体。

オーガサイズの大型魔素人形。機体の魔素依存度が高く筋力が高い。加護の鎧、つまり加護の装甲もリンクで操作できるため搭乗者の加護の出力による更なる強化も可能。武器が魔剣のため攻撃力は生身の人間に劣る。加護の強い前衛職と魔法使いの二人乗り。

魔剣。

剣と言ってるが実際の形は剣以外もある。特殊な効果はあるが、実質その硬さで使用されていると言っても過言ではない。

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