表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/87

第六十七章 エピローグ温泉回(やってみたかっただけ)

 俺達はパルテの作った温泉に着ていた。和風の露天風呂だ。本編に全く関係ない、その存在すらなかったことにされそうな世界観全く無視の代物だ。建前上パルテは異世界転生者でムリエルの世界観無視の世界改変グッズがあるという設定だ。

 俺は湯船につかりながら繕いでいた。

「なぁ旦那。俺達が風呂入る意味なんかあるのか?」

 リンキンだ。ゴブリン種特有の緑の体に引き締まった体躯。無駄な筋肉はなく攻撃やスカウトに向いた動きやすい体だ。俺達オーガのように筋肉で防御という概念がないのだろう。その分、最弱のゴブリンでのスタート経験から危機管理能力は高い。

「僕らはただの賑やかしだろ? こちら側に誰もいないというのは寂しいだろうしね」

 タウラスだ。本当に肌が黒いな。これは俺の記憶の乙女ゲー攻略キャラから来ている。こちらは引き締まったというよりも溢れる筋肉の躍動感が感じられる。着痩せはするが美丈夫で荒事に強そうなその体躯が人気キャラの秘訣なのだろう。

「そうね。ここで見られるのは私くらいかしら」

 レオだ。美少女バスタオルで髪も結い上げて色っぽいがTS美少女だ。

「いや、お前こっちに来るのかよ。完全にエロ同人のシチュエーションじゃねぇか」

「あら? 私に興味があるの? それよりもTS美少女に妻の体を見られる方が嫌でしょう?」

「いや、ま、そうだけどよ。中身旦那だろ。・・・ま、そっか。だったらこっちに居ても問題ねぇな」

「僕は興味津々だけどな。レオを落とせば王牙が僕のものになるなら今からでも押し倒してもいいけど。どうかな?」

「それは無意味だ。レオが落ちてもその体限定だな。俺がそっちの趣味に走ることはないぞ」

「なんだ。それじゃ意味がないな。僕が落としたいのは君だからね王牙」

「っつかまだ諦めてなかったのかよ。和解したなら繋がらなくてもいいんじゃねぇの?」

「違うよ。諦めないという事で納得したんだ。僕の王牙の席は何時でも空いてるよ」

「はー。よくそれでアリエスが怒らねぇな。俺がそれ言ったらリンセスが旦那を殺しかねないぜ」

「それは俺も釘を指されている。リンキンに手を出したら殺すとまさにそういわれたからな。俺の評価はどうなっているんだ」

「それは汝がヤレヤレ系主人公だからじゃろ」

 ? バスタオルを巻いたムリエルだ。

「ムリエル。お前もやはりTS美少女なのか!?」

「違うわ! こっちにレオがおるじゃろう。連れに来たんじゃ」

「私はこっちでしょう。TS美少女を悪用するなと言っていたのはムリエルじゃない」

「事情が変わったんじゃ。むしろ汝がこっちにおる方が浮足立つ奴らがおるのじゃ」

「ああ。わかるぜ。俺は別に構わないぜ。変に勘繰られることするとうちの嫁に刺されるぜレオ」

「僕らの貞操を心配されているのか。僕は王牙本人しか興味がない。中身だけ王牙は対象外だ。僕もそれに賛成だな」

「お前らがそういうならレオは向こう側に送ろう。俺の側に問題はないがなにかあったら言ってくれ」

「ほら、レオ! 行くのじゃ!」


 私はムリエルに手を引かれて女湯の方に連れられる。流石にどうなのかしらね。悲鳴と罵声が上がったらムリエルに一晩慰めてもらうしかないわね。

「みんな! 大丈夫じゃ! 心配するような事は何もなかったのじゃ!」

 私を出迎えたのは安堵のため息だった。

「レオ。本当に何もありませんでしたか? うちの夫はわが父の事になると見境がありませんから」

 アリエスだ。単純に私を心配してくれたようね。

「色目は使ってないでしょうねダンナ? ダンナとリンキンは親密なのは知っているんだから、女体化なんてしたら絶対間違いを起こすでしょ」

 リンセスは明らかに懐疑的な目で見てくる。いつも思うけれど、どうしてそんなに王牙とリンキンでカップリングを妄想するのかしら。

「あーしは単にレオっちとお風呂したかっただけだけどねー。あーしの王子様が汚い筋肉だるまに囲まれてるのは正直不快ー。大丈夫。中身なんて気にしない! こっちに来てレオ!」

 パルテだ。相変わらずわかりやすいわね。でも中身は気にしないって一言は救われるわね。少し緊張していた私はパルテの隣に座る。

「お前たちはレオの中身が王牙でも平気なのか?」

 シノだ。少し離れた所に陣取っている。バスタオルはともかく、ただ結い上げた髪がいつもと違う。シノの長いウェーブは好きだけれどこの結い上げた姿も捨てがたい。

「それはダンナだしね」

「ええ。その視線を見れば危険はないことはわかります。シノにぞっこんですもの」

 あ、この体でもシノの方に目線が行くのね。あのへんなわだかまりはなくなったみたい。

「レオっち。流石にガン見しすぎ。聞いてたけどホントにあの筋肉だるまシノっちしか視界にないんね。浮ついたら本性暴いてやろうと思ってたのに意外ー」

「そうね。流石にガン見は良くないわね。私は他に視線を向けないようにするわ」

 私は目を瞑って温泉の中にある岩に背をもたれかける。私がここに呼ばれたのは不貞の心配でしょうしね。

「レオっち。本当に王子様! なんでこれがあの筋肉だるまと繋がってんの? 信じられないー」

「ダンナは本当に紳士だよね。いつもあんななのにどこにそれがあるんだろ?」

「私としては全ての行動がわが父と呼ぶに相応しい立ち振る舞いですが、そうではないのですか?」

「王牙は優しいのじゃ! 大好きなのじゃ!」

「お前たちの評価を聞いていると私の知る王牙との落差があって同一人物の話をしているのか怪しくなるな。私に対しては横暴で劣情に塗れた見た目の通りの鬼なのだがな」

「それは許してほしい。私がシノに劣情を感じるのではなくてシノが私に劣情を植え付けたのでしょう? シノはいつも新しい扉を与えてくれるから私はそれを開いているだけ。シノに染められているのは私の方だと思うのだけれど?」

 流石に空気がざわついたわね。けれど私は何も嘘はついていない。私を変えたのはシノだから。

「そ、そんなに凄いんだ。そうよね。あの約定の口付けもシノが発祥だものね」

「私も夫との馴れ初めはわが父とシノとの愛の行為でした。それに当てられて、はい、私達も変えられました」

「シノっち。あーしがいない間に大人の階段飛び越してしまったんだね。あの筋肉だるまを手懐けるなんて。うん、やっぱシノっちは何時でも凄い。あーしの尺度で測れる存在じゃなかった!」

「でも我には一切手を出さんのじゃが、好意は持ってくれておるのじゃろう?」

「勿論ムリエルは好きよ。でもそれは穢したいという意味じゃない。守りたいの。シノとは真逆ね」

「あ、あーしは! あーしもレオの事好きだよ! 守りたいって思ってくれてる?」

「むしろシノ以外は全員よ。シノが特別なだけ」

 シノ以外が私に抱き着いてくる。これはTS美少女の特権。百合ハーレムという奴ね。二次元限定だと思っていたけれど実際に起きるのね。

「ねぇ。ここまで来たら知りたいんだけど。ダンナとレオってどういう関係なの?」

「魂が囚われて同化した。それだけよ」

「そうじゃなくて、その、二人で、その、濃密な時間を過ごしているじゃない?」

 隠していてもバレるものね。

「それはメンテナンスね。いい機会だから話しておくわ。私の体は神降ろしと魔王の心臓でボロボロなの。だからインナースペースの改良と相反する二つの力の同期を図るために体中を刺激する必要があるの。リンセスが聞いた噂はそれね」

「言ってくれれば手伝うのに! あーしの得意分野っしょ!」

「わかってはいるんだけれど、女の子に見せるものじゃないから。いえ、女の子には見せたくないの。私も、恥ずかしいから」

「そんなことありません! わが父が必要だと判断した行動に恥ずかしい事などありません! どのように行うのですか?」

 これは引っ込みがつかないわね。他も賛同し始めている。説明すればわかるでしょう。

「まず魔王の心臓で感度を高めるの。そのあと手足の先を撫でてくれるかしら?」

 右手をリンセスが撫でてくれる。母のように優しい手つきだ。左手はアリエス。祈りを捧げるように正確で繊細な手つき。右足はムリエルが無邪気に抱き着いてくる。そして左足はパルテ。技術者らしい探るような手つきだ。

 ただ感度が高まってくると私も普通ではいられない。恥ずかしい声が漏れてしまう。これで理解してもらえたと思ったけど女性陣の興奮が伝わってくる。これは終わるのかしら?

「お前たちは何をしている。それは私のものだ」

 それを止めたのはシノだった。さっきまでの淫靡な空気が一瞬で凍る。

「王牙。レオを連れていけ! 処置はそちらでやれ!」

 珍しく怒っているわね。私は王牙を連れて来ると私を抱きかかえる。後ろではシノのお説教が始まっているようね。これでしばらくは安泰ね。


 それにしても女風呂の方が貞操の危機にさらされるなんて、TS美少女の闇は深いのね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ