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第五十八章 竜姫

 そうは問屋が卸さない。

 知ってた。わかってた。

 やはりというべきか第三形態が待ち構えていた。人間サイズの多翼の人型だ。天使型ではなく、背中の竜翼がヒュドラのように肩の上に並んでいる。生えているというよりも繋がっているという感じだ。竜翼の形の遠隔操作端末と見た方がいいだろう。それが盾となり爪となる。攻防一体の武器になるのだろう。左右四枚で八翼だ。

 名づけるなら八翼の竜姫。魔王種のネームドだな。これも竜姫というだけあって女性型だ。神の手先を降ろせるのは聖女クラスの魂が必要なのだろう。

 ん? いやまて。神の加護はないな。神に屈したとういう話だが神の加護がないのか?

 俺がその疑念を感じるまでもなく人間の総攻撃が始まった。

 八翼の竜姫に人間の総攻撃がハジマタ。

 は?

 なんで人間に攻撃されているんだ?

 いやちゃんと話は聞いてたが神の下僕が人間に攻撃されているのを見ると流石に違和感が大きすぎる。だが折角の猶予だ。俺がオーガ体を解除すると限界だったシノが髑髏体も解除する。俺がシノを掴んで盾に格納するが抵抗がない。相当に消耗しているな。

「シノ。意識はあるか?」

「ああ。問題ない。だが魔法は打ち止めだぞ。しかしなんとも無様なことになっているな。あれでは竜ではなく蝙蝠だな。神にも見捨てられたか」

「流石にこれは想定外だな。だが放っておくには惜しい展開だ」

「何をする気だ?」

「ムリエル。行けるか?」

 俺はシノの疑問には答えずムリエルに呼びかける。

「なんじゃ人使いが荒いの。我は今先の戦いの執筆で忙しいのじゃが」

「なら特等席だ。皇帝と神の加護を頼む」

「まったく惚れた弱みじゃなんでも聞いてやろう」

 ムリエルの加護で盾の鎧と聖剣を顕現する。

「王牙。それで神の手先の真似事か?」

「それもできれば御の字だが、人間の加護ビームを無効化できれば実質挟撃できるだろう。今の指示はアレの討伐だ。人間は捨てておいてもいいだろう」

「まあやってみろ。私は見物させてもらうぞ」


 俺は皇帝でローラーダッシュをしながら聖剣で加護の棘を射撃していく。最初は無視されていたが竜翼が防御に回っている。効果はある様だな。八翼を扇状に囲んでいた人間の反対側に陣取り射撃を入れていく。理想の形だな。下手に飛行してヘイトが散らないように地上戦だ。人間側も新型が居るな。既存のレーザー魔素人形と加護ビームに交じってオーガサイズの人型が混じっている。黒塗りグレートソードの廉価版のような機体だ。動きが良いと思ったら武器が施された武器じゃない。あれは魔剣か。魔剣で魔素操作を可能にして動きを高めている。攻撃力を捨てて機動性を取ったタンク機体か。八翼と相性は悪いがその防御力で勢いは止めている。

 理想的だな。俺はそいつを機能させるように魔剣機体を狙う竜翼を狙って潰していく。タンクを活かせば人間でも撃破できるだろう。

 やはりというかガチギレ八翼がこちらに突っ込んでくる。

 バレるがしかたない。

 俺は魔素を燃やすと迎撃する。流石にこれ無しで竜翼八枚は防げない。下がりながら竜翼に攻撃を入れていく。だがマズイな。人間の攻撃を効率的に使うためになるべく下がらずに踏ん張っていたのだがそのせいで魔剣機体が俺の背後に回りだしている。これは離脱か片付けるか。俺がそう迷った時だった。

 盾から友軍信号が流れる。

 出しゃばりかと思ったが否定が返ってくる。この盾になっている機体にアクセスできるのは・・・宿主殿か。そこに居るのか。

 俺を囲もうとした魔剣機体が下がりだす。こちらはしばらく無視していいだろう。しかし敵味方不明ではなく友軍か。期待されたものだ。今の所八翼の攻撃に使える竜翼は六枚。潰した二枚は裏に回って人間の加護ビームを防ぐ肉塊になっている。

 この八翼は厄介だがそこまでの強さがない。先の怪獣も竜皮が強力なだけでそれ以外は並みだった。この竜翼も防御能力は高いが攻撃能力はそれほどでもない。どうみてもタンク系か。動きの方もそうだ。防げる攻撃には無頓着だが俺の魔素を燃やした一撃は敏感に察してくる。特に八翼が人間側に注意を向けた瞬間に魔素を燃やした一撃を入れようとするが機先を制してくる。立ち回りもそうだ。確実にダメージを入れてくる俺に注視している。典型的なタンクの動きだ。実際はこの八翼が前線で暴れて後方から羽魔王種が追撃を入れる形なのだろう。そのDPSはシノが魔王城ごと潰してしまった。残党も魔物側で始末している所だろう。本来なら羽魔王種のほかにもDSP魔王種が居たのかもしれないがあの瓦礫の中だろうな。

 この絶体絶命の中でなぜこいつは逃げないのか。それだけが引っ掛かっている。この分だと神の手先を降ろして加護形態か世界の改変か何かしらの手段があるのだろう。残る竜翼はあと四枚。もう攻勢に出ることも敵わないだろう。


 遂に八翼が動きに出る。俺から離れて四枚の羽を地面に打ち付け完全に防御のスタイルだ。そして跪き祈りを捧げるポーズだ。やはり神の手先を降ろすか。だがそれは叶わなかった。その代わりにシノの高笑いが響く。

「見たか王牙。神への祈りがまさかの魔法だぞ。私の前で神を下す魔法とは笑わせてくれる。どこまで道化なのだあの存在は」

「どういうことだ?」

「言葉通りだ。神の手先を降ろすのは魔法だ。まさか聖女タイプが魔法で神の手先を降ろしているとは誰も思わないだろう。微量な魔素なうえに隠蔽を施してあったが私にはわかる。そして今の私ならそれを理解し止めることもできる。今の私に並みの隠蔽などないのと同じだ。聖女クラスの加護があれば流石に干渉は出来なかったがな」

「それはシノにも神降ろしの魔法が使えるという事か?」

「使える。だがあれは狼煙のようなものだ。上げた所で神の目に留まるだけで手先は降りてこないだろうがな。この場で使えば降りてくるかもしれんがそれはあの下僕の所にだろう」

 なるほど。ただの合図か。仮に魔物の上に神の手先が降りてきても使い道はないだろうな。

 八翼の視線がこちらに向いている。完全に気付いているな。表情はうかがえないが完全に恨みか憎しみに満ちた視線だろう。八翼はそこから飛びのくと人間の方に突っ込んでいく。さっきの会話が聞こえたとは考えにくいがカウンターマジックを警戒しての事だろう。だが流石に無謀だ。案の定囲まれて取り押さえられている。このまま捕獲されてしまいそうだ。

 いや、これは寧ろ嫌がらせか。流石に俺でもあそこまで突っ込むのは無理だ。囚われの身になれば神への伝手も使える事だろう。だが。

 一発の銃声が響く。狙撃オーガだ。八翼の頭部が吹き飛び体が力なく崩れ落ちる。

 ここまでだな。俺は踵を返すと安全圏まで下がり盾の友軍信号を敵性信号に切り替える。そして剣を振り上げた後に撤退。流石に次は共闘することはないだろう。まさかネームドという事はないだろうしな。仮に名づけるなら仮宿の宿主殿か。俺と共闘する運命にある人間のネームド。デミに魔王種と来て次は神か? まさかな。


「頭を撫でるでない!」

「これは嫌か?」

「嫌じゃ! 子ども扱いするでない!」

 シノとムリエルだ。加護も皇帝も解除して盾の中でくつろいでいる。

「ではこれはどうだ?」

「なんじゃこれは! 我の髪がスベスベなのじゃ! しかも香りもいい!」

「そうだろう。気持ちいいか?」

「気持ちいのじゃ! これはなんじゃ?」

「王牙に秘密にするなら教えてやるぞ。まだ種類もある」

「教えて欲しいのじゃ! 我もスベスベ髪になりたいのじゃ!」

「後でリンセスの所に行こう。お前に会いそうなものもいろいろある」

「それは俺が同行しては駄目なのか?」

「駄目だ。女の支度に顔を出すな」

「何故だ? 以前は服の見立てなども同行していただろう。俺もそのシノの髪の秘密が知りたいのだが」

「駄目だ。服は良い。見せるものだからな。だがどんなに親しくても立ち入らせない領域というものがある。これがそれだ。遠慮しろ」

「そうか」

 シノの機嫌を損ねてまで暴き立てる気はないがそこまで隠すほどのものか? これもオママゴトのようなものか。この辺りはイマイチ感覚が掴めない。むしろそんな良いものがあるのなら逆に自慢しそうなものだが。高級ブランドがあるのかはしらないがそれを誇示する・・・タイプでもないかシノは。あれは魔法に関する事柄限定だな。

 俺達は古城に戻る。流石にシノは補給と休養が必要だろう。



Tips

宿主殿 人間

第十三章の魔素人形訓練場に出てくる王牙を捕えていた機体の操縦士。

革新派として危険視された宿主殿は政敵に敗れ投獄されていたが、かつての愛機(王牙)が戻ってきたことで一変。その後の混乱で一時的に元の地位に戻っていた。

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