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第四十三章 ケンカ(イチャラブ注意)

 一戦終えた俺達はそこの芝生で寝転んでいた。

「しかし髑髏を増やすのはたまげたぞ。赤髪との共同は読んでいたがもう一体とはな」

「神との戦闘の答えだ。一体の巨大な髑髏は確かに多数の構成を組めるが所詮は一体だ。今の私なら私を含めて五体。四体の魔族髑髏の共同魔法は計り知れない力を持つだろう。その分扱いが難しいがな。汎用性も落ちる。ただ高威力の魔法を使う事だけに特化した構成になるからな」

 まあケンカの理由となった人間達はもういない。始まる前に終わっていたと言ってもいい。

「それでアリエスはどうなったのだ?」

「アリエスの魂を神の元へと送りたくなかったからな。それで俺のインナースペースにその体ごと魂を受け入れた。だが戻ってこれるかどうかは五分五分だ。お前のように魂だけが抜ける可能性もある。自身の改変はそれぐらい危険なものだ。シノ、お前との合体もお前はただ分離しただけだが合成する俺は消える可能性があった。取り込むのではなく外付けで借り受けるという形でだいぶ安定はしたがな。アリエスは俺の信徒としてその信仰を含めて改変する必要がある。俺の時とは比べ物にならないぐらいに難易度が高い。ここはもう信じるしかないな」

「随分と買っているのだな」

「それはそうだ。絶大な力を持ち、神の手先まで降ろした存在がただ俺を討つためにだけ魔物にまで堕ちたのだ。そして俺を認め信仰を捨てた。それも形を変えただけで人類の守護者であることには変わらない。これで俺が信奉者になるなという方が無理だ。俺が取り込まなければまた神の傀儡としてその魂が玩ばれたのだろう。これがお前が敵と認識する神の一端ではないか?」

「その認識は正しい。聖女の存在でお前がそれに気づけるとはな。やはり大きな存在なのだな」

「俺が信仰を得るくらいだ。当然だろう」

「その信仰とやらは私よりも上なのか」

「アリエスによれば信仰は見返りを求めないそうだ。愛とは違う。全くの別物だ」

 ここまでくれば流石の俺でもわかる。確かに他の女をここまでべた褒めしていては面白くないのも納得だろう。

「さっきの事を聞いてもいいか? あの人間達だ。アレの何がお前の気に障った?」

「ここでお前の無粋を問いても仕方がないな。いいだろう。教えてやる。お前はアイツらに何をすると言っていたか憶えているか?」

「ザマァ展開だがそれではないのか。・・・ああ」

 呪いか。奴らを長く苦しめるための首輪だ。

「気付いたようだな」

「すまん。全く意識していなかった。人間を呪うのは当然だと思っていた」

「そうだろうな。私とあの人間達を同列に扱おうとしていたんだ。私が怒るのも当然だ」

「面目ない。まるで頭になかった」

「それも理由の一つだ。お前は信仰に駆られてまともな思考が出来ていなかっただろう。信仰の下であれば何をしてもいい。これはまさにお前が嫌いな人間ではないか?」

「相違ない。これにすら気付けなかったのか俺は。信仰も過ぎれば毒となるな」

「ようやくわかったか。それにそれだけではないぞ。これから何度もいう事になるが憶えておけ。お前は私の好きなお前でいろ。お前は私の物なのだからな」

「違いない。神だの信仰だのと言ってはいたものの、俺はまだまだ何も足りてないな」

「そこは私が埋めてやるから安心しろ。王牙、お前はお前のままでいろ。だからこそこの難局を乗り越えられたんだ。もっと自信を持て。お前は一人ではないぞ」

 シノをそっと抱き寄せる。

「そういえば随分と下着がご無沙汰になっていたな」

「そこは忘れろ。お前の悪癖の一つだ。これを機に卒業してはどうだ?」

「卒業か。もう一皮むけるにはいいタイミングか」

「剥けるな。いやいっその事剥いて全裸で我慢しろ」

「確かに俺は全裸に着飾ることが真理だと痛感した。服から脱がすのは駄目だ。邪道だった」

「今は撫でるだけで我慢しろ。・・・下着の形に撫でるなこの変態め」

 やはり露出か。布面積の減少が一番効果的か。何事も基本が第一だな。

「そんなに見たければ信徒であるアリエスに求めるのはどうだ?」

「信仰とは見返りを求めないものだ。俺はアリエスの信徒でもある。劣情という見返りを求めた時点でそれは信仰ではない」

「私への信仰心はないのかお前は」

「当然だ。たとえお前が神になっても信仰心など芽生えん。劣情のない愛など愛と呼べるか」

 俺はシノを抱えて藪の中へ入る。堪らず抱きしめるがそこでようやく気付いた。

「なるほど。信仰とは与え合うもの。だが愛は補充するのものだ。お前の愛が俺に満ちていない。シノ、お前にもだ。それがこの喧嘩の本当の理由だろう」

「そんなことを言ってただ私を辱めたいだけだろう」

「その通りだ。愛とは諸刃の剣だ。愛が深ければ深いほど傷つけられずにはいられない。今回の下着はこんなのでどうだ」

 俺はリンクでTバックを伝えるとシノが俺のコアを使って下着を生み出す。

「な、なんだこれは。完全に丁の字じゃないか。これが下着なものか。この変態め」

「待て、これは丁バッグという常用下着の類だぞ。まだ変態の入り口にさえ入っていない」

「これが常用であってたまるか。お前たち異星人は宇宙にいく技術まで持って何をしているんだ」

 それを言われるとぐうの音も出ないな。

「だが機能性もあるらしいぞ。美しく見せて楽だという触れ込みだ。意味もなく常用下着にはなりえんぞ」

「どうやら嘘ではなさそうだがお前の選択という時点で不安しかないな。上はどうする」

 次に俺はスポーツ用のスポブラを指定する。

「これは、なんだ?」

「下の露出を高めたぶん、上の露出を減らしてみた。機能性という意味での組み合わせだ。これならばお前の抵抗も少ないだろう」

 なんだ? むしろ不評だな。これこそ下着とさえ呼べない武骨な代物だ。服と変わらないと言ってもいいはずだが。

「これは本当にお前の望みか?」

「いや。下に合わせてお前の抵抗を配慮した苦肉の策だ」

「もっと美しいものにしろ。お前が満たされなければ意味がない。私が恥を忍んでいるんだ。それ相応の効果がなければ意味がないだろう」

 なるほど。俺は欲望のままに布面積の低いビキニの三角ブラを提案する。

「これは、本当に紐だな」

「ああ。機能性は、ないのだろうな。組み合わせの後ろ姿が正に紐だがそれが見たい」

「これがお前の望みなら受け入れてやろう。だがその分しっかりと焼き付けておけ。これで愛が足りないと抜かしたらお前も同じ格好にしてやる」

 それは恐ろしい。だがこの下着を履かせるのは難儀だな。下着自体に耐久性があるのかどうか。

「今回は私が着る。心配するな」

「いいのか?」

「ああ。流石にこれをお前に履かされるのは絵面が変態的過ぎる。こんなものを履かせるのは犯罪を超えた罪だと憶えておけ。鬼であるお前でも地獄に堕ちろ」

「承知した」

 すっとシノがローブを落とすと手にした下着を履き始める。流石に後ろ向きだがこれはこれで趣がある。いやむしろ後ろこそが下着の真価なのではないだろうか。

 下着を着終わったシノがこちらを向く。素晴らしい。

「どうだ?」

「今は言葉を語らせるな。集中したい」

 恥ずかしそうだがその手は完全に布地を覆っていない。むしろ肌よりもその布地を隠そうとするその手の動きが艶めかしい。それも正面でなく微かに斜に構えているのも好ポイントだ。体ではなく布地を隠そうとするその動き一つが俺の視線を釘付けにする。

 その手の動きが下着を隠すがギュッと握られる。下着を隠そうと無意識に動かした手に気付き手を握って視界面積を確保する。こいつは俺を殺す気か。この尊い光景で俺を浄化する気か。聖女の加護でもこれほどの威力は出せないだろう。

 遂に握った手ではなく腕の部分で布地を隠す。それに応じて体が縮こまるがその髪が降りてきて神降臨。俺は昇天した。

「ど、どうした王牙。もうこれ以上は無理だぞ。晒せというならまた今度にしろ。今はもう無理だ」

 俺は死んだ。この世界が死んだ。そして俺が生まれかわった。これこそが王牙転生。

「では後ろ姿を頼む」

「わかった。それならいいぞ」

 すっと後ろに振り替えるが髪で何も見えない。それに気づいたのかシノが右手で髪をかき上げ脇に寄せる。

 これは。

 後ろ姿で髪をかき上げた姿勢もいいがそれを右に寄せるために顔が斜に傾きがこちらに向いている。先程と違ってこちらを見つめる瞳がある。俺は一歩下がると全体をフレームに収める。

 女神か。しかし下着の面積を減らしたのは逆効果だな。女神を彩る下着が紐しか見えない。これは冒涜だ。布面積ばかりに気を取られていたが、後ろががら空きになるというリスクを秘めていたのか。彩れないならいっそない方がいいぐらいだ。これは盲点だった。次回への展望がこれで見えてきたな。

「なんだ。これは気に入らないか?」

「いや、次回への展望が見えてきたところだ。お前の体を彩るという本質を見失っていた。細ければいいというひも理論が瓦解したな」

「ではもういいか?」

「もう一度前を頼む」

 シノが振り返るとそのまま抱き着いてきた。

「前はもうダメだ。これ以上は私が耐えられない。感触で我慢しろ」

 シノがこちらを向いて来ない。これは流石にオーバーか。俺もその体を抱き返す。

「感謝するシノ。ありがとう。得るものがあまりにも多すぎて言葉にならないぐらいだ」

「お前の、こんなことに付き合うのは私だけだからな。これを刻んで絶対に忘れるな。お前は私のものだと認識しろ。私だけを第一に考えるんだ。そうでないとまた自分を見失うぞ。お前は何時までも私の、シノの好きな王牙でいろ。いいな」

「心得た。これは好感度の上限を突破した手ごたえを感じたぞ。シノ。お前への愛が更に深まった。お前はどうだ?」

「私はお前の変態性に付き合わされただけで何も変わってないぞ。もっと抱きしめて愛を囁け」

「承知」

 その後俺は歯の浮くような愛の言葉を囁き続けた。それはシノの心臓が高鳴るまで。

 俺達の戦力レベルがまた一段階上がったな。

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