第三十四章 悪役令嬢(イチャラブ注意)
私はシノ・ヴァレンティーノ。転生者だ。私は魔族に生まれ高い魔力を持っていたが呪われていた。この指輪が私に魔法を使わせない。使えるのは初級魔法のみ。それでも威力は出るのだけれどそれも限界が近づいてきた。名家の私は王族との婚約が義務付けられていたけど、それも限界。こんな呪われ女では魔族の頂点に立つこともできない。
誰がどうしてこんな呪いをかけたの。
その元凶が今まさに姿を現した。
その姿に私は、
「王牙!」
俺は出ばなを挫かれて言葉を失った。
やっと手に入れた手掛かりはシノの転生先が魔族という事のみだった。
それを頼りにこの地に舞い降り指輪の気配を探り当ててここに至る。
やっと見つけた。
さてどんな罵詈雑言で罵ろうか考えていたが、抱き着いてきたシノに全てが吹き飛んだ。
「シノ。お前髪をストレートにしたから誰だか分らなかったぞ」
俺は何を言っているんだろうか。
「だったらまたくしゃくしゃにしろ。お前の好きな私にしろ」
・・・俺の恨みと悔恨に満ちた旅を帰せ。
その時バァンと音を立てて扉が開き男たちが雪崩れ込んできた。
「シノ・ヴァレンティーノ! お前との婚約は破棄する!」
警備と思ったらこういう展開か。シノの体が縮こまる。よほど心細かったのだろうな。俺に気付かず近づいてくる王子風の男。俺をカーテンか何かだとでも思っているのか。その手がシノに触れる前に切り飛ばした。
驚き慌てふためく王子と側近。その手に魔法が現れた。
これはチートを使用した魔法か。世界の改変を含んだ改変魔法とでも呼ぶべきか。また新しい仕様を入れてくれたな。俺は即座に改変の禁止を展開すると手にした相棒を王子に突き入れる。すると相棒が俺の意志に関係なく聖剣となり光が王子を蝕む。
なんだ? 相棒がバチバチだ。出しゃばりもアイドリングを始めている。コア付きのチート使いが相手の時でさえこんな反応はなかったが、よほど気に要らないらしいな。
「この不詳の呪われた娘め! 何という事をしてくれたのだ!」
今度は父親か。流石に始末をつけるのはマズイか。
「・・・」
何かを堪えているシノ。
「王牙・・・」
流石にこの世界には愛着があるか。
「王牙! やってしまえ!」
そう来なくては。俺は即座に首をはねる。魔族の相手は楽でいい。神の加護さえなければ人型など紙切れだ。
「王牙。地下に召喚陣があるそこまで頼む」
「心得た」
漸くいつもの調子が戻ってきたな。それでいい。この恨みと悔恨に満ちた旅も報われたというものだ。
そこでは魔物を召喚する儀式場のようなものがあった。思ったよりも広く魔物が暴れたら即戦闘になるのだろうことを想像させる。
シノが熱心に魔方陣を書き込んでいるが、これも世界改変を利用したヤバいやつだな。こんな魔法を連発していてはこの世界が不安定なのも頷ける。道理で相棒と出しゃばりがお冠なわけだ。
「できた」
何が書いてあるかさっぱりわからん。だが魔素を流すのは俺が変わった方がいいだろう。魔族が改変魔法を使うとイラン事が起きそうだ。シノに伝えて俺が魔方陣を起動する。そこに現れたのは勿論死の髑髏だ。
「王牙と私か」
俺達は目配せで会話を追える。言葉にする必要もない。
「私よ。新たな力を得たぞ。もう一度一つに戻る時だ」
「聞こう」
「新たに魔族の心臓を得た。これがあれば私は成長できる。この世の魔族を食らいつくし神の領域に昇ることも夢ではない」
「そこに私が必要か。小さい私よ」
「必要だ。髑髏の空間を支配する力がなければこの力は絵に描いた餅だ。使うには世界の改変を要する。だが髑髏の空間を支配する力があればこの高度に生成された魔素で今まで以上に大きな構成を描ける。私が私を殺してまで手に入れた力だ」
「素晴らしいぞ私よ。私もそれを手に入れたい。お前を食らってな」
「やってみるがいい」
まさかのバトルが始まってしまった。完全に蚊帳の外だった俺は見物に終始する。髑髏が瞬時に魔法を展開するのにシノは手書きの魔方陣を宙に描いている。それも改変なしの素の魔法だ。完全に不利だが魔素の質が違うのだろう。俺達魔物や人間はどこからからか流れてくる、もしくは取り出した魔素を使う。だが魔族の魔素はいままさにその心臓から生み出されるのだ。その質があまりに違い過ぎる。これは確かに俺でも欲しい。だが魔物で使うにはすべての魔素を交換が必要そうだ。一部取り込んだところで馴染まなそうだな。
そうこうするうちに茶番は終わったようだ。それでも卓越した髑髏には敵わないのだろう。
「覚悟はいいか私よ」
「勿論だ私よ。ともに神を討つ。そのために私は全てを捨ててきた」
融合が始まる。髑髏のアバラの内部に赤髪が入るいつものスタイルだ。そして髑髏が霧散した。
「それで、どっちが勝ったんだ?」
「なんだそれは。私は私だ。私は一つになる価値があるから一つになった。ただそれだけだ」
そしておもむろに下着を脱ごうとする。
「まて。なぜそうなる」
「なんだ。もうこれをつける意味がないだろう。魔族の心臓が魔物の体に入ったのだ。これはもう必要ない」
「俺への報酬がない様だが」
「なんだ。まだその変態性癖は続いていたのか。まあ好感度による精神の安定は未だ必要だ。お前が望むのなら何でもしてやるぞ」
「では履いた状態でスカートをまくり上げるのはどうだ?」
「いいぞ。そんなことならお安い御用だ」
上がっていくスカートの裾から見えてきたのはドロワーズだった。
「なんだ。期待外れか。お前の変態的なデザインと違って締め付けはきついが恥は少ない」
「では後ろをまくり上げてくれ」
何の躊躇もなくめくりあげられる。
「これは平気なのか?」
「勿論だ。服を着たままなら別に何ともないぞ」
それは意外なバックドアだ。下着さえ変えればこれはこれでいい。そうかアプローチを間違えていた。全裸から履かせるのではなく着衣から脱がせれば抵抗が少ない。これは盲点だった。
「下着が気に入らないならもう外すぞ」
俺が頷くと服を着たまま上も下も外す。何かの魔法か。だがその後もシノの脱衣は続いた。
「いいのか?」
「ああこれはもう私に必要ない。全裸の方が楽だ。だがそれではお前がマズいだろう。王牙、コアでローブを作ってくれないか」
「すまん。やり方がわからん」
「なら私と同調しろ。私がコアを使う」
シノが全裸のまま前から抱き着いて俺の背にあるコアに触れる。そこまで密着する必要はないのだが。
「すまない。王牙。私はお前より力を選んでしまった。お前を見捨ててしまった」
だろうな。
「お前は私をどうにでもしていい権利がある。私はお前を裏切った。好きなようしろ」
シノはうつむいて俺と視線を合わせようとしない。
「では縄はどうだ?」
「縛るのか?」
「いや下着の形に履くんだ」
「なんだそれは。何も隠れていないじゃないか。それは、じゃ、下着とさべないじゃないか(下着とさえ呼べないじゃないか)」
ようやくこちらを向いたな。シノと俺の視線が合う。
「嫌か」
「嫌だ。だがお前が、」
俺はシノの言葉を遮って言葉を紡ぐ。
「シノ。俺も同じだ。必ず帰ると約束したが、それは難しい事だったが、だが俺自身がそれ破ると決めてしまった。だから同罪だ」
だから。
「お前を愛しているシノ。これからは一緒だ。あの時の約束だ。神を下しこの世界に飽きたら次は他の星を探しに行こう」
「そうだな。その時は私達が神を名乗ろう。神を食らった神肉食いの転生劇だ。私もお前を愛しているぞ王牙」
外では俺達の門出に大量の魔族が参列していた。俺は既にガチギレで待ちきれない相棒と出しゃばりを纏って魔族のケーキを切り裂いている。シノは食事係だ。俺が刻んだ魔族のケーキを飲み干している。これが一種の経験値なのだろう。お返しに盛大な花火をシノが上げる。
弱い。魔族は最強と聞いていたがチートを封じれば人間以下だ。正直魔物に勝てるのかコレは。
シノが髑髏を顕現している。自身の魔素で構築した巨大髑髏だ。いやデカすぎる優に三倍以上でかい。そこから魔法が放たれる。勿論改変魔法ではなく魔素を利用した魔法を髑髏の空間支配で多重に構築したものだ。
これは流石に聖女に匹敵する。インフレが凄すぎだな。
これからこの物語のタイトルは
「悪役令嬢転生~魔族に転生した私は神を屠るために同族を食い散らす~」
に変更だな。




