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第十四章 魔素人形訓練場② 大会

 見事落第試験をパスした俺達は特別枠として組まれるようだ。つまり中核。戦闘のかなめとして連携を求められる。宿主殿も魔法の扱いに長けこちらの使い方がわかってきたようだ。動きやすいのはいいことだ。

 しかし俺の見立てではオーガ部隊に勝てるようには見えないのだがな。この巨大な施された武器を扱うためにこの機体が生み出されたのだろうが、正直生身のグレートソード戦士の方が強かった。子供でも使えるというのは利点だが宿主殿を見るに誰でも扱えるというわけではない。魔物との戦いには不足で誰にでも使える兵器。これが何の役に立つのかまるでわからないな。まさかのこれは何かの遊戯なのだろうか。実践ではなく決闘用。人間同士のルールのある場所でならこれでも役に立つだろう。正直魔物が攻めてきたら俺以外は全滅だな。

 そしてそれはどうやら正しい様だ。都市の雰囲気が祭り一色。何かの大会が行われるのだろう。祭りの催し物。そこでは一対一の模擬戦が行われるようだ。なんとも暢気なものだがこの空気は嫌いじゃない。俺は遊戯が嫌いだが戦闘は大好きだ。俺にとってゲームとは戦闘。戦闘こそがゲームだ。


 しかしいざ戦いが始まってみると色々な機体があるものだ。装飾はもとより多椀や四つ足も見受けられる。何よりデカイ。これらに比べれば俺の機体は素体の素体。ベーシックすぎる。しかも貧弱。本来の魔素人形はあのデカイ異形なのだろう。操作にしても体を動かすのではなく装甲を動かすのだ。人型でなくても操作はできる。むしろこちらが本業か。この機体は初心者用のスターター機体と言ってもいいぐらいだ。

 いくらなんでも機体格差がありすぎる。大会とは公平なものではないのか。しかもこのラインナップでこちらが出せるのはこの機体のみ。他のを見たことがないからな。つまり俺達は超弱小チームでホームという事か。ショボい機体しかないがホームのお情けで参加可能。それで俺と宿主殿に期待がかけられていたのか。道理で遊戯にしては宿主殿が気張っているわけだ。


 今の所は順調だ。体格差など俺達の前には無意味。宿主殿のペース配分。俺の魔素コントロールで今までとは比べ物にならない程強くなっている。魔素の配分にしても構成した魔素体を即座に燃やすことで対応している。デカイとはいえ魔素流体で加護操作に負ける道理がない。

 やはりこの反応を見るに魔物OS搭載型はこの一機のみなのだろうか。もう一つの懸念点はやはり出力の限界だな。魔素の配分に限界がある限りそれ以上は出すことができない。俺も宿主殿も全力が出せないでいる。この機体自体に限界が来たときにそれ以上の敵には対処できないだろう。

 

 対処できないだろう。まさにそれが現れた。巨大な黒塗り機体にグレートソード。またか。またグレートソードか。しかもこのサイズで光波。馬鹿を言え。オーガの肉体で人型サイズを相手に辛勝だったものが、この機体でさらに巨大となると対処のしようがない。そもそも打ち合えるはずがなく、リーチで懐に入ることもできない。

 単純に打つ手がない。宿主殿はやる気だがもはやこれは惨殺ショーだな。勝ち負けではなくその過程を楽しむショー。誰もがこちらが勝つとは思っていないだろう。まさにその通り。このままでは勝ち目がない。このままでは。

 グレートソードの一撃を受けた腕が悲鳴を上げる。もはや光波すら打ち返せずに装甲が削られる。反撃もままならない。これはもう限界を超えるしかないか。実際どこまで戦えるのかわからない。それこそ宿主殿の魔素が切れる可能性もある。それでも俺は魔素切れのランプを点灯させた。 

 それを待っていたかのように宿主殿が詠唱に入る。

 詠唱? 魔法か?

 そしてそこに現れたものに俺は驚きを隠せなかった。

 魔素ジェネレーター。大型ではない簡易版だが間違いなく魔素ジェネレーターだ。それが生み出された。最初は捨て身の魔法かと疑ったがどうやら違う。魔法で構築されていて、人間を媒介にした前に目にしたものとは違う。これが宿主殿の才能か。

 これならいける。俺は魔素体を構築すると全身にまとわせる。施された剣が弾け飛んだが問題ない。次は魔素流体を排出してそこに魔素体を流し込み爆発させる。パージするように装甲が弾け飛ぶ。これでいい。そしてさらに魔素体を構築して肉体を作り上げる。魔素を使った簡易オーガ体だ。

 さてこれで使えるか。俺が地面を爪先で叩くと何本もの黒曜石の剣が生み出される。大地の支配も完璧だな。それを二刀流にして切りかかる。これも所詮は石の剣だ。金属に勝るものではない。案の定数回の打ち合いで砕けるがそこは数でカバーだ。

 最初こそ意表をついての有利を得ていたが段々と押され始めている。単純に武器だ。施された剣が使えなくなることはわかっていた。そのための黒曜石の剣だったのだが、もろいというよりも相手が悪い。巨人の扱うグレートソードと打ち合えというのは土台無理だ。相手もそれに気づいている。これはマズイか。大地の支配を交えているがそこも付け焼刃。武器の差がここまで如実に出るとは。爪も牙も使えるが人間ではない器物に施された鎧というのはあまりにも相性が悪い。

 これは流石に何かに祈りたい。せめて武器があれば。あの時手にした。

「ともに楽園を」

 地面が揺らぐ。地震か。あまりの揺れにどちらも屈みこむ。地割れが起きそれが収まった頃に水が噴き出す。そして同時に見慣れたあのバスタードソードが生えてくる。俺はそれを手に取る。間違いない。奴だ。また世界を改変したな。

 俺は両手で剣を構える。全力を出せる安心感と高揚感。俺は魔素ジェネレーターの魔素を絞り上げると構築した体を点火する。生成と消失を同時に行い燃え上がる魔素体で全力の剣戟を繰り出す。

 待ち構えているグレートソードの腹に一撃、さらに左右に三撃。それを一瞬で行ってグレートソードを弾き飛ばす。

 次は左肩から股下へそして右肩に切り上げるVの字切り。

 それで勝敗は決した。あとはトドメの一撃だが。魔素ジェネレーターが揺らぐ。限界、ではない。集中が途切れている。迷っているのか。ならば俺が決めるわけには行かないな。止めの一撃を避け剣を振り払った後に地面に突き立てる。

 魔素ジェネレーターが消失したが最後の一撃分は俺がキープしている。あとは宿主殿の判断待ちだ。

 剣が振り上げられる。しかしそれは振り下ろされなかった。それは勝鬨のポーズだ。

 それを見届けると魔素のコントロールを解く。流石にここまでだな。


Tips ザクっと概要。

ここで重要なのは「ともに楽園を」で聖剣を呼び出せたこと。

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