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帆布に描くぎじゅつ  作者: Aa_おにぎり


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37/50

#37

核兵器


それは世界を滅ぼす力を持った最終兵器であり、持っているだけで脅威になる代物だ。

世界で初めて戦争で使われたのは第二次国共内戦時、当時はソ連との関係は悪化し、援護を受けられなかった北中にアメリカが開発したばかりだった核爆弾を投下。今では落とされた地域の核汚染は無くなったものの、その威力で第二次国共内戦は北中の敗北で終わった。戦後、その威力に恐れ慄いた列強は核兵器の開発に躍起になっていた。

日本もその例に漏れず核兵器の開発に乗り出し、緩衝国としての立場を守る為に核兵器を数は少ないものの配備をした。しかし冷戦が終わって脅威が去って久しい今、世界中で核兵器の削減は行われ、現在日本が保有する核兵器は保有国の中でも最も数は少なかった。


日本という国は立地的にも何かと中立の立場として緩衝国だったり、味方に引き入れようとアメリカとソ連の間で駆け引きが行われていた。

その中、ソ連は国交があった日本に長年に渡る莫大な借金をし、その額が大きかったことなどから返済として多くの軍艦や戦車、航空機が返済の代わりに送られた。その中にはキーロフ級ミサイル巡洋艦も含まれていた。そして、現在配備されている扶桑型イージスミサイル戦艦はこの時に送られたキーロフ級を元に設計が行われていた。




十二月三日

霞ヶ関 内務省


かつて『省庁の中の省庁』と謳われた内務省は、戦後の冷戦期の予算の割り当てが外務省に多く回される様になり。今ではその威光も過去のものと成り果てていた。

今では各省庁の緩衝剤ほどの役割と国内の保安維持に務めることの多いこの場所で、杉峰貴一郎は久しぶりに前職の職場に訪れていた。相手は内務省保安局局長古畑智和。今では保安局という名前に変わっているが、未だに特高と呼ばれ何かと嫌われながらも恐れられているこの部署。貴一郎は職場関係が上手くいかず。当時の特高のやり方に不満を抱き、辞職しようとしていた時。今の総理である葦塚に拾われていた。


「こちらが、今回起こった第六次国共内戦の被害推定です」


古畑はそう言って杉峰に封筒を手渡しする。杉峰が受け取った後、古畑は少し目元を緩ませながら言う。


「しかし、お前さんがここを辞めてもう二〇年か…早いな」

「あの頃からここのカビ臭さには敵わん…」

「相変わらず容赦のない言い方だ…」


古畑はそう言うと、ここ最近は規制が厳しくなってきた煙草に火を付ける。一息煙を吐くと、杉峰は怪訝な表情をしながら古畑に言う。


「おい、俺が嫌煙家なのを知っての虐めか?」

「警察学校からの仲で許してくれないのか?」

「当たり前だ」


即答する杉峰にため息を吐きながら火をつけた煙草を一旦押し付けて消す。

すると古畑は杉峰を見ながら今の仕事場の話を聞かされる。


「それで、今の仕事場はどうだい?」

「見ての通り、前の職場に俺が来た時点で察せるだろう?」

「成程…」


つまりは相当な状況なのだと理解する。現総理の葦塚に拾われ、元特高の時の実力を活かして、彼の周辺の防諜などをし続けて早二〇年。子供ももう大学生となり、親離れをしている。歳をとったと思っていると、古畑は席を立ち、窓の外を見ながらふと懐かしむ。


「俺たちもずいぶん歳を食ったもんだ。お前さんがここを辞めた時、俺はまだ下っ端の役人だった」

「ああ、そうだったな…」

「それが今じゃ、この役職だ。腰も痛くなった上に、皺も増えた」


懐かしむ様に呟くと、古畑は部屋にあるテレビから流れる国共内戦の被害を伝える報道を見て言う。


「時期に嵐が来るな…」






====






同じ頃、学業院では冬歌はさくらと話していた。


「期末考査どうだった?」

「ぼちぼちかな」


二人の今の話題は国共内戦ではなくこの前行われた期末考査だった。所詮は近場の国だし、あの国はしょっちゅう揉め事をしているから、流れ弾がこっち行こなければどうでも良いと言うのが一般的な感想だった。


「今回科学難しく無かった?」

「まあ、化学の先生は性格悪いからね…」

「あの、黒豆めが…」


そう言い、さぞ悪い顔でさくらは呟くと冬歌もやや苦笑しつつも否定できないから笑いも交えて答える。


「でも、黒豆先生はさ〜…」


その時、クラスメイトの誰かが聞く。


「ねえ、誰かナプキン余ってない〜?」

「あ、あるよ…」


そう言い、一人の生徒が教室の端から端に向かってナプキンが飛んでいった。これで本当にお嬢様学校かよと言う光景だが、教室のロッカーには誰が持ち込んだのかわからないBL本が置いてあったりするのでもう滅茶苦茶だ。先輩曰く、一度品性が崩壊したらあとはもう流れに身を任せるしかないそうで…。

夏場なんか暑すぎて上下着になってたやつもいたしな…。


「…はぁ」


今更ながら学校の倫理観に疑問を抱き、軽く溜息が漏れてしまった。

この前、わざわざ皇居まで手伝いに行った新嘗祭も終え。今年の仕事も終わりだから何をしようかと思っていると、携帯に連絡が入る。


「ん?誰からだ…」


通知の来た携帯を見ると、その瞬間苦虫を潰したような顔が浮かびそうになったが、全力で堪えるとそのまま内容を読む。長い長い文章だが、要約すると簡単な話だった。


「どうかした?」

「ん?ううん、何でもない。…あっ、そういえばさ。ちょっと下北沢の方なんだけど、美味しいお菓子が売ってる店があってさ、帰りにちょっと行きたいと思っているんだけど…」

「おっ、いいよ!」


お菓子と書き、気分が上がっている様子のさくらは携帯で愛結達も呼ぼうと提案してきた。数ヶ月前まであれだけ敵対視していたのに、あの事件以降、和解か何かしたのか、愛結とも仲良くやっていた。

こっちとしては有難い話だが、沙耶香達のグループは相変わらず大人数の薄っぺらい関係を維持しており、二人もやや面倒そうにしていた。少なくとも自分の様に公爵の身分を隠して動いているわけではないので遠目で御愁傷様と思いもしていた。


「お、行くってさ」

「大丈夫なの?野次馬とか」

「大丈夫でしょ、そこら辺は…流石に学校帰りまで一緒に帰るのは見ていないし…」


やや一抹の不安を感じつつも冬歌達は放課後に寄り道をしようと考えていた。






====






「おぉ…これはこれは…」

「美味いわ!」


下北沢のとあるカフェで、愛結が興味津々で、沙耶香はクレープ片手に美味い美味いと言っていた。申し訳ないが、その様子が某漫画のキャラっぽかった。と言うのは言うと酷い目に遭うことは目に見えて理解できたので口には出さなかった。

今回、学校から少々遠出しながらも下北沢に電車で移動した四人は冬歌の案内のもと、とあるクレープ屋に来ていた。専ら好きな食べ物はクレープと答える冬歌おすすめの店にさくらも満足の模様。


「他にも色々あるんだけどね、全部回ろうとすると一週間はかかるから…」


なおいつか食べてみたいのは、大阪にあるとんでもなく生クリームを乗せたデカすぎるクレープなのだが…。


「この店は生地からいいものを使っていてね。クリームも私好みで…」


そして止まらない冬歌のクレープ愛に沙耶香達はやや意外な表情を浮かべながらさくらに聞いた。


「ずいぶん好きなんだな」

「そりゃあね。冬歌の好きな食べ物だし」

「なんだか意外ですね。てっきりこう言う庶民的な食べ物は取らないイメージがありますから…」

「あのねぇ、あんたら華族のボンボンがみんなこう言うの食べないと思うのかい?」


そう言い、思わずさくらはツッコミを掛ける。この四人のうち、唯一華族で無いのがさくらだ。一応、冬歌もそう言った知識も持ち合わせているが稀に出るお嬢様感が、さくらも若干違和感を感じていたそうだ。


「私は元々浅草とかそっちの方だったからあれだけど…」

「ああ、確かに。あそこなら色々とこう言う食べ物は多そうですね」

「下町だしな」


冬歌の話も半分に、沙耶香は呟く。一昔前は東京であって東京では無いと言われてきた隅田川の向こう側だが、ここ百年ほどの目まぐるしい経済発展でそんな面影すら消え去っていた。一応、帝都環状線の内側は政府庁舎や華族、富豪の家が集まる所謂高級街と言った認識があった。古い堅物人間は帝都環状線の内側しか東京と認めないと言っているそうだが…。


「たまにはこうして寄り道するのもありだな」

「ですね、なんだか勿体無いことをしていた様な気がします」

「あっ、じゃあいい店とかまたまた送ろうか?」

「ああ、頼む」


さくらがそう提案すると沙耶香は頷く。その横でやや不満げになる冬歌が軽く頬を膨らしていると、沙耶香は思い出したと言った様子で冬歌達にあるデータを送った。


「ああ、そうだ。今年の冬にどうせならここに遊びに行かないかと思ってな」

「「?」」


愛結はいつものやつかと言った様子で慣れた雰囲気を出していたが、冬歌達は送られたデータを見てやや疑問に思った。


「スキー…?」

「ゲレンデ…」


そこにはスキー場のサイトが映し出された。


「うちの別荘がそこにあるんだ。いつもは私と愛結で行くことが多いんだが…どうだ?」

「うーん、スキーかぁ〜…私やった事ないや」

「そういえば私もないかも…」


さくらは冬歌はスキーはやった事がないと思い返すと、やや不安げに呟く。


「そもそもうまく滑れるか分かんないし…」

「そこは私がレクチャーしてやるよ」

「うーん、それなら良いかもだけど…」

「ちょっと試してみたいとは思うよね」


さくらと冬歌はそう話していると、沙耶香は冬歌の肩を軽く叩きながら言う。


「まあでも冬歌の場合は最初に体力を増やすところからだな」

「一言余計ですよ」

「でも体力ないのは事実だろ?」

「…」


ぐうの音も出ない答えに、さくらと愛結は笑ってしまっていた。

四人は年相応に楽しい会話をして、放課後を楽しんでいた。

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