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帆布に描くぎじゅつ  作者: Aa_おにぎり


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35/35

#35

一一月一〇日

埼玉県 某所


入手した武器と、元々持っていた短機関銃(ウージー)を机の上に置きながら裕翔は自宅で自分のリボルバー(マテバ モデロ6)拳銃(ウニカ)、俗にマテバオートリボルバーと言われるリボルバーを確認する。

.454カスール弾仕様のリボルバー拳銃を整備しながら裕翔は昔馴染みの友人を思い返す。


思えば、自分が仕事を仕事を引き継ぎ始めたのが二年前。とっとと引退したいと叫んでいた父親に変わって今では殆どの仕事を任されていた。

現在、学業院などという一流のお嬢様学校に通う、明らかにお嬢様っぽくない雰囲気を醸し出していた狼八代冬歌…いや、一般の女学生の上社冬歌は今頃、楽しく学生をエンジョイしているのだろうか?


「はぁ…怖い怖い」


自分はあのお嬢様より四つ年上で、今は大学生を一応しているが、何せ仕事が多くてなんとか通っていると言うのが現状だ。せめて卒論と単位は最低限取っておいたほうが良いだろうと勝手に思って大学に通っていた。

部下からは『若は高卒でもモテるのでは?』と言われているが、モテるために大学に行ったわけじゃねえんだぞこっちはよ。


「上がりは?」

「こちらに、若」


ヤクザの子と言ってもウチは麻薬を取り扱わない主義のヤクザだ。そのお陰か、薬にめっぽう厳しい首都圏の警察はウチに手出ししようとしなかった。お陰で警察との棲み分けが出来ていた。

裏の警察的立ち位置で、非合法行為に流れてくる品々を、法的に拘束されている影響で動けない警察に代わってしばくのが主な仕事である。


「ふむ…品川の方が少々少ないようだが?」

「はい、どうも仕事が増えたようで、そちらに人が回されたようで…」

「…人を送れ。調べさせろ」

「分かりました」


関東で麻薬の摘発をするのは警察の仕事…と言っても実情は狼八代家の仕事と言えば良いのだろうか。正直あの家はどこまで手を伸ばしているのか知らないし、知りたくもない。

積極的に関わりに行こうとしたら、それこそ底なし沼に足を突っ込むわけで…そんな自滅行為だけはご勘弁だ。大国の公爵家を相手に、一回のヤクザが戦争をできるわけがない。


「ふぅ…まだ動きはないか…」


拳銃の整備が終わり、卓上に拳銃を置くと、部下の一人が声をかける。


「若、流石にこのご時世でリボルバーは如何な物かと…」

「俺はこっちの方が気合が入るんだよ」


いまだに古臭いリボルバー拳銃を使っていることを、昔馴染みの部下に指摘されて軽く言い返す。


「しかし…単純に装弾数の多い銃の方が火力が高いのでは?」

「五月蝿ぇよ。俺がリボルバーが良いんだから。それで良いだろう?」


そう言い、少しだけ楽しくいつも行われている会話をしていると、電話が入る。内線電話だが、それがかかる時は大体そう言う時の事例である。


「俺だ…了解」


短く電話をした後に、受話器を置くとそのままマテバを手に持つ。

その表情はひどく鋭いものとなっており、その顔を見ただけで何が起こったのか部下は理解した。そして武器を手に取る。


「さて、一仕事行きますかね…」


そう呟くと同時に家に振動が響き、至る所から怒声が聞こえた。




ダダダダダァンッ!!


家の前に突撃してきた乗用車と家の前の土嚢から撃ち合いをする銃撃戦が始まり、短機関銃や自動小銃を持って発砲音が響く中。やや重めの銃声が響く。


「うぁっ?!」


その銃声と共に襲撃してきた輩の一人が眉間を綺麗に貫通されてそのまま弾けた柘榴と化す。ピンポイントで撃たれた事に驚いていると、屋敷の奥に現れた裕翔は持っていたマテバを両手で構えて連射する。連続で味方が撃たれた事に警戒心を露わにし、そこで手榴弾を投げる。


「(爆圧型の方ね…)」


投げられた手榴弾の種類を確認するとそのまま持っていたマテバで一発撃つ。すると、発射された弾丸が手榴弾を空中で炸裂させ、爆風が襲いかかった。すると、お返しと言わんばかりに裕翔は置いてあったポテトマッシャーを投げ返すと、前にあった車は爆圧で窓ガラスがひしゃげた。

すると、裕翔はどこから持ってきたか分からない軍刀を抜くと片手に拳銃を持ちながら叫ぶ。


「蛮族を叩き潰せ!!」


そう言い、叫んだ後。裕翔を先頭に突撃を始める。その気配に完全に怯える形で完全に襲ってきた中華マフィアは動きが止まってしまう。

そして、突撃した裕翔は中華マフィアの生き残りの眉間にマテバを押し当てるとそのまま言う。


「さ、ここまで派手にやったんだ。全部聞かせてもらおうか?」


そう言うと、相手は顔から出るもの全て出て失禁までしている始末であった。




数十分後、


「全く、面倒なことしやがって…」


穴の空いた壁を見ながら裕翔は思わずそう溢すと、カツカツと下駄の音が聞こえ、その音を聞き反射的に部下が頭を下げる。裕翔はその方を見ると、やや驚いた様子で話しかけた。


「親父、母さんとモスクワに居るんじゃなかったの?」


そう言うと、目の前にいる裕翔の父であり東照会の今の組長を務める近藤洋一郎が立っていた。


「予定を変えて帰ってみただけだ」

「そうかい…」


慌てて戻ってきたばかりなのか暖かそうな服にロシア帽をかぶっていた。

水面下でロシアンマフィアとやり合っているのに、ロシアに旅行に行くというぶっ飛んだ考え方に裕翔は軽く呆れていた。

すると洋一郎はやや呆れたようにグチャグチャになった玄関を見ながら呟く。


「やれやれ、もう少し静かにやれんのか」


そこで担架に乗せられる部下を見送る。


「仕方ないだろう。こっちから下手に動くよりも来てもらった方がやり易いんだから…」

「しかし、玄関先で撃つ必要あるか?」


そう言うと、洋一郎は裕翔を見ながら確認する。


「…それで?奴さんの居場所は?」

「栃木の山奥の洋館」


すでに場所を突き止めたかと洋一郎は当たり前と言った様子で頷くと、


「やるなら徹底的にやれ。良いな?」

「無論さ。おい!行くぞ」


そう言うと、裕翔は部下を一部引き連れて屋敷の駐車場から車を飛ばし始めた。編成はイタリア製の中古の装甲車三台だ。攻撃力としては十分だろう。






「強襲部隊はどうなっている?!」

「わかりません!通信が切れて詳細は…」

「すぐに逃げろ!」


山奥に建てられた屋敷の中で複数の男たちが慌てて駆け走る。ここはロシアから進出してきたマフィアで、関東圏を支配する東照会にバレないように動いてきた。

上からの指示で国内で薬を売って儲けてこいと言われたので、儲けが出なければ死んでしまうので背中にナイフを突き立てられた状態で動いていたが、流石は日本有数のヤクザ。

気付かれてしまい、この前売人が殺された。その報復として東照会本部に戦闘員を送り込んだがこの有り様だ。

逃げろと言ってもどこに行けば良いかと困惑し、しどろもどろになっていると洋館全体に激しい振動が走った。

もうここまで来たかと慌てて武器を取って、入り口の扉の前で待ち構える。


「…」


一瞬の沈黙が支配した後、扉がロケットランチャーによって丸ごと吹き飛ばされる。その爆発で扉の近くに居たのは全滅、反射的に銃を土煙の向こう側に撃つ。

するとお返しと言わんばかりに機関銃が発射され、土煙の奥から装甲を取り付けた車が突っ込んできた。

そしてそこからどこから仕入れたのかわからないミニミ軽機関銃を発射する。お陰でこっちは血まみれになる。


「くそっ、やっぱり東照会に喧嘩売ったのが間違いだった!!」


そう毒吐くと、銃撃がさらに激しくなる。相手は車に乗った機関銃持ち、火力では圧倒的に負けている。勝てるはずがなかった。


阿鼻叫喚が洋館を包んでいた。






====






翌日


学校の休み中にネットニュースを眺める冬歌はそこで気になるページを見つける。


『静岡の山間で銃撃戦。ロシアンマフィアの抗争か?!』


詳しくニュースを見ると、冬歌は内心軽くため息を吐く。


「(はぁ…派手にやりやがって……)」


少なくとも、これで対外勢力に対する威嚇は出来たかと思いながら連絡を入れる。


「(ただ、これで終わる筈がない)」


少なくとも、冬歌は今回の一件で終わる筈がない。本国にはまだまだ多くの人員が残っているし、彼等が中国から日本に足を伸ばして攻勢を続けているのもまた事実。外国に立地的に近い九州では、多くの銃撃事件が起こっている。いずれは物量に物を言わせて関東に来るだろう。



その時は色々とお世話になるかもしれない。



「はぁ…忙しくなりそう……」


そう呟くと、冬歌は次の移動教室の為に準備をしていた。






====






ロシア連邦で大粛清が起こった事に世界は警戒を抱いた。

あの国の歴史は革命と粛清によって成り立ったと言っても過言ではなく、国境を接している大日本帝国連邦とアメリカはこの動きに警戒心を高め、国境線沿いに軍備増強を行っていた。


そして、抱いていた警戒は現実のものとなった。




一一月七日

カフカス山脈北側よりロシア地上軍砲兵連隊の砲撃を開始。同日、バクー市街地にミサイルが複数着弾。

同日、ダゲスタン軍務省より『アゼルバイジャン共和国の先制攻撃による報復』と発表がされる。


一一月八日

アゼルバイジャン国内に巡航ミサイル総数四八発が着弾。

同日、戦車約一二〇両が国境地帯を越え南下を開始。


一一月一二日

バクー市郊外での戦いにより、総戦車二二三両が激突。

ロシア地上軍の圧勝に終わる。


一一月一七日

アゼルバイジャン陸軍が反抗作戦を開始。

ジョージア共和国が同作戦に賛同を表明。この発表にダゲスタン共和国政府は猛烈に批判をする。


一一月二一日

反抗作戦に出たアゼルバイジャン・ジョージア連合軍は快進撃を続け、全戦線において戦局は優勢に好転。


一一月二五日

アゼルバイジャン・ジョージア連合軍が国境十キロ地点に到達。

同日、アゼルバイジャン政府に停戦要請が入る。


一一月二六日

ダゲスタン共和国政府は停戦を要求し、アゼルバイジャン政府はこれを受諾。停戦条約の締結とともに終戦条約が結ばれる。




国際連盟はこの軍事作戦に対し、ロシア連邦に対し追及。

回答は『これはあくまでもダゲスタン共和国軍司令部独自の軍事行動であり、我々は厳正にこの軍事行動に対し処罰を行う』と発表。

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