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句点1
「打ち砕かれた悲しみは、やがて刹那に成り果て胸の鼓動に突き刺さる。
痛みは幾重にも重なり、心の深淵を侵食する。」
「ナンダこの文章。」
小説投稿サイトに書かれたこの二行に思わずつぶやくと、彼女が反応した。
「先輩、ナンスカ?」
彼女、とはいっても恋愛気分の「カノジョ」ではない。同居する後輩・三行実鈴のことだ。実鈴との付き合いは高校時代からなので、かれこれ十年くらいになるだろうか、二人とも二十代半ばをとうに過ぎたイイ大人であるが、いわゆる男女の関係にはなっていない。
ここは俺が借りているワンルームのロフト付きマンション、狭いけど天井が高く秘密基地的な空間が気に入っていて大学時代からずっと居続けている。そこに三年前、ある理由から仕事を辞めた実鈴が転がり込んできて居付いてしまったわけだ。広めのロフトは、彼女の居住スペースと変わり果てていた。ロフトの階段下の壁際にある机のPCを眺めていた俺が見上げ、ロフトから見おろすかたちで彼女と目線が合った。
「いや、なんでもない。」