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遺書

作者: dook


私が何をしたというのだ

神は、この私を殺そうというのか

この私を

ここまで神を慕い、純真さと誠実さをもって努力してきたこの私が

なぜだ

私は何一つ理解できなかった

まだ善悪の判断がついていない頃、悪魔に救いを求めたのがいけなかったのか

しかしあの時はひどく恥をかき、大衆に私の懺悔を晒され、笑いものにされこそしたが、私は罪を何一つ犯さなかったではないか

ではなんだ

私がルッキズムを嫌いながらも自らがそれに侵されつつあるからいけないのか

しかし、それにも抗ってみせたじゃないか

だったらなんだ

私が躁を抑制できなかったのがいけなかったのか

しかし躁鬱の薬を勝手に処方箋から抜いていたのはあのヤブ医者であって、私はあくまでそれに気づかずに誠実に、この病気と闘おうとしてきたではないか

それでは、睡眠薬のodがいけなかったのか

しかし、それは私に害をなしても他人に迷惑をかけていないではないか

しっかり処方箋を貯めて行ったのであって決して、薬局の薬を買い占めるなんて傍迷惑なことはしていないのだから

神の創造物である人間に害をなした時点で罪だというのか

ああ、本当はわかっている

私の犯した大罪

しかしそれからは目を背けて、他の小さな罪を沢山こうやって挙げて煙に巻こうとしているのだ

ああ、なんて愚かなのだろう

神は全てを見ていたし、全てを知っておられるというのに

私は賭博に大金を注ぎ込み、親の金、友人の金、その他諸々の自分の資産ではない財産を無碍にしたのだ

ああ、こうやって文字に起こすだけでも恥ずかしさと愚かさで消えてしまいたくなる

違うのだ

私は、ただ、躁状態だっただけで…

よく責任能力がなければ人を殺しても無罪放免になるというではないか

だったらこの借金だって無に帰すべきだし、ああそんなことを言って言い訳がましいのも嫌になった

本当はわかっているのだろう

私は私を抑制できない為に私と家族友人に被害を被らせているということに

その罪悪感で押しつぶされてしまいそうなのだ

仮にこの借金を全て返せたとしてもこの罪悪感は消えないだろう

しかし、何度この罪悪感を強く覚えたとしても、ギャンブルをやめることはとうとうできなかった

私は、散々友人に頭を下げて土下座して、謝って、そして100万を借りたとしてもその翌日には預金残高が0になっている

そういう男なのだ

私はこの世界を憎んでいる

私は神を憎んでいる

神は私に死ねと何度も耳元で叫んできたのだ

本当である

私には時折神の声が聞こえるのだ

最近ではその声は大きく、頻度も高くなってきている

その声は私を叱責するものが殆どだが、ここ最近は死ねと直接的な表現をすることが多くなった

私は神にナイフを突き立てられたことがある

現世とあの世との隔たりをトンネル効果で突き抜けて、量子の姿で、しかしはっきりと私には見えた

ナイフは首元1cmもないところにまで来ていた

また、神が私を睨みつけることもしばしばだ

よく人混みに紛れてこちらを睨みつけ、そして、私の醜い姿を見て嘲笑うのだ

私に触れることもしばしばある

自習室で勉強していると足首を掴まれたので驚きながらもゆっくりと足元を見るとそこには何もなかった

私は神の仕業に違いないと確信した

それから、直接神と対話したこともある

深夜、神は目の前に現れた

私が怖気付かないよう、滑稽なアニメキャラクターのような見た目をしていた

私は神に直接私の罪を問うたのだ

それから、神は私に赦しを与えてはくれなかった

結局最後の最後まで、私は罪人のままだったのだ

私は時折過去の累積した罪と、莫大な大きな罪に気が狂いそうになり、周りの人目や自分のキャリアなど、全てを投げ打って叫んで、発狂してしまいたい気持ちになる

実際そうできたらどんなに楽だろう

しかし、私はプライドがすこぶる高いのだ

だから、それすらもプライドが許さない

私は最後の最後まで、健常者のフリをするしかなかったのだ

私はとうとう最後の夜まで本性を露わにはできなかったのだ

私はこの文章を書きながら大量の古い睡眠薬をラムネのようにボリボリと食べている

そして、それらをアブサンで流し込むのだ

これで死ねるかはわからない

医者の友人には最近の薬は特に、死ねないように"工夫"されているなんて言われてしまったが、知らない

これだけ睡眠薬と酒を摂れば、寝ながら嘔吐し、吐瀉物が喉にでも詰まって死ぬだろう

あゝ、さよなら私の憎むべき神よ、友人よ

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