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3-2





 他愛ない話をしながら学院に続く道を歩く。なんだか普通の高校生みたいで嬉しくなる。


 惜しむらくは、今日が入学式だと言うのに、学院までの道のりはすでに2ヶ月以上も通い続けているので、新鮮さに欠けるところだろうか。


 まあ、普通の登校時間に歩くのは初めてで、同じ方向に向かって自分たち以外の生徒が歩っているのは新鮮だった。


「あ、あれじゃない?クラス分け」


 小雪が指差した方に視線を向けると、東さんの身長の倍くらいありそうな高さの掲示板が、これでもかと言うほどに自己主張をしていた。


 掲示板の天井には、『祝ご入学』の文字。さらに枠は紅白にカラーリングされていて、おめでたいと言うよりも、お目々痛いって感じになっている。


「しかも、横にも長い」

「これ、どれだけクラスあるんだろね」


 100m走でもやるのかなってくらいの距離がある。県内の同級生がこんなに入学してきたら、他の高校は大丈夫なのだろうか?


 そう思って一番端のクラス分けをのぞき込むと、『中等部1―A』と書かれていた。どうやら高校1年生だけでなく、様々な学年の生徒が入学してくるようだ。


 ただ、中等部の入学生はほとんどおらず、各学年1クラス程度。中等部2年だけは2クラスあったけど、その程度だった。


 すぐに中等部の掲示板は終わり、高等部のクラス分けが貼られた掲示板が姿を現す。


「ちなみに、私たちは2人とも1-Aだよ」


 高等部の掲示板前に移動したときに、小雪がそう言って指をさした。指の指し示す方に視線を向けると、小雪と俺の名前が仲良く縦並びで続けて書かれていた。


「知ってたんなら、こんな人混みに潜り込まなくても良かったんじゃない?」

「え~、こうやって一緒にクラス分けを見るのも、学生生活の醍醐味じゃないの?私はこういうの、1回やってみたかったんだけど?」


 そういえば小雪は、中学時代に厨二病をこじらせてボッチだったんだっけ。友だちとわいわい言いながらクラス分けを見るのを憧れてても仕方ないか。


 俺たちはAクラスということで、まだ手前の方で確認ができたけど、掲示板はまだまだ奥の方へ続いていた。


そこではかなりの人数がごった返しており、そこへ足を踏み込まなくてすんで良かったと本気で思う。


「ちなみに、同級生は何人くらいいるんだろ」

「この数だからね~。ここからでも終わりが見えないよ。何クラスあるんだろうね?」

「せっかくだから、端っこまで見に行ってみる?」

「うん!」


 というわけで、2人で掲示板巡りをすることに。人混みをかきわけて歩くのは嫌だったので、集団の少し後ろを歩いているのだが、しばらくして早々に知り合いに出くわした。


「な、なぜ僕だけがCクラスなんだあああああぁ」


 よし、見なかったことにしよう。


「待て!中里護!待ってくれぇ」


 いやだよ!こんな人がたくさん見ている前で、四つん這いになって地面を叩きながら叫んでる人に声をかけるのなんか。


「せめて慰めてくれ、友人だろ」


 え?俺と久賀くんって、友だちだったっけ?ただの同中の顔見知りってだけだよね?それに俺は今、ネット上で『BLの守護騎士さま』なんて呼び名でおもちゃにされてるんだ。わざわざ男である久賀くんを慰めて、燃料投下の危険を冒したくはない。


 すでに周囲から視線を感じているんだよ。「やっぱり」とか「トージくんじゃなくてそっち?」みたいな声が聞こえてくるのは気のせいだと思いたい。


「それじゃ、がんばって新しい友だちを作ってね」

「くっそおおおおおおおおぉ!」


 どうかあれが、俺とクラスが離れて悲しんでいると思われませんように。




「でも、どうして久賀くんだけ別のクラスなんだろ」


 仮とは言え、久賀くんは上野さんのバディだったわけだし、刀司たちとパーティを組んでダンジョンにも挑んでいた。


 そんな仲良し4人組をわざわざ1人だけ引き離す意味がわからん。


 どうせまたバディとかパーティを決めるんだから、同じクラスにしとけば楽だろうに。


 まあ、久賀くんはパパの七光りで早期入学して来たり、上野さんとバディを組ませてもらったらしいから、ここらで1回引き離しとくかって大人の思惑があったのかも?


「私たちがAクラスになった理由は聞いてるけどねぇ」

「へぇ、ちゃんと理由があるんだ」

「そうだよぉ。『俺が担任になれば、いつでも訓練できるな!』ってさ」


 担任、東さんかよ!


 あの人に教師とか無理に決まってんじゃん!


 思春期でお年頃な生徒たちの質問に、『ならとりあえず訓練だ!筋肉は大抵のことを解決してくれるぞ!』としか答えねえぞあの人!


 しかも授業中にも訓練する気みたいだし。まさか普通の高校生が学ぶ教科は勉強しない、とかじゃないだろうなこの学院。


「まあまあ、おかげで一緒のクラスになれたんだから、良かったじゃん?」

「まあ、そうだね」


 そんなこと言われたら、文句言えないじゃんか。




 それにしても、Aクラスから始まって、すでにHクラス。1クラス30人みたいだから、ここまでですでに240人もの人数だ。


 さらにその奥まで掲示板は続いているんだけど、Iクラスからは少し様子が変わっていた。


 日本語でも、英語でも無い文字で書かれていて、全く読むことが出来ない。


「あら、おはようございます。マモルさん」

「ラフィさん?」


 ということは、これが異世界の文字なのだろうか?謎表記で記載されているのは、IクラスとJクラスの2クラス分。日本組と異世界組できっちりと分けたようだ。


「私たちフォルティア王国は皆Iクラスというクラスに分けられました。Jクラスには、サランド王国とミサカイ皇国の者が所属するようです」


 水姫さんの地元なだけあって、かなりの人数をこの学院に送り込んだみたいだからな。1クラス丸々フォルティア王国の生徒でも無理はないか。


 いきなり日本と異世界でクラスを一緒にしないのは、様子見といったところなんだろうか?


「このクラス分け、というのは、誰に圧力をかければ変更してもらえるのでしょうか?」

「誰に圧力をかけてもムリだろうね」


 そう言うところが上級貴族のご令嬢ってとこだな。そんな発想そうそう思いつくわけ・・・・・・


「この学院の長を呼べ!なぜこの私がツキヨノ嬢や麗しの君と別のクラスなんだ!せっかく美女に囲まれて楽しい学院ライフというのが満喫できると思ったあああああああぁ!痛い痛い!や、やめよ爺!し、式典の前に痣やこぶなど作るわけにはいかんだろうが!」


 いたわ。特大の阿呆が。


「マサルくん?この前約束したよね?この学院の中では、みんな平等、みんな普通って」

「おお、マモルではないか!貴殿からも学院に文句をつけてくれ!このままでは日本の美しい女性たちとお近づきになれん!」


 そんなこと言ってるから、一番端っこのクラスに振り分けられたんじゃないかな?


 見て見ろよ、その美しい日本の女性たちから、冷ややかな視線を向けられて――――誰だ、王子様×護くんもありねとか言ったやつ!


「やめろマサルくん!俺にひっつかないでくれ」

「冷たいことを言うな!この間あれほど熱く濃厚な時を過ごしたではないか!」

「「「「「きゃ~~~!」」」」」


 周囲が黄色い悲鳴に包まれる。その中に知り合いの声も混ざっていたけど、アナタは俺がそっちの趣味じゃないってわかってますよね?


 アナタが買ったマンガをぶちまけたから、世間から盛大な勘違いをされているんですよ?


「えっと、もし邪魔だったら私、先に教室行ってるよ?」

「やめて!この状態で俺を置いて行かないで!」


 もうこの誤解は解けないのかなぁ。








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