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97話

私は馬鹿だ。

本当に馬鹿だ。

なんであそこに中村に気持ちを伝えてしまったのだろう。

中村が今好きな人がいないといった時に今チャンスがないことぐらいわかっていた。

それでもあの時、溢れる気持ちが止まらなかった。

心の底から後悔しているかといわれたら案外そうでもない。

私は自分を馬鹿な女だとは思っているけど後悔はしていない。

今はよくわからない気持ちだ。


告白がダメだとはわかっていたけど、実際に断られるとくるものはある。

あの時。。。

「鏡さん、ごめん。僕は鏡さんとは付き合えない」

わかっていた言葉だとしても口に出されるのは想像していたものとは全く違う。

よく世の中の女子はあんなに告白をできるものだ。

告白の返事はYESかNOしかない。だかた断れることなんて2分の1の確率なんだから仕方ない。

みんなが告白が上手くいっているなら今頃少子高齢化はなくなっているかもしれない。

でもわかっているけど。。。。

気づけば私の目からは大量の涙が溢れていた。

あぁそうか。

自分の目から溢れているものを実感した時に初めて「振られた」という言葉が現実味を帯びた。


これから中村とどう向き合っていけばいいのか。

今は会いたくないな。

でも他の人たちに気を遣わせるのも嫌だな。

わからない。初めての経験だから何もわからない。

自分の心が黒くなっていくのがわかった。これがネガティブ感情なのかもしれない。

なんかダメだ。。。。

私は道に座り込んだ。


「鏡さん」


誰かが私を呼んでいる気がする


「鏡さん」


うるさい。今は誰とも話したくない


「鏡さん!!!」


「えっ」


その力強い透き通った声に私は意識をはっきりさせた

そして声のする方に振り返ると


「桐生さん?」


私は自分が想像していなかった人物がそこにいて驚いた

桐生さんとは特に2人で話したことはない。

元々接点がないところに、私と桐生さんも文化祭が終わった後にみんなの輪の中に入った感じだったのもあるし、それぞれ違るルートから輪に入ったのもあって深くは話してこなかった。

だから今ここにいて話しかけてきてくれたことに驚きのほうが大きかった


「うん」


「なんで桐生さんがここに?」


「たまたまだよ。ちょっと用事があってそれの帰り」


確かに桐生さんは今日は用事があるといっていたかもしれない


「でもなんてギターをもっているの?」


「それはちょっと用事に必要だったから」


桐生さんがそこにいたことにも驚いたが、それよりも背中に背負っているギターに目がいってしまった。

桐生さんとギターという組み合わせが結びつかないからかもしれない。


「そうなんだ」


ギターを使った用事はなんだろうとは思ったがそれ以上はきなかった

やっていたことを全部話すような関係性でもないし。


「それで鏡さんはどうして泣いていたのかな?」


「な、ないてはいない」


「流石にその顔を見れば泣いていたことぐらいわかるさ」


もしかしたら今の私は相当ひどい顔になっているのかもしれない

一目みただけで泣いているとわかってしまうほどだ

鏡を見たい。。。


「ちょっといろいろあって」


「話せば楽になるかもよ。私は特にとりえがあるわけではないけど話を聞くことがらいはできるから」


普段の私ならここで話すことはなかったのかもしれない

でも今の私はこの気持ちを1人で抱えこむのはきつかった

だからか私は桐生さんに今日の出来事を話していた


「そうか。話してくれてありがとう」


「こちらこそ聞いてくれてありがとうございます」


「それで鏡さんは今後はどうするつもりなのかな?」


「どうするつもり?振られたから終しまいかな」


「本当に終わりにしていいの?」


「これ以上何もなくないかな」


「私は中村の気持ちはわからないし、私も恋愛経験はないからわからないことばかりだよ。でも鏡さんの今の話を聞く限りじゃまだ終わりじゃない可能性もあるんじゃないかなと思ったよ」


「何がいいたいの?」


私はちょっとムキになっていた

振られたのにまだ頑張れなんて無責任じゃないかなって


「だって中村は」


「いやそれはないよ。でも今は自分の周りの環境がすごく変わっていて、それについていくのがやっとで、これに恋愛のことまで考えれる余裕がないんだと思う。今人生で初めて告白してもらってすごく嬉しかったんだけど、それと同時に自分が告白をしてもらえるほどの環境の変化に戸惑っているところもある。決して鏡さんのことが嫌いとかじゃなくて、僕自身の問題です。だからごめんなさい」


「中村は鏡さんのことを嫌いだから断ったわけじゃないんだよね?私も中村の気持ちは少しわかる。自分の環境が変わってしまったらその環境に適用するのに必死でその他のことまで気を回せなくなることは」


「桐生さんもそんなことあるの?」


「私をなんだと思っているのかな?そんなことばかりだよ。私も元々は友達とワイワイする人間ではないし、松岡くんと嶋野さんと話してから私の日常に変化があって、他にも変化はあったんだけど、最近はみんなと一緒にいる時間も増えたけど自分はここにいていいのかなと思ってばかりだよ」


「その気持ちは私もわかる」


「そうゆうものなんだよ。きっとこれは性格だったり性分だったりするのかもしれないけど、最初から複数のことをこなすことができる人間と私たちみたいに一つずつじゃないと上手くやれない人間もいる。きっと私たちはみんな後者の人間なんだと思っている。中村も鏡さんのことが嫌いじゃなくて今は今の自分の環境に適応するのにいっぱいいっぱいなだけなんじゃないかな」


桐生さんの言っていることはその通りだと思う。

私は確かに振られた。

でも中村もはっきりと恋愛まで考える余裕がないといっていた

それなのに私は単純に断られたことしか考えていなかった

私は自分のことしか考えていなかったんだ。中村は中村なりに言葉を選んで返事をしてくれたのに


「私はあきらめないでいいのかな?」


「それは鏡さんが中村とどうなりたい次第だと思う」


「でもやっぱり怖いな。振られるって思っていた以上に心にぐさっとくるものがあったから」


「私からしたら鏡さんは勇気のある子だなと思っている」


「勇気がある子?」


そんなこと初めていわれた


「さっきもいったけど私は恋愛経験がない。でも告白されたことはある。それを毎回断ってきたけど、不安そうな顔で告白してくれる人、決心して告白してくれる子。みんな勇気をもってまっすぐ気持ちを伝えてくれたんだけど。私は気持ちに応えることはできないけど告白は勇気を出してみんなしているんだとは思ってきた。だから中村に面と向かって告白した鏡さんのことを勇気のある子だなと心の底から思うよ」


私は桐生さんの顔をみれなかった

だってこんな恥ずかしいことを普通にいうんだから

ちょっと漫画の主人公みたいだったな。

かっこいいとおもってしまった


「それでも背中を押してほしいなら押すよ」


「どうやって?」


すると隣に置いていたギターを出した


「こうやって」


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