96話
僕は今目の前の女の子が何をいったのか頭で理解できていなかった
「私は中村のことが好き」
確かに鏡さんは今そういった。
「えっと。。。好きって友達として?」
僕は明らかに動揺しながらそう聞き返した
「恋愛的に」
「はい」
正直今の鏡さんの言葉を聞いた後でも鏡さんがいったことの意味が理解できていない。
だって僕なんかのことを鏡さんが好きなんて考えたことがなかった
「ごめん。急なことでなんか頭が追い付いていなくて」
「わかってる。中村が私のことを恋愛的な意味でみていなことは知っている。でも今伝えたかった」
「ありがとう。。。であっているのかな。僕はさっきもいったけど年齢=彼女いない歴で女の子に告白なんかされたことがなくて」
「私も今人生で初めて告白したから、この後どうすればいいのかわからない」
鏡さんは下を向きながらそういった。
僕も鏡さんもこの後の展開がわからずに沈黙が続く。
でも、目の前の女の子が勇気を出して僕なんかに告白してくれて僕はちゃんと答えないといけない
「鏡さん、ごめん。僕は鏡さんとは付き合えない」
「他に好きな人がいるの?」
「いやそれはないよ。でも今は自分の周りの環境がすごく変わっていて、それについていくのがやっとで、これに恋愛のことまで考えれる余裕がないんだと思う。今人生で初めて告白してもらってすごく嬉しかったんだけど、それと同時に自分が告白をしてもらえるほどの環境の変化に戸惑っているところもある。決して鏡さんのことが嫌いとかじゃなくて、僕自身の問題です。だからごめんなさい」
「わかった」
鏡さんは静かに頷いた。
「今日は帰るね」
「えっ」
鏡さんは僕の隣を走り去った。
その時に見えた横顔からは涙が流れているように見えた
僕は自分が出した答えがよかったのかどうか全くわかっていなかった。
急に人生で初めて告白されて動揺しながらも返事をしないとと思い出した答えは
僕にとって最善だったのかはわからない。
でも結局は。。。
鏡さんが返った後、僕は気持ちを少し落ち着かせてさくらさんと冬くんと合流した
「あれ鏡さんは?」
さくらさんは当然の質問をする
「えっと。先に帰るって」
「ふーん。敬都何かしたの?」
「いや。。。」
僕は下を向く
「はぁ~。とりあえずお店に入って話そう」
僕たちはお店に入り、先ほどの出来事を二人に話した
「ふぅん。それで敬都はなんて返事をしたの?」
「お断りしました」
「どうして?」
さくらさんの圧が強くなる
「僕は元々ぼっちで、瑞樹に声をかけてもらってから環境が変わってこうやって友達と遊ぶことができているけど、これに恋愛までってなったら鏡さんのことを傷つけると思ったからです」
「敬都はそれでいいの?」
「それでいいといわれても。。。」
「中村くん」
僕とさくらさんの話を聞いていた冬くんは僕を呼ぶ
「どうしたの冬くん」
「断った本当の理由は別にあるんじゃない?」
「いや、さっき言った通りだよ」
「それならいいんだけど、ならどうしてそんな不安そうな顔と声で話しているの?自分が考えて出した答えだったらそんな不安そうな顔で話さないんじゃないかな。それに普段からおとなしい鏡さんが勇気を出した告白をうわべだけの薄っぺらい答えで返していいの?僕は本音には本音で返すのが一番うれしいけどね」
「私も敬都は本音で話していないと思う。さっきから言い訳みたいなことをいって。本当は別にあるんじゃないの?」
2人ともさっきよりも真剣な表情で声にも力がある。
「僕は自信がないんだよ」
「自信がない?」
2人とも予想外の言葉がでてきたのか少し驚いている
「僕はさっきも言ったけど、元々ぼっちで瑞樹に声をかけてもらって今の環境に入れているけど、今でも自分はここにいていいのかなと思うことばかりで。もちろんみんながそんな思っていないことはわかっているんだよ。瑞樹もさくらさんも嶋野さんも桐生さんも冬くんも鏡さんもみんな僕に優しくしてくれて。でもふと学校で耳を澄ませてみると」
「中村最近調子のっているよな」
「なんであいつがあそこにるんだろうな」
「多分僕が僕を外からみても同じことを思っているんだと思う。瑞樹に見た目を変えて自信をつけていこうと提案してもらって少しずつ変われていると思う。でも僕はまだ変わっている途中で、そんな自分に自信がない男が女の子を幸せにすることなんてできるわけがない。恋愛のことを考える余裕がなかったというのは本当のことで、僕は今自分がいる場所に居続けることだけで精一杯なんだと思う」
気づけば僕は少し泣いていた
「中村くんありがとう話してくれて」
「こちらこそごめん」
「でも中村くん、その自信はいつつくの?」
「えっ?」
「自分に自信がない気持ちはよくわかるよ。僕もこの前の一件があるまで女装して学校にいく勇気はなかったから。松岡くんと中村くんが僕の前に立ってくれて、さくらさんがみんなの前で怒ってくれて背中を押してくれて自信がついたからこうやってみんなと自分のありのままで入れるんだと思う。でも中村くんの自信はいつつくの?」
「それはわからないよ。わかるわけがない。自信なんてどうやってつくかわかればこうやっ手悩むことはないんだから」
「そうだよね。それなら僕は少し冷たい言い方をするね」
「冷たい言い方?」
すると冬くんの雰囲気が少し変わる
「自分に甘えて言い訳ばかりの中村くんはださいよ。僕と中村くんの決定的な差は変わろうと思っている気持ちの大きさなんだよ。中村くんは自分がどうしたいかは一言もいっていないんだよ」
「・・・・」
僕は何も言い返すことができなかった
冬くんのいう通り、さっきいったことを思い返してみると言い訳しかいっていない。
「自信は目に見えないから気持ちの部分が大きいんだと思う。僕は可愛いく在りたいと思って行動していたけど、中村くんは気持ちすら前を向いていないんだよ。だから言い訳ばかりになっているんだよ。そんなんじゃ勇気をだして告白をした鏡さんが可哀そうだよ」
鏡さんが可哀そう。
さっき僕の横を過ぎ去った鏡さんはどんな顔をしていた?
泣いていたのかもしれない。
そうだ。僕は鏡さんを気づ付けてしまったんだ。
冬くんの言葉で自分が浅はかな考えだったことを痛感させられる
「敬都。あんたはちゃんと変われているよ。自分に自信がなくて立ち止まってしまうなら私たちが背中を押すよ。大丈夫、あんたは変われている。私が保証する。私は最初敬都のことを正直知らなったけど、愛ちゃんと瑞樹が付き合って、敬都と仲良くなってから私は敬都と一緒にいたからわかる。一人で隅っこにいた敬都が文化祭では実行委員をするところまで成長しているんだよ。海やゲームセンターで私や鏡さんのことを助けてくれたんだよ。隅っこに1人だった敬都はもういないんだよ。私も恋愛に関してはアドバイスをできるほどの経験していないから何も言えない。敬都が考えて鏡さんと付き合えないと思って断ることに関しては何も言わない。でもそうじゃないならちゃんと向き合って答えを出していいんじゃないかな」
「向き合って考える」
「うん。敬都は鏡さんのこと嫌いじゃないんでしょう?」
「もちろん。嫌いなわけない」
「じゃぁこれから向き合って答えをだしていけばいいさ。だからもう一回ちゃんと本音で話してきなさい」
「はい」
さっきまで下を向いていた僕はいつの間にか前を向いていた。
ちゃんと顔をみて話せていなかったけど
前をみたときの二人は優しく笑っていてくれた
「ありがとう」




