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94話

「お前何者?」


腕を掴まれて痛そうにしているナンパ男は見た目は女の子(中身は男の子)の冬くんの想定外の力に驚いていると


「あなたたちが君可愛いじゃん!!っていっていたのは女の子じゃなくて男ってだけですよ?」


「男?」


「はい。僕は男です。だから女の子に比べて力もあります」


「痛い痛い。。。」


ナンパ男のリアクションをみるからに冬くんの力は普通に強いのだろう。

さっきまで強気だった男は今では膝をついている

すると周りのお客さんが少しづつ何事かと集まり始めていた


「さくらさん行こう!」


「おい、待て!」


冬くんはすぐに私の手をとり走り出した。

私はこうやって冬くんの背中をみるのは2度目だ。

1度目は教室からつれていってもらっとき。あの時の冬くんは男の子の制服だった

そして今日が2度目だ。今回は女の子の恰好をしている

なんか違和感はあるが、やっぱり握られている手は同じで女の子に比べると一回り大きい手をしていた。


「ここまでくれば大丈夫かな」


「冬くん、今回もありがとう」


「いえいえ。トイレから帰ったらさくらさんがナンパされていて驚いて飛び出しちゃいました」


そういって冬くんは笑顔をみせてくれた。


「ごめんね。私ほんとダメダメで。普段はみんなを引っ張っていきますみたいにしているのに、あんな場面になった瞬間弱気になってしまって。夏休みに海に行ったときにナンパされたときも敬都がきてくれて助けてくれて。結局私はただの臆病なダメなやつなんだよ」


「さくらさんはダメなやつじゃないですよ。自分よりも大きい男2人組相手にやり返したりする方が心配になりますよ。さくらさんの反応はごく普通だと僕は思いますよ」


「冬くん。。。」


「それに、もしさくらさんが助けを求めるなら僕たちはいつでも来ますよ。さっきもお見せした通り、僕は見た目は女の子のようにしていますが、中身は男なので力もあります。中学までは普通に男メインで暮らしてきたので筋トレもやっていましたし、お父さんは僕を男として逞しく育てようとしていましたから。だから頼っていいんですよ」


「でも。。。」


下を向くと、私のおでこに痛みがはしる


「いたっ」


顔をあげると冬くんの顔が目の前にあった


「さくらさんはきっと人に頼るのがへたくそなんですね。僕も同じです。今ままで人に頼らずに自分の好きなものは隠して生きてきました。でもお母さんと姉さんたちが理解してくれて、さくらさんや松岡くんたちが僕を認めてくれました。人に頼るのは勇気がいります。自分のダメなところをみせてるような気がしますし。でも頼ってみると自分がみている世界は変わってくるんです。そして今回もう一つ気づけたのが人は頼られないと手を差し伸べることができないんです」


「頼られないと手を差し伸べることができない?」


「はい。さくらさんが弱い部分をみせてくれないと僕たちは手を差し伸べることができません。だって困っていない人に手を差し伸べる必要ないけど。さくらさんも同じじゃないですか?相談されたら考えてあげれるけど、相談されなかったら余計なお世話かもしれないと思って踏み込めない経験ないですか?」


「すごくある」


「そうですよね。僕は自分が頼って助けてもらって気づけました。だからさくらさんもたくさん人に頼っていいんです。さくらさんが頼ってくれれば僕もみんな必ず助けてくれます」


冬くんのいっていることはその通りだと思う。

私は昔から人に頼ることが苦手だ

人に流されるばかりの人生で苦しくなった時も我慢して生きてきた。

それを普通だと勝手に解釈して生きてきた。

でも今の冬くんの言葉でもう少しみんなに頼ってもいいのかもしれないと思った


「冬くんも助けてくれる?」


気づけば私はそういっていた


「もちろんです。助けを求められればすぐに駆け付けます」


あ~だめだ。

この顔を笑顔をみると私の胸はドキドキが止まらなくなる。

これは認めなければいけないかもしれない。

きっと私の冬くんに対しての気持ちは「憧れ」ではなくて「恋」だ。

私は冬くんに恋しているんだと思う。

冬くんは私にはない芯をちゃんと持っている。

そんな冬くんに私は惹かれているんだ。


「さくらさん顔が赤いけど大丈夫」


「ダイジョウブ」


「なんでカタコト?」


ダメだ。自分の気持ちに気づいてしまったから冬くんの顔をみると変に意識してしまう。

でもこの気持ちには蓋をしよう。

今のやりたいことをやれている冬くんにとって私の気持ちは必要はない。

今は一緒にいれるだけでいい。

この何気ない一緒に入れる時間を大切にしよう


「本当に大丈夫。そういえばもうすぐ敬都たちの待ち合わせの時間だからいこうか。変なやつらに絡まれれてお腹すいた」


「確かに。僕もお腹がすきました」


「いこうか」


「はい」



~冬くんサイド~


トイレから出るとさくらさんがナンパ男に絡まれていた。

止めに入ろうと思ったが足が竦んだ。

今までそんな漫画の主人公みたいなことはしたことがないし、僕は今は女装をしている

ここで僕が止めに入れば騒ぎになるかもしれない。

そんなことを考えていると一人の男がさくらさんの腕を掴んだ。

そして嫌がっているさくらさんの顔を見た時に

さっきまでの考えはなくなっていてナンパ男のもとに走って男の腕を掴んだ

僕の力は僕が思っている以上に強かったらしくナンパ男には効果抜群だったらしい。

実はもう少し力を入れようと思えばできたのだが、本当に痛そうだったから僕も少しびびって力をいれなかった 。

最終的には周りに人が集まりだして僕は思わずさくらさんの手を掴んで逃げた。

これでさくらさんの手を取るのは2度目だ。

細くて小さい可愛らしい手。

それに比べて僕の手はまぎれもない男の大きい手だ。

僕はこんな可愛い女の子にたくさん助けられてきた。

だからこれからは僕が少しでもさくらさんたちを助けていければいいと思ったのだった。

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