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93話

「冬くんどこからいく?」


「そうですね。まずは洋服からみていきませんか?」


「了解」


私が今日思い描いていた目標を一気に達成してしまって少し動揺していた。

まさか、来て早々行先があんな綺麗に分かれるとは予想外だった

まぁ改めて考えてみたらそうなるよなとは思ったが。

こうして冬くんと2人で買い物にこれているわけだが、なんだか落ち着かない。

今日の冬くん恰好は女装で可愛いなんだが、なんか見た目は女の子で中身は男の子って考えたら少し異性としてみてしまっている

だって学校であんな堂々と自分をさらけ出していたらかっこいいと思ってしまうのは仕方がないだろう


「さくらさんどうかした?」


そんなことを考えているとすぐ横に冬くんの顔があった


「っっっ!!!」


私はとっさに意味がわからないリアクションをとってしまった


「大丈夫?」


冬くんが心配そうに声をかけてくる


「だ、大丈夫。ちょっと考え事していただけ」


「それならいいけど。早速だけどそこの洋服屋さんみていい?」


「もちろん」


なんとか気持ちを落ち着かせて洋服屋さんに入る


「もう冬のシーズンの服がでているね」


「はい、ここの洋服屋さんは何度かきていて可愛いんですよ」


確かに冬くんがいうようにここの洋服屋さんの服は可愛い。

それに高校生のお財布に優しいお値段になっている


「あっまたきてくれたんですね」


「はい!!ここの洋服可愛いんで」


「ありがとうございます。ゆっくりみていってくださいね」


「ありがとうございます」


「冬くん、ここの店員さんと顔見知りなの?」


「はい、何度かきていたので。あとここの店員さんは僕が男って知っているので来やすいっていうのもあるんですが」


「そうなの?」


お店にきて2回目ぐらいの時かな


「実は僕男なんですが大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ。薄々そうかなと思っていました。スタッフ全員に共有しておきます。それと試着室に入るときなんかはスタッフに声をかけてください」





「ということがあって、最近はジェンダーレスやLGBTなんかの理解度が高まっているのか、男だから女だからってわけないお店も増えてきているみたいです。ただ、それでも一般の普通からしたら特殊ではあるので理解されないパターンもあるんですが」


「そうだよね。もし行きづらいところがあったらいってね。私が一緒に行くから」


「ありがとうございます」


私は何気なく冬くんの話を聞いていることが多いけど、こうやって冬くんのことを一つ一つ知っていけばいくほど、冬くんはいろいろな壁を乗り越えて生きているんだろうなと思う

やっぱりかっこいいんだよね。見た目は可愛いけど


一通り洋服屋さんと化粧品屋さんをみて改めて冬くんの美容知識はすごい。

有名どころのブランドから私が知らないブランドまで商品の特徴まで詳しく説明してくれた

楽しいよりも勉強になった。

これだけで冬くんがどれだけ可愛いが好きでいろんな情報を勉強していたのかわかった。


「ちょっとお手洗いにいってきます」


「わかった。ここで待っておくね」


「ありがとうございます」


トイレはどっちに入るのかな?と興味本位でみていると

冬くんは「共用トイレ」に入っていた。

ここは冬くんなりに気遣いなのかもしれない。

ニュースでみたもので子供でも女子トイレに入るのが嫌だったり女子風呂に入るのが嫌という人がいるらしい。

気にしない人もいれば気にする人もいるのだろう。

いくらLGBTが社会的に認められつつあるかもしれないが完全に認められるのは時間がかかりそうと思ってしまった。


「君可愛いね」


「えっ」


声のする方に振り返ってみるとみるからにチャラそうなお兄さん?が立っていた


「君1人?」


「いえ、2人です」


「その子も女の子?」


「まぁそんなところです」


「いいじゃん。俺らも二人で暇しているんだけど一緒に遊ばない?」


「お断りします」


ここは愛ちゃん方式で行こうと思った。

愛ちゃんといるときもこういったナンパされた経験はある

そのたびに愛ちゃんは一言しか返事をしない


「そんなツレないこと言わずに遊ぼうよ。俺らが楽しいとこに連れて行くから」


「結構です」


「そんな言いつつ遊ぶんでしょ」


いい加減鬱陶しいと思っているともう一人の男が近づいてきて私の腕を掴んだ


「何するんですか?」


「めんどくさいから、このまま連れていこうかなって。俺めちゃくちゃタイプなんだよね」


「何言っているんですか。離してください」


「嫌だ」


私の腕を掴んだその手の力は流石は男といったところで力強くて私の力では振りほどけなかった

振りほどけないと実感した瞬間、私は恐怖心を抱いた

今までもナンパに遭遇することはあったけど、ここまで強引な人はいなかった。


「何しているんですか?」


「はぁ?お前何」


「その人のツレですが何か?」


そこにはトイレから戻ってきた冬くんが立っていた


「君がツレか。てか君も可愛いじゃん。俺らと一緒に遊ぼうよ」


「気持ち悪い。さっさとその手を放してください」


「はぁ何お前調子乗ってんの?」


「いや調子乗っているのあなたたちですよね。その子明らかに嫌がっていますけど。嫌がる女の子連れていこうとして犯罪者ですか?それとも年下に手を出す変態ですか?」


「おまえいわせておけば」


もう一人の男が冬くんの腕を掴みに行った


「冬くん!!」


「さくらさん大丈夫ですよ」


冬くんは掴まれそうになる手を躱し、逆に男の腕を掴んだ


「いたっ。。。。」


冬くんに腕を掴まれた男は予想外の力に驚きを隠せない様子だ




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