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87話

自分の過去を友達に話した。そして自分の人と違う「好き」がクラスの人たちにバレた。

まだ怖さはあるし、いざ考えていることを行動に移そうとするとどうしても足がすくんでしまう。

でも昨日僕の前に松岡くんと中村くんは立ってくれた。

春乃さんは僕のために怒ってくれた。みんなが僕のために行動してくれたのに、僕がびびって行動を起こさないのは単純にカッコ悪い。

僕とお母さんがこの高校を選んだのは男子が女子の制服を着てもいいことを学校が許容しているからだ。

最近の学校では女子がスカートではなくてパンツを履くというのは珍しくなくなってきているが、逆は少なかったりする。でもこの青和春歌せいわしゅんか高校は大丈夫だった。

でも実際に転校してみるとやはりためらってしまっていた。

自分はどのような目を向けられるのだろう。

自分は受け入れられるのだろうか

そんなことを考えていると男子の制服を着ていた。

せっかくお母さんや姉さんたちが僕のためを思ってこの環境を選んでくれていたのに自分が情けないと思っていたが、そんな情けない自分とはお別れだ。

今日から僕は本当にやりたいように生きる。



「冬くん今日来れるかな」


さくらさんは昨日の今日で冬くんが学校にこれるか不安みたいだ。

昨日冬くんの家から帰るとき


「明日学校で」

とはいっていたけど、あんな騒ぎになった後で学校にくるのは誰だって躊躇うだろう。


「どうだろう」


騒ぎの中心にいた村野と大村は2人で何か話しているようだ。

気のせいか顔に覇気がないような気がするが。


「来てくれるといいね」


「来るよ」


愛が断言する


「その根拠は?」


俺は質問する


「女の勘」


「な、なるほど」


なんかすごい説得力があるけどどうだろうか


「ほら、みっちゃんきたよ」


「えっ」


愛の方をみると少し微笑んでいるように見える

視線の先を見ると

教室の扉の所に冬くんが立っていた。

しかし冬くんは初めてゲームセンターであった時の女子高生の恰好で登校していた

冬くんはまっすぐこちらに歩いてくる


「お、おはよう」


少し照れながら挨拶してくれる

あれれ。なんかキュンときているのは気のせいだろうか

隣をみると愛がにらみを利かせてきている

いや、確かにキュンときてしまったけど、相手男だからね

とは今のタイミングでは言わなかった


「おはよう冬くん」


「冬くん。。。」


さくらさんは少し不安そうに冬くんに近づく


「春乃さんおはよう」


その不安を払しょくするかのように冬くんはさくらさんに笑顔で挨拶をした

さくらさんもその笑顔をみて安心したのか


「うん!おはよう」


いつものように挨拶した

そのあとは少し予想外のことが起きた

学校に女装してきた冬くんはクラスの女子たちの人気が急上昇していた


「そのコスメどこの使っているの?」


「ウィッグすごく綺麗」


「制服似合っているね」


俺から見ても冬くんの女装はすごく可愛いし化粧も上手だと思う

多分SNSの写真だけでみたら普通に女性にしか見えないだろう

今時の女子高生からしたらお手本みたいな存在なのかもしれない

前に職場体験でいった美容室の山田さんがいっていたことだが


「世の中で美容で最強な人が誰かわかるか?」


山田さんは唐突にそんなことをきいてきた


「女子高生?」


「女子高生もある意味最強だが、俺が思う美容系で最強なのはオネェみたいな人たちだ。女性よりも女性らしくいようとしているのは本当にすごい。考えてみろ。俺たち男が女性らしくみてもらうためにはちょっとしたことを変えるだけでは無理なんだ。男を消すために女性よりも女性を強く表に出す必要がある。それをやっているあの人たちは本当にすごいんだ」


山田さんはオネェという表現をしていたが、要するに女装もかけ離れてはいないと思う。男性が「可愛く」なるために女性らしさを身に着けていく。確かに山田さんが言っていたように冬くんはすごく自然に可愛い。男性らしさが消えていて女性らしさしかないからだろう。


「しかもこれも余談だが、女性にたいして「ブサイク」「可愛くない」とかを言えるのもオネェだけだったりする。女性よりも女性を追求している人だからこそ言えることもあるんだ。俺たち男は口が裂けても言えないし、女性同士でもいろいろなものを失ってしまうリスクがあるかならな」


それもそうかもしれない。

テレビでマツコ・デラックスさんが女性に対して「あんたブサイクね」とかいっているのを見たことがあるかもしれない。IKKOさんは美容業界ではかなりすごい人らしいし。山田さんがいっていことは信ぴょう性がある。

まぁ自分が今見ているこの光景をみたら山田さんの言葉には説得力しかないんだけど。

にしても可愛い話をしている冬くんはすごく幸せそうだ。

よかった。

クラスの男子も昨日までは完全な男だった冬くんが急に可愛くなって登校してきたからなんか落ち着かない感じになっている。

村野と大村は口をポカンとあけて言葉がでないようだ。

それもそのはず、自分が散々いじっていた相手がめちゃくちゃ可愛くなって学校にきているんだから。


「冬くん幸せそう」


さくらさんも安心と喜びに満ちたような顔で冬くんの笑顔を見守っている


「そうだね」


「お前ら席につけ~」


先生が教室に入ってくる


「今日の連絡事項だが」


「先生冬くんに対するいうことはないの?」


1人の女子生徒が先生に質問する


「えっなんで?」


先生は普通になんで?という表情をしている


「だって昨日までと全然違うから」


「あ~そのことね。うちの学校が男女の制服が自由なのは知っているよな?元々苑田は学校に面談に来た時に今の格好で来ていたからな。流石に最初にみたときは「男?」ってなってしまったが。でも俺としては教室に来た時に男子の制服をきていたことに対しての驚きの方が大きかったぞ。だって女子の制服を着ているときが最初で男子の制服を着ている姿をみたことがなかったからな。はははは」


この先生いつも適当なのに言っていることは正論なのが不思議だ


「苑田、そっちのほうが俺はいいと思うぞ」


「あ、ありがとうございます」


「冬くん、あの先生は変態かもしれないから気を付けてね」


「おい春乃、なんかひどくねぇか」


「防犯対策です」


「俺は不審者かなにかかな」


教室に笑いが響く

冬くんの勇気を出した一歩は確実にプラスに動いたのはこの教室の雰囲気をみれば間違いないだろう。


「みっちゃんよかったね」


「うん」



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