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86話

冬くんの話を聞き終えた二人は少し涙をこぼしながら俺たちに感謝の言葉をくれた


「みんなありがとう。冬くんのために動いてくれて。特に春乃さん、冬くんために怒ってくれてありがとう。クラスの中で自分の感情を出すのは怖かったでしょう」


「私は、自分の感情のままに動きましたが、逆にそれが冬くんの今後の教室での居心地を悪くさせてしまったんではないかと思う部分もあって申し訳なさがすごいです」


さくらさんが下を向くと冬くんのお姉さんがさくらさんを抱きしめた


「大丈夫」


「。。。」


「春乃さんが冬くんのために動いて怒ってくれたことは絶対に間違っていない。あなたの行動は「後悔」することも「恥じる」こともない。行動を起こした「あなたの勇気」をもっと褒めるべきだよ。私もお母さんも冬くんが自分を出すことに不安がなかったわけではない。人と違う趣味を表に出すことで「反発」や「軽蔑」は起こりうると思っている。でも今日春乃さんたちが動いてくれたことによって冬くんはまた前に進めるんだよ。だから自分の行動を誇ってあげて」


「ありがとうございます」


さくらさんはお姉さんの胸の中で涙を流した


「松岡くんと嶋野さんもありがとう」


冬くんのお母さんは俺たちに正面から感謝の気持ちを言葉にした


「私たちは小さいころから冬くんが自分の好きを隠して我慢して生きていることにもどかしさを感じていた。冬くんの父親のなってほしい息子像があまりに現実の冬くんとかけ離れていたから冬くんを自由にさせてあげたいと思って今の道を選んだ。二人の娘も冬くんの人生を尊重してくれたし応援してくれたから。でも不安がなかったかと聞かれたら嘘になる。春香もいっていたけど、人と違うというのは「普通」ではないってことになる。「普通」は誰が決めたわけではないけど、どうしても普通と違うは浮いてしまうの。だから冬くんの進もうとしている道は茨の道にもなる可能性があるのに母親である私が背中を押すのは正解なのかなと考えてしまったことはある」



「お母さん。。。」



「でも、今日初めて冬くんが「友達」を私に紹介してくれた。しかもその「友達」は自分の過去も現在も知っている。って言葉を聞いたときに本当に嬉しかった。正解だったかは今はまだわからないけど、少なくともこっちに引っ越してきてあなたたちに出会えたことは冬くんにとって絶対によかったと思える。だって冬くんのこんな顔久しぶりにみた気がする。いつもどこか我慢して遠慮していたのに自信を持って友達を紹介してくれたんだから」


「お母さん。僕はもう大丈夫だと思う。自分を出せる友達ができた。クラスメイトにも全部バレた。だからといって自分の好きをあきらめようとは思わない。改めてお母さんも姉さんもありがとう。僕に自由と選択肢を与えてくれて」


「やめてよ」


「もう冬くんったら」


冬くんのお母さんとお姉さんの目からは涙が流れていた


そのあとはお姉さんも交えて冬くんの部屋でメイク談話になり俺は一人完全に浮いていた。

途中冬くんから

「松岡くんもメイクしてみない?」


「えっ俺?」


「いいじゃん瑞樹もやってみなよ」


「私もみっちゃんの可愛いのみてみたい」


「まぁいいけど」


「そうこなくっちゃ」


冬くんはすぐに自分のメイクボックスを出して俺の前髪をピンでとめてメイクを始めた

メイクする動作は流石の一言でyoutubeでみていたメイク動画みているような気分になった

メイクを初めて5分ぐらいすると


「できた。どう?」


冬くんが出してくれた鏡に自分をみると


「えっ誰?」


そこには自分とは思えない松岡瑞樹ちゃんがいた。

そして改めてメイク怖いなと思ってしまった。

もしこの写真だけでSNSの載せたら普通に女の子として認識されるんではないかな


「みっちゃん可愛い」


「瑞樹いいじゃん」


「松岡くん似合っているよ」


3人の評価はかなり高かった

特に俺の彼女は反応がすごい


「みっちゃん写真撮っていい?」


「いいけど」


「普通にセットして決めているときはかなりかっこよくなるし、メイクしたら可愛くなるってみっちゃん天才なの?神なの?一生推します」


「ちょっと落ち着こうか」


「嶋野さんってイメージと全く違って驚きがでかいんだけど」


お姉さんが呟く


「愛ちゃんは瑞樹の前だといつもあんな感じなんです。瑞樹と付き合う前までは才色兼備で完璧な女の子ってイメージだったんですけどね。なんか最近はそのイメージすら変わりつつあって。瑞樹の守り神みたいになっていますね。」


「確かに僕も嶋野さんがこんな可愛い感じだって想像もつかなかったですね。でも松岡くんと一緒にいるときの嶋野さんの方が僕がいいと思いますが」


「まぁ冬くんの言っていることもわかるけど、あんま目の前で熱々なところ見せられるとこっちが恥ずかしくなるというか」


「青春だね~~~」


「なんか姉さん、おぼさんみたいなこと言っているよ」


「大学生からしたら高校生は「若者」なの。高校生をみていると私は枯れていた何かを潤ったような気がする」


「そういえば姉さん彼氏は?」


「冬くん?それはわざと言っているのかな?」


「いえ」


お姉さんの圧に今後は冬くんが黙る。

姉弟って面白い。

今度秋野ちゃんも帰ってきたときにみんなを招待してご飯食べましょう。


「それならみんなでBBQしたい」


「春乃さんいいね。なら今後みんなでBBQしよう」


「やったぁ。楽しみ」


3人でいろいろと盛り上がるのはいいんだけど


「ねぇ愛のこと止めてくれませんか?」


愛の写真撮影会が止まらず俺は疲れていた


「あらあら。嶋野さんその辺してあげて。最後に二人で写真撮ってあげるから」


「はい!」


お姉さんは俺たちの写真を撮ってくれて愛の興奮は落ち着いたのだった。

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