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67話

「おかえり」


「「ただいま」」


家に着くと母さんが俺たちのことを出迎えてくれた。

母さんの愛に対する接し方は真紀と同じように自分の娘のような感じだ。

それを愛も感じているのか自然と「ただいま」が口から出ている。

多分本人は気づいていないかもしれないけど、愛が最初に母さんと父さんにあったときには想像がつかなかったことだと思う。


「真奈ちゃん、愛ちゃんに今からご両親に電話してもらおうと思うけどどうかな?」


「私もそれがいいと思う。ご両親とはどのくらい連絡をとりあっているの?」


「昔は少し多めに連絡をとっていましたが、中学を卒業したあたりから年に数回といった感じです」


「そうなのね。それなら急に話せってなっても緊張してしまうわよね」


「内容が重めですし、緊張はしますね」


それなら愛ちゃんとご両親には悪いとは思うけど、スピーカーで電話してもらって愛ちゃんが説明が難しくなったら俊哉さんに代わるって感じでどうかしら?」


「僕はそれでいいよ」


「助かります。ありがとうございます」


「それより今から電話かけて大丈夫なのかしら」


「それは大丈夫だと思います。基本電話は持ち歩いているので出れるタイミングだったら出ると思います」


「よし、じゃぁ着替えをすませてから電話かけようか」


「はい」


年に数回程度しか連絡をとりあわないは嶋野家では普通のことなのかもしれないが、おそらく世の中的にみたら普通ではないだろう。

しかも一人娘がこっちにいるとしたらうちの両親だったら小まめに連絡をしてきて「返事がだるい」って言ってそうな自分が想像つく。

愛の両親はうちの両親とは全く違うタイプの親なんだろう。

家庭によってそれぞれ方針が違うのは理解できるが、俺の悪い想像通りだとすると愛はまた辛くなるのかもしれない。

愛が浴衣から部屋着に着替えてきたところで両親に電話を掛けた

電話をかけて3コール目で「呼び出し」から「通話」になった


「もしもし」


「はい」


愛の母親の電話は久しぶりに娘と話す声ではなかった


「今いいでしょうか?」


「忙しいから手短にお願い」


「はい。結論から話すとお祖母ちゃんが脳梗塞で倒れて記憶障害を起こして私のことも覚えていない状態です」


「。。。。。そう」


少しの沈黙の後、愛の母親は短く返事をした


「あの人もまだ70代だからもう少し元気でいてくれるとは思っていたけど、なってしまったものは仕方ないわね。あなたはどうすの?」


そして愛の母親から出てきた言葉はそっけない言葉だった。

その言葉には愛もショックを受けたのか泣きそうな顔になっている


「まだ何も考えていません」


「私もあの人もそっちには帰れないし、あなたも今年で何歳になるんだっけ」


「17歳です」


「それなら1人でもやっていけるわね。口座には毎月20万円ぐらい入れておけば大丈夫でしょう。もし足りなくなったりお金が必要になったら連絡してくれれば口座に振り込んでおくから」


「はい」


愛には悪いけどすごく冷たい母親だと思った

娘が大変なのは想像がつくだろう。でも自分は帰らないからお金だけを振り込んでおけばいいという愛のことを本当に考えているとは到底思えなかった。

これが愛と母親の関係性であり、距離なんだろう。


「じぁあまだ仕事中だから切るわ。またなんかあればメッセージにいれてもらえばこっちで対処するから」


「わかった」


愛が電話を切ろうとすると


「待ってください」


父さんが電話に向かって声をかけた


「あなたは?」


愛の母親は特に驚いたそぶりをみせずに父さんの声に応える


「愛ちゃんがお付き合いしている松岡瑞樹の父、松岡俊哉と申します」


「あの子にもお付き合いしている人がいるのね。それで何か御用ですか?」


「愛ちゃんにかける言葉はそれだけでいいんですか?」


「何がいいたいの?私たちの関係性は昔も今こんな感じよ」


「僕は子育てに正解はないと思っていますし、嶋野さんの子育てに対する考え方を否定するつもりは全くありません。それはご家庭の事情があり、仕事の事情があるので人それぞれだと思うから」


「それじゃぁ松岡さんは私に何をいいたいんでしょうか?」


「正解はわかりませんが、不正解はわかります」


「私の子育てが間違っているといいたいの?今あなたが否定するつもりはないといったじゃない」


「いえいえ。僕は嶋野さんの子育てを否定するつもりはありません。でも、自分の娘にこんな顔させる子育ては間違っている」


「・・・・・」


「嶋野さん。あなたは今の愛ちゃんがどんな顔をしているのかわかりますか?お祖母ちゃんが倒れて、自分のことを覚えていない現実と向き合い。そして母親からも突き放される。確かに17歳は大人に近い年齢かもしれませんが、僕たちからしたらまだ17歳なんです。多感な時期でもろくて折れやすい。そんな娘さんの今の顔をあなたはわかりますか?」


「・・・・・」


「わかりませんよね。今にも泣きだしそうな顔をしているんです。それは愛ちゃんが未熟だからではなくて、まだ17歳の女の子なんです。この子たちにはまだ大人の支えが必要なんです」


「それでも私たちはそっちには戻れない」


「それはわかります。今までの話を聞いている限りでもそうだろうなと思っています。だから愛ちゃんのことは僕たちが責任をもって面倒見ていきます」


「あなたたちが?」


「嶋野さんができないなら僕たちがやります。僕たちは嶋野さんよりも今の愛ちゃんを知っていると思います。愛ちゃんはすごく優しくていい子に育っています。そして愛ちゃんのことを娘みたいに感じています」


俊哉さん。。。

愛は父さんの言葉で耐えていた涙がこぼれ落ちる


「その子のことお願いします」


愛の母親は少し考えて父さんにそういった。


「わかりました」


父さんのその言葉に応える


「あなたもそれでいい?」


「うん」


「そう。わかった。お金は毎月振り込むから」


「わかった」


「じゃぁきるわ」


「ちょっと待ってください」


愛の母親が電話を切ろうとすると今度は母さんが話しかけた


「まだなにか?」


「私は松岡瑞樹の母の松岡真奈です。嶋野さんの連絡先を聞いておきたいなと思って」


「連絡先?」


「はい。俊哉さんが言った言葉はすごく正しいと思います。愛ちゃんにこんな顔をさせるのは絶対に正しくない。でもあなたは愛ちゃんに対して何も思っていないとは私には思えない。だから愛ちゃんの状況は私が嶋野さんに報告します。愛ちゃんもそれでいい?母親にしかわからないこともあるしね」


「はい」


「嶋野さんもそれでいいですか?」


「好きにしてください」


最期の母さんに対する声は今日の中で一番明るく聞こえた

親子の関係性、距離はそれぞれだと思う。

愛の母親もどこかでは愛のことを心配しているのかもしれない

でも時間と距離が空きすぎたせいでわからなくなっているのかもしれないと

最期の言葉をきいて思った

そして短くて長い電話が終わった


「愛ちゃん突然ごめんね」


父さんが愛に謝る


「こちらこそありがとうございました」


「それで俊哉さん、愛ちゃんのことを面倒みると啖呵切ったけど考えはあるの?」


「あるよ」

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