65話
先生と話した後、家につくまでの間、自分が愛にしてやれることを考えた。
「大事な人からも逃げるのか」
あの言葉俺にとってクリティカルヒットしたかもしれない。
自分は一番大事な愛と向き合うことからも逃げていて。
昔と今で何も変わっていないのかもしれない。でも今変わらないといけないとも思った。
愛が辛い思いをしている。それを彼氏である自分が支えることもできないなんてダサすぎる。
そしてふと思い出す。
「この祭りに一緒に行かない?」
愛が病院から電話がかかってくる前に話していた内容だ。
あの祭りは大きくてまだ時期じゃないけど、他にも祭りはあるかもしれないと思ってネットで検索してみると隣町の祭りが明日あることを知った。
これに愛と行こうと思った。
家に帰って愛の部屋の前に立つ
ノックをしようと思っても手が進まない。
ここにきて自分の臆病さが情けないと思う。
少し時間はかかってしまったが部屋をノックした
「はい」
部屋の中から愛の返事が聞こえる
「愛、俺だけど入っていい?」
「うん」
「じゃぁ入るね」
部屋に入ると、最初に部屋に案内した時と物の配置が換わっておらず、愛はベットの上で壁に寄り掛かって座っていた。
顔色は最初に比べたらまだましにはなっているけど完全に戻ったわけではない。
「少しは落ち着いた」
「うん。最初に比べると落ち着いたかな」
「それはよかった」
「。。。。。」
部屋に沈黙が流れる
「愛?」
「なに?」
「明日隣町にあるお祭りにいかない」
「祭り?」
愛は少し驚いた顔をしている
「愛が今そんな気分じゃないのはわかっている。でもこんなときだからこそどこかにいって気分転換するのもいいかなと思って」
「私いつもみたいにできるかわからないよ。今でも時々涙が出そうになるの」
俺は愛を抱きしめる
「大丈夫だよ。愛はありのままでいいんだよ」
「みっちゃん。。。」
「だからお祭りにいこう」
「うん」
その日の夜に家族でご飯を食べているときに
「明日隣町である祭りにいってきていいかな?」
「いっておいで」
母さんの返事は即答だった
「え~。私もいきたい」
「真紀はいくなら友達誘ってからいきなさい。瑞樹と愛ちゃんの邪魔なだけよ」
「なんか私の扱い雑じゃない」
「中学3年生になってお兄ちゃんと祭りにいくより友達と行きなさいっていう母親は普通だと思うのだけど」
「それでも雑だよね」
「2人と落ち着いて」
父さんの言葉で2人は静かになる
これも松岡家のいつもの日常だ
「真紀も一緒にいってくれる友達がいればいっておいで、帰りは父さんが迎えに行けると思うから」
「そんなの悪いよ」
「俊哉さんがきてくれるっていってるんだから甘えときなさい。いい父親って感じで話しているけど、単純に夜にあなたたちを帰ってこさせるのが心配なのよ。愛ちゃん可愛いし」
「私は?」
「変なナンパ男が狙うなら幼顔の真紀よりも愛ちゃんでしょ」
「なんかムカつく」
「2人とも?」
「「はい」」
「ならお願いします」
「帰る30分前ぐらいに連絡してくれればいいから」
「わかった」
「そうだ!!」
「どうしたの?」
「私の浴衣があるんだけど愛ちゃん着てみない?」
「浴衣ですか?」
「そう。私の母が浴衣とか集める人だったからおさがりが何枚かあるのよ。真紀にも着せたことがあるけど、愛ちゃんも絶対に似合うと思うの」
確かにうちには浴衣が何枚もあるのを見たことがある。
前に真紀がファッションショーを家で開催していた。
「着てみたら?」
俺は愛に浴衣をすすめる。
気分も上がるだろうし、単純に愛の浴衣姿をみてみたいという気持ちもある。
愛は少し考えて
「みっちゃんがみたいというなら」
「なんか変な聞こえ方がするのは気のせいかな」
「お兄ちゃんエッチ」
「なんでだよ」
「明日私は夕方前には帰ってくるから浴衣の気付けは任せて」
「はい」
明日の祭りにいくことが決まった。
結局真紀もいつもの親友と一緒にいくことになり。
2人とも浴衣を着て祭りにいくことになった。




