57話
「みっちゃんいこう」
「ああ、うん」
俺は愛に手を引かれて走り出す。
目の前には無限に広がる海、周りを見るとビキニのお姉さんから細マッチョ、太マッチョ。
俺と敬都みたいな色白ホソガリは場違いのような場所に俺たちは来ていた。
そう海水浴だ。
なんで俺たちみたいな基本インドア系の陰キャがこんな陽キャのアウトドアの定番のような場所にいるのかというと。
夏休み前にさかのぼる。
文化祭の打ち上げてさくらさんが
「せっかく仲良くなれたんだからこの6人で夏休みにどこかにいこう」
そういって6人のラインを作っていたところで終わっていると。
夏休みが始まると同時にさくらさんから
「みんなで宿題をやろう」
という連絡がきた。
さくらさんの陽キャパワーを断れる人は俺たち5人の中にはおらず
宿題をする会が開催されることになった。
しかも場所は松岡家に決まった。
まぁ親も日中はいないし、家は比較的大きい方なので6人で勉強するぐらいのスペースはある。
そうゆう感じで松岡家に男2と女4(そのうちの3人はクラスTOP3の女子と文化祭から人気急上昇中の鏡さん)が家にきた。
愛が家に来た時だけでもはしゃいでいた妹の真紀は
「お兄ちゃん、なんか愛ちゃん以外の美女がいっぱい家にきたんだけど」
「あぁ。なんでこうなったんだろうな」
「なにそれ、お兄ちゃんって実はモテるの?」
「真紀ちゃん、みっちゃんは私からしかモテてないよ」
「愛ちゃん!!でも可愛い人たちがお家にこんなにきているんだよ?お兄ちゃんにモテ期がきたんじゃないかと妹は思うんです」
「大丈夫。みっちゃんは私以外からのモテ期はこないから安心して」
「あっはい」
先ほどまでの勢いは愛の怖い威圧によってすぐに沈下されて、いつものテンションに戻った
「真紀も夏休みの宿題するなら一緒にするか」
「私もいいの?」
「一応俺たちの学校偏差値は高い方だし、今日来ている女子メンツはみんな頭いいから勉強でわからないところは教えてもらえるぞ」
「本当に?今日は予定ないし私もお邪魔します」
「喜んで」
「やったぁ。愛ちゃんぎゅー」
「ぎゅー」
俺からしたら愛と真紀のいつ8もの光景だ
「愛ちゃんが瑞樹以外にあんなに可愛い姿を見せているとは」
「嶋野さんと仲良くなれればあんなスキンシップもできるのだろうか」
「愛様天使。今日で死ねる」
1人は嫉妬、1人は顔はクールなのに言っていることちょっとあほっぽい、1人はオタク。
こうみたら学校での顔と違いすぎて面白くなってくる
そして隣を見ると3人のスタッフみたいな敬都が立っていた
「おはよう、敬都」
「おはよう瑞樹」
「どうした?なんか顔疲れていないか?」
「僕みたいな陰キャがあの3人と一緒に歩いているところを想像してごらん」
「なるほど」
ただでさえさくらさんと桐生さんは目立つし、鏡さんも一緒にいて見劣らないぐらいの別の可愛さがある。その中に陰キャ敬都が混じっていると視線は間違いなく敬都に向くのだろう
その視線を朝から浴び続けていた疲れが顔に出ているようだ
「早速宿題しようか」
「それよりなんで突然宿題?」
「私は宿題を一人でしようとしたら最終日まで終わらない性格だから」
「まさかのさくらさんの個人的な問題にみんな付き合わされた」
「へへへ。まぁまぁ。せっかくなら夏休みの計画も立てたいし、高校生活で夏休みは今年も入れればあと2回。楽しまないと損でしょ」
「確かにそうだね」
担任の先生が夏休みに入る前にいっていた
「お前たち、夏休みはな大学生にいくやつは4年間あるが、高校卒業して就職するやつはこんなに長い長期休暇は人生でほぼないんだ。社会人になって学生並みの夏休みがあるやつは仕事をしていないやつだろう。先生もお前たちみたいに夏休みを40日ぐらいほしいが無理だ。だから羨ましい。何が言いたいかわかるか?学生の夏休みはとにかく楽しめ。そして問題を起こして俺の仕事を増やすな絶対。もし夏休み期間に問題を起こして俺の仕事が増えた場合、2学期の宿題は1.5割増しになると思っておけ。連帯責任だ。」
最期の方はひがみの方が前に出ていた感じだったが、途中までは言っていることは正しいなと思う。
両親も前に同じことを言っていた。社会人になるとこんなみんなが予定を合わせて集まる機会もなかなか難しいのかもしれない。
「それに」
「それに?」
「可愛い子たちの私服姿を拝めるだけだけでも役得でしょ」
「それは間違いない」
愛とさくらさんの私服姿はみたことがあるが、桐生さんと鏡さんの私服姿は初めて見た。
2人ともらしい服装ですごく似合っていると思う
「みっちゃん、他の子みすぎだよ」
「そんなことないよ。今日も愛の私服姿が可愛いなと思って」
「へへへ。今日もみっちゃんにみせるために悩んできたからね」
「すごく似合っている!!」
「みっちゃんは髪の毛とかはいつも通りだね」
「家で宿題するのにはりきってもね」
「かっこいいのに」
「そんないってくれるのは愛だけだよ」
宿題は思っていた以上にはかどった。
というか俺と敬都と鏡さん、そして真紀の勉強苦手組に対しての
先生たちのスペックが高すぎてわからないところで立ち止まることなく進むことができた。
一人では宿題が捗らないといっていたさくらさんの集中力はすごく一日で半分ぐらい進んだと思う。
逆に家でどれだけ集中力がないんだろうと心の中で思ったがいわなかった。
「天音さん、ここってどうすればいいですか?」
予想外だったのが真紀と桐生さんが意気投合していたことだった。
最初はお互い人見知りが出ていたが、次第に慣れてきて真紀がわからないところで詰まっているところに
「どこがわからないの?」
と桐生さんが話しかけてくれたところから一気に打ち明けた。
途中からは真紀ちゃんと天音さんと名前呼びに変わっていた。
さくらさんが桐生さんに対して
「私も真紀ちゃんと仲良くなりたい」とつぶやいていたが
陽キャのさくらさんのテンションよりもクールな桐生さんのテンションの方が
真紀にはあっているらしく桐生さんの方になついたようだ
帰りには連絡先を交換していた。
勉強会が夕方になってくるとさくらさんが突然
「海に行きたい」と言い出した。
打ち上げのとき、今回の勉強会のときとさくらさんってこんな提案型だったんだ
「海ねぇ~」
「なにその反応、みんなはどう?」
「・・・・」
「ノリが悪い!!」
すると敬都が話だす
「行きたいか行きたくないかと言われたら行きたくないけど、それよりもこのメンツで海に行ったら」
「このメンツで海に行ったら?」
「多分僕と瑞樹は嫉妬という視線に刺されまくるんじゃないかなと」
「なんで?」
「それは」
「愛様をはじめ、桐生さんも春乃さんも美人でルックスもいいし、海に行ったら目立つってこの陰キャは言いたいんじゃないかしら」
「最後の陰キャは余計だけど内容はあっている」
敬都に援護射撃をしたのは鏡さんだった
でも敬都と鏡さんがいっていることはその通りでこのメンツで海はとにかく目立つ。
最早俺と敬都はこの人たちのボディガード的な役割でいかないといけないかもしれない。(全く役には立たないが)
「瑞樹もそう思う?」
「そう思う」
「そっかぁ」
さくらさんは明らかに落ち込む。
敬都と鏡さんがいっていたことはその通りだと思うけど、このメンツで海に行くのも楽しいかもと思ってしまった。
これは今まで夏休みに友達と遊びに行くみたいな経験があまりなくて、単純に憧れていたからかもしれない。
それでも担任がいっていたように高校生の夏休みは今年入れてあと2回。
「なら、人が少ないプライベートビーチ的なところならどうかな?あるかわからないけど」
「なるほど。それなら人も少なくてゆっくり楽しめるかもね。私も人が多いのは得意じゃないんだよ」
「みっちゃんがいうなら私はどこでもいいよ」
俺の提案に桐生さんと愛が乗ってきてくれる
「プライベートビーチか。探してみる」
そしてさくらさんが人が少ない海水浴場を探してくれて今に至る。
「みっちゃん海にきたのいつぶり?」
「多分小学生のときに親ときたときいらいじゃないかな」
「私は初めて」
「初めてなの?」
「うん。だから楽しい」
「それならよかった」
楽しそうに海に入る愛に続いて久しぶりに海に足をつける。
久しぶりに入った海の水はちょっと冷たかった。




