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50話

「敬都さん敬都さん」


「どうした瑞樹さんや」


「なぜかはわからないが鏡さんから殺意のこもった視線を向けられているんだが」


衣装班になった俺たちは今日も作業をしていたんだが、先ほどから明らかに殺意のこもった視線を鏡朱里さんから受けている。

今までも殺意のこもった視線は受けていたが、鏡さんのはすごくストレートに向けられている感じだ。


「あ~。それは気にしなくていいんじゃないかな」


「気にしなくていいの?」


「なんか鏡さん、嶋野さんの大ファンらしいよ」


「ファン?」


「そう。しかも熱烈なやつ」


確かに愛は学校で男女問わず人気が高い。

女の子の熱烈なファンがいてもおかしくないのか


「ちょっと待ってて」


そういうと敬都は鏡さんのほうに向かった。

敬都と鏡さんって面識あったんだ


「鏡さん!」


「何?」


「瑞樹に殺意を込めた視線を送るのをやめてもらっていいですかね」


「なんであんたに指図されないといけないのよ」


「「あれ」いっていいのかな?」


あれ?敬都が鏡さんの秘密を知っているのだろうか

しかも敬都の「あれ」といわれた鏡さんは先ほどまでの強気の姿勢は消えている


「わかったわよ」


「ありがとう」


「ふんっ」


今まで敬都と鏡さんの話しているところをみたことはなかったけど、ここ数日で何かあった感じかな


「これで大丈夫」


「敬都って鏡さんと仲良かったっけ?」


「実は最近仲良くなったというか、同じ趣味をもっていた者同士というか」


「えっ。鏡さんってアニオタ?」


「イエス」


「それは意外だな」


「だから瑞樹も仲良くなれると思うよ」


「そうか?」


あれだけの殺意を向けられた人と仲良くなれるとは思わないんだけどな


「鏡さんちょっときて」


そして敬都は鏡さんをこっちに呼んだ。

呼ばれた鏡さんは明らかに不機嫌になっている

そんな無理して近づけなくても。


「何?」


鏡さんこわっ


「この前同じ趣味同士、瑞樹とも仲良くなれるっていったでしょ。だから一回話してみないかなと思って」


「なんで私がこんな陰キャと」


「まぁまぁ。そういわず」


「鏡さん改めてよろしく」


「黙れ陰キャ」


「。。。。」


「敬都さん、これは無理なやつではないでしょうか?」


「鏡さんはちょっとこじれたツンデレキャラなんだよ」


「誰がこじれたツンデレキャラよ。殴るよわよ」


鏡さんこわっ


「みっちゃん」


鏡さんの怖さに震えそうになっているところに愛が来た


「ふぁい」


んっ?今変な声が聞こえてこなかったか


「愛どうした?」


「こっちの作業が終わったからみっちゃんのところに遊びに来た」


「そっかそっか」


「それで何話しているの?」


「鏡さんと瑞樹が同じ趣味だから話してみないかなと思って話していたところ」


「みっちゃんと鏡さんで」


「そうそう」


すると愛は鏡さんの顔をみつめた


「えっ?」


鏡さんは先ほどの強気な表情とは一転し、子猫みたいに縮こまり、顔は熟したリンゴのように赤くなっていた。

先ほど敬都が鏡さんが愛のファンというのは正真正銘事実なんだろう


「みっちゃんのこと狙っているの?」


愛は子猫を狩る鷹のように鏡さんを見つめる


「そ、そ、そんなわけないです。私はこの男には1ミリ以下の興味もありません」


そんな興味がないといわれるのも切ないと思うのは俺だけだろうか。

横から敬都の慈愛のこもった視線を向けられているのは気のせいだろう


「それならいい」


「はい。。。」


鏡さんは緊張したのか、声に大きさが風前の灯火のような感じになっている


「鏡さんは愛のファンらしいぞ」


「ちょっと」


俺はそんな鏡さんに援護射撃をしてあげた

鏡さんから先ほど以上の殺意のこもった視線を向けられているが。

なんか間違えたかな


「私のファン?」


一度違う方向を見た視線がまた鏡さんの顔に戻る


「はい。愛様のことがずっと好きです。あっ恋愛的な意味じゃなくて、アイドルのことを好きなファンといった感じです」


「愛様は初めていわれた」


「すいません。愛様の視界から一刻も早く消えます」


「いやいや。消えなくていいよ。私も好きって言われて嫌な想いはしないよ。特に女の子からは。男子からの好きは全面的に拒否だけど。私が好きっていってほしい男子はみっちゃんだけだから」


「気持ち悪くないですか?」


「気持ち悪くないよ。だから気にしないで」


「愛様神」


この時、嶋野愛を崇拝する信者が公認された

それにしても愛の俺に対する気持ちが全く隠れなくなったな

彼氏としては嬉しいが、いつか刺されるんではないだろうか


「じゃぁせっかく話せるようになったところで3人でお使いをお願いしたいんだけど」


「お使い?」


「3人で???????」


「うん。衣装の材料が少し足りないから近所に買い出しに行ってほしんだ」


「なるほど、俺はいいけど。愛と鏡さんはどう?予定あるなら俺が行ってくるけど」


「私は大丈夫」


「私なんかが愛様と一緒に並んで歩いていいのでしょうか?」


「鏡さんにとっての愛はそこまでなの」


「黙れ陰キャ」


どうやら俺が話しかけるのはダメらしい


「鏡さんも予定ないならいこうか」


「はい。愛様のお誘いなら予定を全部お断りしてでもいきます」


「それは予定も大事にしてね」


愛は今までにないパターンに少し接し方がわからなくなっているみたいだ


「じゃぁいこうか」


俺たちは近所のホームセンターに衣装に必要な材料の買い出しに向かった


「それにしても鏡さんはいつから愛のこと推しているの?」


「最初に見た時から。まさに一目惚れってこうゆうことを言うんだなって本当に思った瞬間だったな。それからはずっと遠くから眺めさせてもらっていたって感じです」


「なるほど。そんだけ推している嶋野愛に俺みたいな陰キャが彼氏になったのがあの殺意の理由か」


「わかっているじゃない。愛様の横にはあんたみたいな陰キャじゃふさわしくない」


こんなに真向からストレートに「ふさわしくない」と言われたのは始めたかもしれないな


「ははは。流石ガチファン。ふさわしくないという点に関しては俺も思うことはあるよ。実際に愛と付き合うまでは本当に才色兼備の完璧女子と思っていたから俺みたいな陰キャが釣り合うわけないと思っていたし、今みたいな関係性になるなんて微塵も思っていなかったから」


「わかっているじゃない」


「でも、他人のふさわしいかどうかの評価は関係ないなと最近思うんだ。結局は2人がどんな関係で入れるかの方が大事で、自分がふさわしくないと思うなら、ふさわしいって少しでも思ってもらえる努力をすることはできるから」


「それは。。。」


「鏡さんがもし、愛のことを推すのにふさわしくないって言われたどうする?」


「無視する」


「きっとそんな感じ。俺はそう考えて今を過ごしている」


鏡さんの意見はまさにそうだと思う。

嶋野愛の彼氏にふさわしいのは漫画にでてくるような完璧主人公ぐらいだろう。

そんなことはわかっている。

でもふさわしくないから彼氏は務まらないは違うと思う。

相手が自分を選んでくれて自分が相手を選べば関係は成立する。


「私にとってみっちゃんは私をちゃんとみてくれる存在なの」


「愛様のことは私もちゃんとみています」


「うん。ありがとう。でもみっちゃんが見てくれているのは表の私だけじゃなくて表じゃない私のこともだから」


「愛様の表じゃない自分」


「人間は誰だって表と裏があると思う。その両方を受け入れてくれて傍にいてくれるのがみっちゃんだから。鏡さんもいつかみっちゃんの魅力が伝わればいいな」


「ううううう。なんか悔しい」


「なんの悔しい?」


「だって愛様の愛を向けられているし、お互いのことを理解している感じがでていて悔しい」


「それは彼氏の特権なんだよ」


「殴りたくなってきた」


「ははは。あと敬都から友達になれるって言われたかもしれないけど気にしなくていいから」


「どうして?」


「敬都は今まで友達があまりいないところから俺や愛やさくらさんと仲良くなって「友達」っていいって思っているから俺たちと趣味が似ている鏡さんに俺を近づけようとしたんだと思う」


「まぁそうでしょうね。私も基本ひとりでいることが多いから」


「俺は友達はなろうと思ってなるものでもないと思っているから。友達の定義ってわからなくない?俺たちみたいなタイプは友達がたくさん欲しいわけじゃないし、大勢でつるみたいわけでもない。一度話しただけで友達というやつもいるし、時間をかけて仲良くなった人を友達と呼ぶ人もいる。だから友達になろうと思って友達になるんじゃなくて、こんな風に何気なく一緒に過ごすクラスメイトぐらいでいいんだよ」


「あんたは中村とは違うってこと?」


「考え方は違うかもしれない。でも敬都はあれでいいんだと思う」


「私も今も中村は楽しそうに見える」


愛と敬都に対して感じていることは同じみたいだ


「俺は俺、敬都は敬都。鏡さんは鏡さんでいいから。今まで見たいに遠くから愛をみているのもいいし。(笑)」


「ちょっと馬鹿にしているでしょ」


「ただ、俺とかかわりがあれば愛とお近づきにもなれるってことはあるかもしれないけどね」


「やっぱりあんたムカつくな」


私は自分が思っている以上に松岡の言葉に納得していた。

昔から友達を作ろうといわれてきたけど、友達の作り方なんてわからないし、どこからが友達なのかは今もわからない。

でも、そんな考えているのは私だけじゃないんだって思ったら少し安心できた。中村のちょっと強引な感じも最初は戸惑ったけど、今日みたいに普通に話しかけれることが今までなかった分、こうゆうもありかなと思った。

そして何よりも近くでみる愛様は神がかっている。



松岡と仲良くするのもありかもなとこのときの鏡は思っているのだった。






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