49話
「なに?」
鏡さんはちょっと不機嫌気味な態度になった
「いや、なんというか」
「なに?」
「I様ラブ」
アカウント名を呟くと鏡さんはあからさまに動揺した
「なにをいっているの?」
「そのアカウントの投稿をみたことがあるから」
鏡さんは動揺は大きくなる
「な、なんでしっているの」
「春乃さんのことフォローしているでしょ」
鏡さんは一度目を開いて、静かに閉じて一言呟いた
「本人にばらすの?」
「とりあえず人の少ないところで話さない?」
「わかった」
僕と鏡さんは屋上に向かった
「どこまで知っているの?」
僕はさくらさんにみせてもらった投稿を読み上げた
「どうして愛様があんなクソ陰キャの彼女になんかなっているの」
「クソ陰キャ死ねばいいのに」
「愛様を返して」
「やったぁ愛様と衣装班同じになれた幸せ」
「でもクソ陰キャも一緒なのはまぢで無理」
「あいつ学校こなくなればいいのに」
こんなことをツイートしているぐらい
「なるほど、ほぼ知られているってことね。それで本人にばらすの?」
「いやばらさないかな」
鏡さんは驚いた様子になっていた
「どうして?」
「今後も瑞樹の悪口を書き続けるっていうならやめてほしいと思うけど、鏡さんのこのツイートって推しに彼氏ができたファンって感じで悪意があるというよりは嫉妬の方が大きいのかなと思って。僕もアイドルに彼氏ができたらこんなことを書きたくなるときあるし。それが同じクラスで瑞樹みたいに周りからみたら陰キャって言われている男が彼氏ってなったら書きたくもなるのかなって思って」
「松岡は友達でしょ。友達の悪口を書かれているのに?」
「もちろん悪口を書かれているのはいい気はしないよ。でも瑞樹はこのぐらいの嫉妬は理解したうえで嶋野さんと付き合っていると思うから」
さくらさんと外を歩いているときにたくさんの視線を感じた。
おそらく瑞樹はあの時と同じかそれ以上の視線を浴びながら嶋野さんと付き合っている
「俺はわかっているぜみたいな空気だしてキモ」
「まぁ今は二人ともこのツイートのことを知らないっていうのが一番かな。あえて二人に見せることでもないと思うし。ただ」
「ただ」
「もし二人のことを傷つけることになるなら僕は許さないかな。あの二人は僕の数少ない友達だから」
「わ、わかったわよ。あの男のことはもう書かない」
何この男。。急に雰囲気が変わった
鏡はこのとき敬都に少し恐怖を覚えた
「それならいいんだよ」
敬都はいつもの表情に戻っていた
「でも愛様のことは外野にとやかく言われる筋合いはないから」
「それはご自由に。なんなら嶋野さんに紹介してあげようか?せっかく一緒の班になっているんだから」
「そ、そ、それはダメ~~~。だって愛様の前に立つだけで緊張して話せなくなるし、もしかしたら膝が笑ってしまうかもしれないし。愛様の顔を近くで見れる自信がない」
「急に残念な感じになったな」
さっきまでのシリアル展開から一転し、鏡さんは嶋野さんの話を出した途端、ただのアイドルオタクみたいになった。
「うるさい。なんであんたらみたいな陰キャが愛様と話できているのかが意味不明だし、愛様の彼氏はもっとかっこいい人がふさわしいんだから」
「まぁそれは否定できないけど。でも鏡さんが推している嶋野さんが選んだ人を否定したら嶋野さんを否定していることになるんじゃない?」
「うるさいボケ。そんな正論聞きたくない」
「やっぱり鏡さんは悪い人じゃないね」
「はっ?なんだ急に」
「ただのオタクだよ。僕たちと同じ。好きなものを好きと言える人に悪い人はいない」
「なんだその理論」
「さっきから瑞樹のことを悪く言っているというよりは、嶋野さんの横にいる男に対していっているだけでしょ。正直瑞樹にはまったく興味がないと思うんだ」
「当たり前だ。愛様の横にいなければあの男に興味なんてまったくない」
興味が全くないといわれている瑞樹をかわいそうと思うべきなのか・・・
「やっぱり鏡さんは悪い人じゃないと思う。ただただ嶋野さんのことが大好きな女の子って感じ」
「うるさい。お前が知ったようなことをいうな」
「なんとなく気持ちがわるからかな」
「なんで?」
「オタクだから」
「うん。。。なんかその言葉で納得してしまう自分が悔しい」
「オタクの同志として友達にならない?」
僕は何気なく普段言わない言葉を口にしていた。
直感的に鏡さんと自分が似ていると思ったのかもしれない。
それと単純に鏡さんと仲良くなりたいと思ったからかもしれない
「なんでお前なんかと友達に」
「ちなみに鏡さんって好きな趣味とかある?」
「漫画とかアニメ見たりは好き」
「絶対僕たち仲良くなれるよ。それに瑞樹とも」
「なんであんなやつと」
「だって僕と瑞樹はオタク友達で、鏡さんも同じ趣味をもっているから」
鏡さんは少し考えて話し出す
「まぁ友達ぐらいならなってやっていいけど」
「これからよろしく」
「でもほんとうにこんな軽く終われせていいの?」
「ことが大きくなっているわけじゃないし、一応さくらさんには話そうかなとは思うけど」
「わかった」
その後さくらさんに今回のことをラインしておいた。
すると「放課後3人で話そう」というメッセージが届いた。
僕は鏡さんにもそれを伝えて放課後空き教室に3人で集まった
「ごめんちょっと遅れた」
さくらさんが最後に入ってきた
「大丈夫だよ」
「こんにちは」
鏡さんは少し緊張した表情をしている
「早速本題に入ろうか」
さくらさんは真面目な顔で話に入った
「まさか愛ちゃんの熱烈なファンが鏡さんだったとは意外だったよ」
「ごめんなさい」
「謝る必要はないよ。事の顛末は敬都に聞いているから」
「怒っていないですか?」
「瑞樹の悪口を書いていることに対しては少し思うところがあるけど、愛ちゃんのファンなんて今までたくさんみてきたから。今回の件に関しても愛ちゃんへの愛情ツイートではなくて瑞樹に対する悪口の部分をいっていただけだから。今後瑞樹の悪口を書かないって約束してくれたみたいだし。」
「もう書きません」
「ならよろしい」
鏡さんはさくらさんに怒られると思っていたのか拍子抜けという感じでぼーっとしている
「でも罰は受けてもらいます」
「罰?」
「だって私たちがツイートの件をもし愛ちゃんと瑞樹に話したらどうなるかな?多分愛ちゃんの鏡さんに対する印象はどうなるかな???」
あっさくらさんの今の表情は悪いことを考えているときの顔だ
「や、やめてください。このことだけは愛様には言わないでください」
「でしょう。だから罰を受けてもらおうかなと思います」
「なんなりと」
「じゃぁ男装猫耳コスプレをしてもらいます」
「は?」
「えっ?」
さくらさんの言葉に僕も鏡さんも同じように驚いた声を出した
「男装猫耳コスプレですか?」
「そう!鏡さんって小さくてかわいいし、絶対猫耳が似合うと思うんだ」
「はぁ。。。」
鏡さんは完全い戸惑いモードに入っている
「さくらさん、唐突すぎて鏡さんがフリーズしているよ」
「あ~ごめんごめん。このまま何もなしに許されたとしても鏡ちゃんの方がモヤモヤするかなと思って。罰があったほうがこれからの関係に良さそうじゃない?」
なるほど、あえて罰を与えて鏡さんの罪悪感を減らす作戦というわけか。
考えていないようで考えているのがさくらさんなんだよな。
そこはシンプルに尊敬する。内容は別として
「鏡さん、無理にとは言わないけどどうする?」
「や、やります」
「よろしい。ちなみに敬都と鏡さんは仲良くなったのかな?」
「えっ?まぁ同じ趣味だったから友達になろうてきな話はしたよ」
「へぇ~」
「なに?」
「意外に手が早いなと思って」
「ち、ちがうから」
「なんか二人似ているね」
「「似てないから」」
やっぱり似ているじゃん。




