169話
「2人が自分から進路を決めてくれたのは本当に嬉しいです。オープンキャンパスにいったことが2人にとっていい刺激になったんだと思うし、松岡さんのお兄さんたちの存在に私も感謝したいと思います」
オープンキャンパスにいった翌日、私と雫ちゃんは先生に青春高校を受験したという意思を伝えた
先生は笑顔で喜んでくれた
「ただ....」
「どうしたの?」
雫ちゃんが先生に質問をする
「2人がどのくらい青春高校のことを知っているかわからないけど、あそこは偏差値が高い方であって、今の2人の成績だとおそらく合格ラインギリギリ下って感じかなと思って」
「えっ。あの高校ってそんなに頭いいところなんですか?」
「お兄さんたちにきいていない?」
確かに私が高校の話をしていたときにお兄ちゃんが
「うちの高校はそれなりに難しいから真紀も頑張らないとかもね」といっていたかもしれない
しかもその隣で「真紀ちゃんなら余裕だよ」って愛ちゃんがいっていたから、なんとなく大丈夫なのかなと思っていた
「なんか言っていたような気がしますがどのくらいあれば合格ラインに乗ってきそうですか?」
「そうね~。2人とも成績が悪いってわけではないんだけど、特段成績がいいわけでもない「普通」って感じなのよね。今よりも全教科20点は平均的に上げたいところかな。今が5教科で300前後ってところだから400点とれれば安全地帯って感じで350点とれれば合格ラインに乗ってくる感じと思ってもらえばいいかなと思います。これに関してはその年の受験する人数で変動はするけど、350点は最低でも欲しいかな」
「なるほど。確かに私は勉強は得意じゃないから、すごく調子がいいときで350点いくかぐらいだな」
「私はすごく調子がよくても届かないかも...」
私たちは完全に昨日までのテンションから現実に引き戻された。
「でも今は12月だから受験まで2ヶ月あります」
たった2ヶ月しかないのか...
改めて私は今まで何をしていたんだろうと後悔する
「確かに点数だけを言うと難しいかもしれないと思うかもしれませんが、正直この時期の中学生にとって2ヶ月間で平均を20点あげるのは非現実的なわけではありません」
「その理由は?」
「だってあなたたち本気で勉強してきていないでしょ?学生の中には予習と復習をしっかりやっている生徒もいるけど、大半の生徒はテスト前の1週間ぐらいは本気でやるみたい感じじゃない?」
確かに。私は完全にそっちタイプだ。
予習や復習なんてやったことないし。
クラスの子で「一夜漬け」って単語を何回も聞いたことがある
「私たちもそれだと」
「違うの?」
先生の笑顔がちょっと怖くみえてきた
「事実です」
「そうよね。2人とも勉強ができないわけじゃなくてやっていないだけだと私は思っている。だからこの2ヶ月でどれだけ勉強を本気でやれるか次第であなたたちの未来は変えることができるということ」
先生の言葉はしっかりと私の心の奥に刺さった。
みんな自分の未来のために歩き出している
雫ちゃんが私の手を引いてくれた
私は前に進むと決めた。
勉強をやるかやらないかは完全に自分次第だ。
「先生はあなたたちを全力でサポートしていきます」
笑っているのにどこかちょっと怖い先生の顔をみながら私は勉強をすることを決意した
その夜
「ということを先生に言われました」
「まぁ真紀の成績だったらギリギリだろうなとは思っていたけ」
「お兄ちゃんうざい」
「瑞樹も真紀にそんなこと言わない。それで真紀は塾に行く?父さんたちは真紀が塾に行きたいならいかせるけど」
まぁそうなるよね。
勉強するなら塾に通うは普通のことだし、うちの両親だとそう言ってくれると思っていた。
「塾って意味あるの?」
お兄ちゃんが呟く
「意味ないの?」
私はお兄ちゃんに尋ねる
「前に一回見学にいったことあるけど、集団で授業するのと個別っていうのがあるんだけど、受験シーズンって人が多くなるから、個別を選んでも自学がメインになるような気がして」
「塾によって特徴は違うとは思うけど、確かに瑞樹の言う通りの部分もあるかもね。僕も知らない部分はあるけど受験シーズンはかなり人が増えるらしいから先生の数も足りていないみたいな話は聞いたことがあるけど」
「だから結局は自分でどれだけ勉強できるかが大事になるから真紀がどうしたいかで決めた方がいいと思うよ。塾に行った方が勉強にやる気が出るとかだったらいってもいいだろうし」
この正論モンスターの言葉はいつも考えさせられる
それを言われてもどうすればいいのかわからないんだけどね
「ここに家庭教師がいます」
「えっ」
お兄ちゃんが変な声を出す
振り返ると眼鏡をかけた愛ちゃんが立っていた
「愛ちゃん何しているの?」
「さっきチラッと塾というワードが聞こえたので急いで眼鏡をとりに行ってきました」
「どうして?」
「教師と言えば眼鏡だから」
「なるほど」
愛ちゃんはたまにポンコツを見せるときがある
眼鏡をかけているけど、カッコウはもこもこのパジャマ姿である
「そっか。それで愛が真紀に勉強を教えるってこと?」
「そうゆうこと。学年でもトップクラスの成績の私が勉強を教えるとなると右にでる人はそういないよ」
「俺もそうだと思うよ。でも...」
「私には無理だと?」
愛ちゃんがお兄ちゃんに迫る
「いや、無理とか全然思っていないよ。むしろ俺が愛に勉強を教えてもらいたいぐらい」
「そうだよね。みっちゃんにもちゃんと教えてあげるから。真紀ちゃんもそれでいいでしょ?」
無言の圧を感じる。それに後ろのお兄ちゃんが「諦めろ」と言っているような気がした
私としては愛ちゃんが勉強を教えてくれるならすごく嬉しい。
どうしてお兄ちゃんはあんななっているんだろう。嫉妬かな?愛ちゃんを私にとられるみたいな
それは勉強を教えてもらってわかった
私は教科書と参考書を開いて愛ちゃんに勉強を1時間勉強を教えてもらった
「よし、それじぁ休憩しようか」
「うん」
「ちょっとトイレいってくるね」
愛ちゃんが部屋を出ていく
「お兄ちゃん」
「なんだい?」
「愛ちゃんってさ勉強を教えるの上手じゃない?」
「うん。愛は努力家なんだけど、基本的に天才肌で感覚的に勉強をやっていくタイプだから人に教えるのは上手ではないと思う」
お兄ちゃんが言っていた意味がわかった
愛ちゃんはすごく優しいし、私がわからないと思ったところはすぐに教えてくれる
でも言っていることがわからない
愛ちゃんの頭の中でわかっていることを言語化したことを私が理解できていない
「これはあの人にお願いしてみよう」
お兄ちゃんがそういったときに私も同じ人の顔が浮かんだ




