160話
少しずつ、少しずつ真紀の表情は変わっていった
保健室登校が始まる初日、俺と愛は玄関の前で真紀を待っていた
家から出てきた真紀の表情は不安でいっぱいになっており、それでも頑張ろうという気持ちが伝わった。
だから俺たちは真紀の傍に居ようと思って一緒に登校した
最初は周りの人から見られることもあったが、からかってきそうな馬鹿には愛が睨みを利かせるだけで黙り込み、数日が経つと誰も俺たちにみてこなくなった。
まぁ愛の存在感と殺気がすごかったのもあるかもしれないが、中学生からしたら高校生はちょっと怖い年上みたいな感じなのかもしれない。
初日に学校についたときに待っていた先生はすごく雰囲気のいい元気な先生だった
亀井や天王寺の父親みたいなクズみたいな大人をみていたから大人を見る目が前と違っていて警戒から入ってしまうのようになってしまっているが、それでもこの先生は大丈夫な気がすると思った。
隣で真紀を見送る愛はお姉さんにしかみえない
学校から帰ってくると晩御飯の時に学校 のことを聞くのが日課になっていたが、真紀もそれなりにやっているといっていた。
ただ、真紀の通っている中学の保健室登校は真紀だけではないというのもわかった。
そのあと少しずつ話題に上がっていたのが黒崎さんという名前だった
保健室登校しているから少し訳ありなのかもしれないとは思ったが
真紀が黒崎さんのことを話すときの表情は明るかったので俺たちもポジティブに受け取っていた
「そういえば、今日は黒崎さんエレキギターもってきてたんだよね」
朝食のタイミングで真紀が楽しそうに話してくれた内容はが黒崎さんがギターをしていることだった
「真紀ちゃんはやってみたいと思わない?」
愛の提案は俺もいいと思った
共通の楽しみができることはいいことだし、昔から真紀は器用だけど一つのことをやり続けていた印象がないからこれを機にギターをやってみるのはいいかもと思った
「かっこいいとは思うけど、まず私ギターとか弾いたことがないから」
「ギターなら友達が予備もっているから借りれると思うよ」
友達っていうのは多分桐生さんのことだろう
確かに桐生さんはあの件以来、両親も応援してくれているみたいでギターを買ってもらったっていっていたような気がする
愛のごり押しな部分もあって真紀はギターをしてみることになった
桐生さんはすぐにギターを貸してくれた
ギターを背負って登校するバンドマンみたいなスタイルで中学に登校している姿はちょっと面白くて愛と一緒に写真を撮った
真紀は怒っていたが俺たちは「似合っているよ」とからかってあげた
共通の楽しみという効果はよかったらしく、その日から真紀と黒崎さんの距離は縮まったような気がした
兄としてどこまでお節介をやいていいのかはわからなかったが
真紀が少しでも笑えるのならそれでいいやと思って、桐生さんに相談した
「次いつ路上ライブする?」
「どうしたの急に?私のライブみてきてくれるのかい?」
「そりゃいくよ。でも今回は妹と妹の同級生も誘えたらと思って」
「どうして?」
俺は最近の出来事を桐生さんに話した。
さくらさんや敬都たちにも話そうとは思っているが中々タイミングがなかった
「そんなことがあってたんだね。確かに今回は私たちの出番はなかったかもしれないけど一言ぐらい相談してくれたら力になれたかもしれないのに」
「それはごめん」
「まぁいいさ。それなら松岡くんの妹ちゃんのために音がライブしようじゃないか」
「いいの?」
「もちろん。それに私ももうそろそろ路上ライブしようと思っていたから」
「それならよかった」
路上ライブ当日に真紀に連絡をした
黒崎さんも来てくれるということだったので一安心だった。
愛から「黒崎さんが学校にきてなかったらどうするつもりだったの?」って言われて
確かにそこは来ているだろうと思って考えていなかった
「みっちゃんポンコツだね」
「愛だけには言われたくないけど、この件に関しては愛の言うことが正しい」
「私も成長しているんだよ」
隣で胸をはっている彼女は確かに成長している
うちにいる時間は長いが、一人暮らしの部屋いつもきれいにしているし
付き合った当初のポンコツ具合はかなり減っている
人間の成長はすごいと愛をみていたら思う
「今失礼な事考えていなかった?」
「そんなことないです...」
顔を掴まれて愛の顔が目の前に来る。すごい美人だなと思う
「私の目をみていう」
「人間の成長はすごいと考えていました」
「素直でよろしい」
愛は満足そうな顔をしている
失礼なことの内容よりも言ってくれなかったことにいじけたのかもしれない
いや可愛いな。




