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157話

「今日は立ち止まっていただきありがとうございます。路上ライブしたり、ライブハウスでも歌っている音と申します。今日は少しの時間ですが楽しんでいってください」


音さんはすぐに演奏を始めた、最初の曲はYUIの「CHE.R.RY」だった。

この歌世代は違うんだけど好きなんだよね。

黒崎さんの人生に大きな影響を与えるほどの音さんの歌声は本当に素敵だった。

素人目からみてもすごく上手だなと思うし、たまにテレビで見る歌うまとかにでてそうなぐらい上手だなと思った。


「ありがとうございました」


1曲目を歌い終わるころにはお客さんは倍ぐらいの人数に増えていた。

路上ライブってこんなに立ち止まるものなんだと驚いたが、お兄ちゃんたちも特に驚いた様子もなかったから音さんにとっては普通なのかもしれない


「だいたい何曲かレパートリーを用意してきて、その場の雰囲気に合わせて選曲をしているんですが、今日は年上の方が多い印象があるので、少し懐かしの曲をやろうと思います」


確かに見渡してみるとお父さんぐらいの世代の方が立ち止まっている

音さんの2曲目の曲は私は知らなかった

お兄ちゃんにこっそりきいてみると

藤井フミヤさんの「TRUE LOVE]という曲らしい。

ゆっくりな曲調から奏でられる綺麗なギターの音と音さんの歌声はよすぎた

隣を見ると黒崎さんは少しうるっときていたし、近くにいた年上の男性も何かを思い出しているかのような表情をしていた

2曲目が終わるころにはさっきよりもお客さんの数は増えていた。

これ路上で1時間ぐらいライブしたらめちゃくちゃ人集まるんじゃないかな。


「ありがとうございます。こんなにたくさんの方に立ち止まってもらえて今日はすごく幸せです。あまり長居したら歩行者の方の迷惑になりそうなので次で最後の曲にします。せっかくなんで最後の曲はリクエストしてもらって歌えそうな曲だったらそれを歌おうと思います」


音さんはお客さんを見渡す

一瞬私と目があったような気がした。

自意識過剰かもしれないけど。


「それじゃぁ、右端のギターを背負っている制服の女性どうでしょうか?」


「私?」


音さんが指名したのは私の隣にいる黒崎さんだった

憧れの存在から急に指名されて普段クールな黒崎さんがかなりあたふたしている。

それがなんとなく可愛いと思ってしまう


「うん。ギターを背負っているってことは音楽しているの?」


「音さんのライブをきいてからギターを買いにいったんです」


その言葉に音さんはすごく綺麗に微笑んだ


「そうなんだ。それはすごく嬉しい。じゃぁなおさら君にリクエストをお願いしたいんだけどどうかな?」


「ありがとうございます。それじゃぁ前のライブで歌っていた曲なんですがback numberさんの「ささえる人の歌」をお願いしたいです」


「あの曲すごくいいよね。あと覚えてくれてありがとう」


「いや、音さんが歌ったあの曲にすごく救われたんです」


「そっか。なら今日も君の心に届けれるように精一杯歌いましょう」


黒崎さんと話し終わるとすぐに曲の準備に入る

私はきいたことがない曲だったけど黒崎さんが絶賛しているならすごく興味がある

そして音さんは歌い始める


元気で毎日暮らしていますか

朝は起きられているのでしょうか

野菜もきちんと食べていますか

つらい想いはしていませんか


頑張ってっていいながら

あまり無理しないでねって思っています

心配になることも寂しくなることもあるけど

元気でいてくれたら


愛する人がどこにいても

心から笑えますように

少しくらい嫌な事があっても

今日を笑って終えてくれるなら


ただそれだけで

それだけでいい

こっちは心配いらないから

たまに疲れたら帰っておいで

あなたの好きなものを作って待っているから


その曲の歌詞の意味を全部は理解できていないけど、私は音さんの歌を聴きながらお母さんとお父さんの顔が浮かんだ。そして涙がでてくる

これは家に帰ってもう一回ちゃんと聴こうと思った

隣の黒崎さんはしっかり泣いていた


「ありがとうございました。また機会があればライブさせていただくので見かけたらぜひ立ち止まってください」


音さんの路上ライブは20分ぐらいで終わった

もう少し聴きたかった寂しさとすごくいい時間を過ごすことができた高揚感で私の感情は忙しくなっている

そのあとお兄ちゃん達と別れてから私は黒崎さんと一緒に歩いていた


「音さんの歌よかったでしょ」


「うん。すごく」


「松岡にも良さが伝わったならよかった」


いつもよりも黒崎さんの口数が多いような気がする

それぐらい気持ちが高揚しているのかもしれない


「松岡は私がどうして保健室登校になっているのか気にならないの?」


急に言われた言葉に私は立ち止まる


「気にならなかったといえば嘘になるよ。でも私から聞くのは違うような気がしたし、人にはみんな話したいことと話したくないことがあると思うから」


「そうだよね。あんたはそうゆうやつだよね。私のちょっと昔のことを話すね」


「いいの?」


「友達でしょ」


友達...その言葉を聞いたときに驚いてしまう


「えっ友達って思っているの私だけ」


「違う!!なんか私から友達っていうのはおこがましいと思って」


「なにそれ。面白い」


黒崎さんは私の言葉に笑ってくれた

そして少し昔のことを話してくれた

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