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154話

保健室登校を初めて数日が経過した

朝は毎日お兄ちゃんと愛ちゃんが一緒に登校してくれたから、同級生が私のことをみつけても話しかけてこないし、単純に3人で登校する時間は楽しかった

学校につくと熊谷先生が元気よく出迎えてくれる。

最初は先生のテンションに戸惑っているところもあったけど、慣れてくればその元気を私もわけてもらっているようば気持ちになる

黒崎さんは毎日は学校にはこないけど1日置きぐらいには学校にはくる

私は今のところ毎日通うことができているし先生たちのサポートもあって今のところ順調に学校生活を送ることができている。

同級生との遭遇も今のところほぼない。

保健室に来る生徒はいるけど、隣の部屋にいると遭遇することはない

私たちは自習がメインになるけど、最初は不安が大きかったけど実際にやってみると思ったよりも悪くないなと思った

自習をはじめようとすると教室のドアがあく


「おはよう黒崎さん」


「どうも」


黒崎さんが今日は登校してきた

この数日でわかったことだが、基本的に黒崎さんは私とは普通に話すけど先生に対してはかなりドライな印象だ。もしかすると特定の先生というよりは「大人」に対してドライなのかもしれないと思った

たまに熊谷先生以外の先生が教室にきてくれるときも黒崎さんの態度はそっけない。

先生たちも気にした様子もないから、これが黒崎さんの平常運転なのかもしれない。

私はいつも隣でそわそわしてしまう。先生怒らないかなと。


「黒崎さんって私には優しく話してくれるけど先生に対してはドライだったりする」


気になって黒崎さんに質問してみる


「別にあなたにも普通よ。まぁ確かに先生に対してはドライかもしれない。というよりは私は大人の言っていることが基本信用できないと根底から思っているから何も感じないのかもしれないわね」


黒崎さんの言葉の裏にはきっと何か事情があるんだろうと思ったけど、それは聞かないようにした


「私からしたらあなたは先生たちに対して何も思わないの?いじめられたときに助けてくれなかったでしょ」


中々核心をずばっといってくるのも黒崎さんの特徴の一つだとわかった

これは悪気があるわけではなくて単純に素だとわかれば私も気にせずに普通に話せる


「確かに思うことがないわけではないけど、自分の中で信頼できる大人と信頼できない大人は見分けたいなと思っているかな。実際にかっこいい大人をみてきたから」


あの時の奈央さんの背中を忘れることはないのだろう。

亀井や天王寺や柳沢みたいな悪意に満ちている大人がいるのも事実だし、実際表では善人の雰囲気を出している大人でも裏では悪人っていうことも全然あり得る

でも信頼できる大人もいることも知っているからこそ大人をみんな信用できないってことはないのかもしれない


「そう。あなたは周りに恵まれていたのかもしれないわね」


「そうかもしれない」


「私の周りにはそんな人はいなかった」


黒崎さんは聞こえるか聞こえないぐらいの声量でそういった

私はその言葉の返事をみつけることができなかったから私は無理やり話をかえた

というよりは黒崎さんが教室に入ってきたときからあるものが気になっていた


「黒崎さんは音楽をするの?」


そう。黒崎さんは教室に入ってくるときにギターを背負っていたのだった


「最近始めたの。バイト帰りに路上ライブしている女性の人の歌声を聞いて心が奪われて。そのままバイト代もって楽器屋さんに駆け込んで購入したの」


中学生でバイトしているとかも聞きたいことがあったけど、音楽のことを話す黒崎さんはいきいきとしていて私もきいていて楽しくなった


「そうなんだね。バンドってかっこいいよね。私も憧れたことがあるな」


「わかるの?」


黒崎さんが食い気味で私に迫る

顔と顔の距離が近くなって改めて黒崎さんの美人っぷりがわかってしまう

大きい目、長いまつ毛、整えられた眉毛。

私も美容には興味があるけど、既にかなりの差を感じるほどのクオリティの顔が目の前に


「黒崎さん近い近い」


「ごめんなさい」


我に返って少し反省したのか、ゴホンとわざとらしい咳をしてから


「それであなたも音楽に興味があるの?」


すごく無理やりさっきのテンションをなかったことにした


「興味があるかと言われたら興味はあるけどやったことはないよ」


「みんな最初はそんなもんだし、私も始めたばかりで全然弾けないのよ」


「黒崎さんはすぐにできそうなのにね」


「あなた音楽をなめているでしょ。そんな簡単だったら今頃みんなバンドマンになっているわよ」


確かに。今の発言は軽率だったかもしれない


「ごめんなさい」


「わかればいいのよ」


そういってギターを取り出す。


「今弾くの?」


「大丈夫。先生には許可取っているし、このギターはエレキだから音はならない。それに家では弾けないし」


謎だらけの黒崎さんのことを私は気になっていた

でも自分から聞くことはしない

多分お兄ちゃんもこんな感じだったのかもしれない

人が怖くなると踏み込むのが怖くなるから距離を置く選択肢をとってしまう

お兄ちゃんが陰キャみたいになったのは人と距離を置くようになってからだ

私は黒崎さんが弾くエレキギターを黙ってみていた。



正直私が思っているギターとは音が違っていて、弾けているのか弾けていないのかわからなかった

黒崎さんはそんな私の表情を読み取ったのか

「これはエレキだからこんな音が出ないんだからね。アコースティックになればもう少しギターっぽい音がでるはず」


「そうなんだね」


私はそう返事するしかなかった


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