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152話

「俺たちが一緒に行けるのはここまでだな」


「そうだね。真紀ちゃん何かあったら私に連絡してね。学校とか全部捨てて助けに行くから」


「愛ちゃん重いよ。でもありがとう。お兄ちゃんより先に愛ちゃんに連絡する」


「へへへ。いつでも頼っておいで」


「はい」


愛ちゃんは私の頭に手を置いてよしよししてくれる

端からみたらこの景色はおかしいかもしれないし、恥ずかしさもあるけど嫌ではなかった


「俺たちも行こうか」


「はぁい」


私は二人の背中を見送る


「お兄ちゃんもありがとう」


一応お礼を言っておく

お兄ちゃんは振り向かずに右手をあげて手をふってきた

絶対にカッコつけたなと思ったけど何も言わなかった


2人を見送って私は学校の方を見る

校門が近くにあるけど境界線を越えるのに躊躇う

少し立ち止まっていると


「松岡さん!!」


「えっ」


名前を呼ばれて顔をあげると保健室の先生が立っていた


「来てくれたのね。嬉しい」


先生は私の顔をみて喜んでくれた

わからないけど自分を歓迎してくれる人がいたことに少し安心した


「いこうか」


いつも私が入っていた入口からではなく先生たちが入る入口から学校の中に入る

そして今までと違う下駄箱に靴をいれる。

シューズはあの時に外を走って汚れたからお母さんが新しいのを買ってくれた

新品のシューズを履き保健室に向かう


「校長先生たちには私から伝えておくから、このまま保健室にいって少し話そうか」


「はい」


保健室につくと静かな空間が広がっていた


「ここまで来るのに気を張ったでしょう。お茶でも飲もうか。今日は一人できたの?」


「お兄ちゃんとその彼女のお姉ちゃんと一緒にきました」


「そっかぁ。いいわね」


先生はお茶を淹れにいってくれた

その間保健室を見渡すと何か独特な気持ちになる

いつも通っている教室は雰囲気も全然違うのに外からは生徒たちの声がきこえてくる

窓際に行くとサッカー部が朝練をしていた


「松岡さん、朝ご飯食べた?」


「いえ、今日は朝ご飯食べれなかったのでおにぎりもってきました」


「そっか。好きな時に食べていいからね」


「ありがとうございます」


「改めて、私は熊谷明日香といいます。今日からよろしくね。学校で何かあればいつでも私にいってくれていいからね」


「はい」


熊谷先生は学校でも特に女子からの人気は高い先生だ

ほんわかした雰囲気で話を聞いてくれたりアドバイスをくれたりする


「ご両親には学校側からその後の顛末は報告させてもらっているけど、松岡さんはどのぐらい把握している?」


「詳しくは聞いていません」


「私から簡単にだけど説明するけど大丈夫?」


「はい」


「まず亀井先生は懲戒免職処分になって教職員として資格をはく奪されたので、二度とあなたの前に現れることはないと思うから安心して。それと柳沢さんはご両親が離婚されてお母さん側についていって転校という形になったゎ。天王寺くんは停学処分中になっている」


これは愛ちゃんのお母さんの影響が大きく出ていた

亀井も柳沢の母親も自分たちのスキャンダルをバレてはいけない人たちにばらされた

今まで通りにいれるわけもないが、柳沢が転校したというのは私のとってはプラスのかもしれない

正直あの女の顔を見る気にもならない。天王寺くんに関してはあの時の最期の彼の姿をみていると彼に対する気持ちは同情の方強くなっていた

今後話したいとかいう気持ちはないけど、学校に戻れるなら戻っていいのかなと思う


「そうなんですね。柳沢さんが転校したのは意外でした」


「それは私たちも意外という気持ちが強いわね。まぁあの時の話を聞く限りではこうなる可能性は十分にあったかもしれないけど。松岡さん的にこのことについて思うことはある?」


「亀井先生と柳沢さんのことに関しては正直どうでもいいですし、顔をあわせなくていいのならそれでいいです。ただ天王寺くんに関しては停学期間があければ学校に戻ってきていいと思っています。彼はきっとすごく反省しているから。私が彼と話すことはしなくていいですが」


「わかった。校長先生には私からそう伝えておく」


「お願いします」


「よし!!これからの話をしようか」


先生はすぐに切り替えて話を変える


「これからのことですか?」


「松岡さんがここにきてくれたのは私は嬉しい。でも松岡さんとしては進路のこととか気になってくる頃だと思うの」


「確かにそうですね」


今はもう12月になろうとしている冬

年があければ受験が始まる。

私はまだ進路を決めることができていない


「学校側としては保健室に登校してもらえば出席日数は問題ないように手配するし、各教科の先生たちのサポートもうけれる体制を用意します。だからここで自習しながら卒業まで過ごすのはどうかなと私は思っているの。普通の先生だったらクラスに戻ることを進めるのかもしれないけど、あんなことが起きたクラスに戻りたくないって思うのは普通のことだし、無理して戻る必要はないと思っている。松岡さんが頑張れそうな環境でできることを一緒に頑張っていきましょう」


先生の言葉に私の胸はポカポカした気持ちになる


「私は先生の言う通りクラスに戻りたいとは思っていません。クラスの人たちのことを恨んでいるとかではないです。ただ気をつかわれるのは嫌ですし、卒業までそんな環境で過ごすのは今の私にはきついかなと思っています。だからここから少しずつ始めさせてもらえればと思います」


「わかりました。そのように進めていきましょう」


「よろしくお願いします」


「松岡さん」


先生は少し真剣な表情で私の名前を呼ぶ


「はい」


「改めて同じ学校に勤務している教師として謝罪させてください。今回松岡さんの力になることができなくてごめんなさい。あなたにとって私たち大人の謝罪は迷惑と思う。でもこの気持ちは私の教師としてのけじめとして受け取ってください」


頭を下げた先生の表情をみて私は先生を攻めるなんて気持ちになれなかった

あのときは同じ学校のことで起きていることなのに、どうして誰も気づいてくれないのかなとは思った

でもきっとみんな自分の目の前のことで一杯一杯で他のことで起きていることまで気づくことはできないのかもしれない。中には気づいていた人もいたのかもしれないけどみんながみんな熊谷先生みたいな気持ちで教師をやっているわけではない。


「先生、顔をあげてください。もう終わったことです。先生がさっきいってくれたように「これから」のことを考えていきたいです」


先生は私の言葉で少し表情を明るくしてくれた

小さい声で「そうよね」といったような気がした


「わかった。この話は一旦ここで終わり。それともうひとりこの教室には生徒が通っているの」


「もう一人ですか?」


それは初耳だった。

この学校には特別支援学級みたいに不登校の子が通う教室があるのは知っている

でも保健室に通っている子がいるのは知らなかった


ガラガラ


教室のドアがあく


「黒崎さんおはよう」


「どうも」


保健室に入ってきたのは黒髪ロングの美人な女子生徒だった

先生は黒崎さんといったが私は初めてみた人だった



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