146話
天王寺は状況を理解したのか、父親に切り捨てられたのがショックだったのかすべてを話し出した
「松岡さんに告白されて断れた後、柳沢さんに声をかけられてその時の悔しさから自分が漫画で覚えた知識を少し話しました。それを柳沢さんが実行していて。最初はいい気味だと思って一緒に協力していました。しかしあの時そこにいるお兄さんに殴られて投げられた言葉で自分がやってしまったことの重大さに気づきました。ただ、その時には既に松岡さんは学校には来ておらず父さんに相談しました。父さんにも1発殴られましたがそのあとに「私に任せない」とだけ言って部屋を後にして今日が来ました」
そして天王寺は席から立ち上がり真紀の前に土下座をした
「本当に申し訳ございませんでした」
「校長、本人が認めたぞ」
その行動をみた愛のお母さんが校長に尋ねる
「はい。流石に私も本人が認めたことを曲げてまで松岡さんの言葉を信じないわけがありません。柳沢さんも認めるでいいかな?」
「はい...」
柳沢は既に心ここにあらずといった状況になっていた
「ではこの件に関して私なりにまとめますが、天王寺さんと柳沢さんは今日の話し合いをしたうえで松岡さんの息子さんに対して何かしらの罰をあたえた方がいいとおもっていますか?」
2人とも何も言わない
「それではその無言は肯定と判断します。松岡さん、この件に関しては学校としては監督不行き届きが至らなかったことを認めざるを得ません。学校の代表者として謝罪をさせてください。申し訳ございません」
その言葉に父さんが答える
「こちらこそありがとうございました。ぜひ校長先生たちにはこれからのことをしっかりと考えて抱きたいと思います」
校長はその言葉に頷く
そして真紀の方をみる
「松岡さん、1人で背負わせてしまって申し訳ない。もっと早く大人が手を差し伸べるべきことを君1人に背負わせてしまった。許してほしいとは言わない。ただ行動で示させてください」
「はい」
真紀も校長先生の言葉にうなずく。
この校長先生めちゃくちゃちゃんとしている。
話し合い中言葉を挟まなかったから関心が薄いのかなと思っていたが、全くそんなことはなかった
「ありがとう。ではまずは亀井先生」
「はい」
亀井は校長先生の低い言葉のトーンに冷や汗が止まらない様子
「先ほど、嶋野さんがおっしゃったことは事実でいいのかな?何よりもその写真が証拠で調べれば真実が出てくるから嘘はつかない方がいいと思うけどね」
「全て真実です」
「素直でよろしい。教頭先生」
「はい」
横に座っていた教頭先生が立ち上がる
「亀井先生の件をそのまま教育委員会に通達してください。処分は教育委員会の方で決めてもらいましょう」
「そんな...」
「今すぐ私の権限で首にしてあげたいところですが、一度教育委員会を挟んだ方が教育者としても活動できなくなるぐらいの罰をあたえれるでしょう。私は正直今日のあなたの話を聞いていてあなたの言っていることが真実なら仕方がないと思っていましたが、それが真実ではないとなると話は別です。同じ教育者に君みたいな男がいることが恥ずかしくて仕方がありません。あなたがどう処分されるかわかりませんが、どちらにしてもあなたには停職してもらいます」
校長先生の言葉は思っていた以上に鋭くて亀井は何も言えなくなってしまった
「そして君たちには2週間の停学処分を下します。中学校で停学処分はあまり聞き覚えがないかもしれませんが、この状況であなたたちが明日から学校に普通に来るのは許されないことだと私は思います。松岡さんが学校にこれたとして自分の立ち位置が確保されるまではあなたたち2人は学校にはこないでください。もしかすると2週間が4週間に伸びることもあります。それぐらい今回の件は重いと理解してください。新しい担任が2人の課題を用意してお家まで届けますのでよろしくお願いします」
天王寺と柳沢も校長先生の言葉に何も反論しなかった
「最後に松岡さん、すぐに元に戻るのが難しかったら少しずつでいいから学校に来てくれたら嬉しいです。私たちはあなたのことを全面的にサポートしていくつもりです。私たち大人の言葉は信用に値しないかもしれない。しかし、私もいじめた側が普通に学校にきて、いじめられた側が学校にこれなのはおかしいと思っている。私たちはあなたの味方になるとこの場で約束させてもらう。だから学校でまっています」
校長先生の言葉は今までで一番優しく感じた。
その言葉に真紀も涙を流して返事をしていた
「松岡さんこんな形でまとめていいでしょうか?」
父さんと母さんは立ち上がり校長先生に頭を下げる
「校長先生の寛大は心遣いに感謝します」
こうして真紀のいじめの件は一段落ついたのだった
「まだよ」
その声の主は愛のお母さんだった
「嶋野さんでしたか?何か不適切なことがありましたか?」
「校長の判断はいい。ただ、この場で一人だけ断罪されていない人がいるでしょ」
愛のお母さんは天王寺の父親をみる
「嶋野さん何を?」
「自分の権力をつかって調子に乗った挙句、子供のいじめまで隠ぺいしようとして何もないわけがないでしょ。今日の会話は全て医師会の上昇部にそのまま流れるように手配している。まぁ院長の座は下ろされるのが妥当でしょうが。先輩後輩の関係もあるし、優しい先輩として世界の貧困で医療が受けれない患者の元に派遣される医療スタッフの部署に転属できるようにお願いしておいたから。まぁ医師を続けれるなら海外で子供たちの役に立ちなさい。」
「そ、そんな馬鹿な。この会話を全て医師会の上層部に流しているなんてはったりを言わないでください」
「さっきからうちの娘が携帯を2台もっていることに気づかないの?その携帯の通話先は私の知っている偉い男よ。話してみればわかる」
愛が天王寺の父親に携帯を渡す
少し喋ると天王寺の父親の顔は真っ青になり、その場に崩れ落ちた
「よし。一件落着。後のことは校長と教頭にお願いしていいでしょ」
「はい。ありがとうございました」
「松岡さんも行きましょう」
愛のお母さんは全ての状況をひっくり返して教室を後にした
俺たちはそのあとを静かについていく。
最後に後ろを振り返ると
絶望している大人3人と下を向いている天王寺と母親の不倫写真をみてから放心状態の柳沢がいた。
この状況を見て俺は「ざまぁ」と思ってしまった。